薄い膜のような湯気湧き立つ向こうからは、渓流の涼しげなせせらぎが聞こえてくる。
 春の匂いのする山の空気は、服を纏わない素肌にも優しい。そこに、温泉の熱気が混ざりこみ、一糸纏わぬ姿でぼんやりと湯の外で寛いでいたとしても、きっと肌寒さを感じるどころか、心地良いくらいだろう。

 身体の芯に熱が篭もるような熱い湯の中。祐一と北川は並んで肩まで温泉に浸かり、瞑想する修行僧のような面持ちで熱さに耐えていた。
 卒業旅行で訪れたのは、単線電車と半日に一本のバスを乗り継ぎやっとの事で到着した人気のない山奥の温泉旅館。文学華やかなりし明治の世には、無名の物書きが逗留したという由緒正しき宿だという。とはいえ、現在ではお客は彼らしかいない寂びれよう。いや、寂びれているとは卑下しすぎであろう。通しか訪れぬ穴場のスポットというべきか。

 何はともあれ、相沢祐一と北川潤は、旅館から少し離れた場所にある渓流の脇に湧いた露天風呂に浸かっていた。檜の小屋と雨避け程度の屋根があるだけという簡素だが、小奇麗な装い。温泉の周りには立て柵はなく、外から丸見えようにも思えるが、唯一人が行き来できる背後の遊歩道からは小屋と屋根が帳となって、中は見えないようになっている。他の個所は深い渓谷が広がるのみ。温泉から見える山並みは雄大であり、眼下に流れる渓流は魂が潤うような美しさであった。
 と言っても、祐一たちは来るや否や温泉に飛び込み、そのまま瞑想してしまっているので、せっかくの景色もまったく堪能していないのだけれど。
 彼らの浸かる石を連ねて造った温泉の右側を見れば、見事な高さの竹柵が聳えていた。本来、男女の湯を仕切るための柵ではあったが、何故か湯殿の奥で途切れている。
 女将の話では、そもそも複数のグループ客が同じ時期に宿に泊まる事は少なく、一組の旅行客の場合、殆どのケースが恋人や夫婦、または家族連れで、男女がわざわざ分かれて温泉に入る関係である事の方が珍しいらしい。そんなわけで、一応敷居はしてあるも、自由に行き来できる半ば混浴のような露天風呂にしたという。
 祐一たちからすれば、願ったり叶ったりの造りであった。

「相沢〜」
「なんだ?」
「美坂たち、まだかなあ」
「ばかだな。この待ってる時のドキドキがいいんだろう」
「……通だねえ、この野郎」
「ふっふっふ、だって男だし」

 あー、ドキドキするなあ、と呟きながら、北川潤は畳みなおしたハンドタオルを頭の上に乗せなおした。

「いい湯だな♪」
「あははん♪」










温泉卓球

温泉篇












 男二人の能天気な鼻歌は、川のせせらぎにも乗って、脱衣所の方までも良く聞こえてきた。

「あ、あいつらはぁ、い、いい気になって」

 折角再び身に付けたものの、またぞろ脱ぐ羽目になったレースの下着を籠の中に放り込みながら、香里はこめかみに青筋を立てていた。自然と浮かんだ笑みが怖い。
 これから、その能天気に鼻歌を歌ってる彼らと一緒に温泉に混浴だ。とりあえず、柱に頭を打ち付けて記憶を失ってしまいたいほど恥ずかしい。まだぶつけてない頭がくらくらする。ドキドキと激しく稼動中の心臓からは、熱せられた血液が全身へと送り込まれて、まだ温泉にも浸かっていないのに体中が熱かった。
 香里はげんなりと自分の裸身を見下ろした。一杯汗を掻いたからか少し気持ちが悪いが、我ながら若さ溢れる瑞々しい肌じゃないか。胸もそれなりだし、と柔肉をぷにぷに揉んでみる。
 下の毛のお手入れ、来る前にしておいてよかった、と手のひらで撫でつけながら香里は思い、既に卓球場で北川と祐一に見られた……というか自分で見せつけたのを思い出して、香里は頭の天辺から湯気をたゆらせつつ、立ちくらみを起こした。

「ううっ、死ぬ」
「香里、なにやってるの? 早く行こう」
「名雪……あんたは」

 カラカラと引き戸を開ける音と彼女の声に顔をそちらに向ければ、気持ちいいほどあっさりと浴衣を脱ぎ捨てた名雪が、胸元にハンドタオルを靡かせただけで、惜しげもなくその白い裸身を晒して立っていた。
 同性とはいえ見慣れぬ裸だからか、それとも自分と同じく結い上げた髪の毛故か、親友の姿はどこか見知らぬ人のように見えた。自分も名雪からそう見えるのだろうかと、思わず姿見を覗いてしまう。

「わっわっ、凄いよ香里」
「ちょっと、名雪!」
「ひろーい!! ほらほら、山もあんなにおっきい」
「待ちなさいって」

 パタパタと駆け出していく名雪に、香里は慌てて脱衣所を飛び出して後を追いかけた。





「来たぞ、北川」

 竹柵越しに、聞き慣れた女性たちの嬌声(?)が聞こえた瞬間、祐一はカッと目を見開いた。

「お、おう」

 北川は少し声音を震わせて、パンパンと自分の頬を叩く。
 この竹柵の向こうに、裸の名雪と香里がいるのだと想像すると、卓球場での興奮とはまた別のじんわりと鼓動が早まるようなドキドキが二人を襲ってくる。

「落ち着け、北川」
「お、おう」
「美坂チーム温泉でゴーゴーという我らの野望が今、叶えられようとしている」
「その温泉でゴーゴーって名前の付け方は正直どうかと思うが、その通りだ」
「ここで逆上せてぶっ倒れたりしたら、一生後悔するぞ」
「ぐぅぅ、絶対後悔する」
「だから、ここは大きく深呼吸をして心を落ち着かせ―――」
「おう、深呼吸をして―――」
「あ、居た居た。祐一、北川くん、来たよ〜」

 二人が大きく息を吸おうとした瞬間、無邪気な声がダイレクトに届いた。
 柵の途切れたところから、髪をアップした名雪の笑顔が覗いたかと思った途端、薄っすらと湯気を纏った名雪が、パタパタ手を振りながら、お湯を掻き分け、えっちらおっちら近づいてくる。
 胸と腰にハンドタオルを巻いただけの姿で。

 相沢祐一と北川潤は熱いお湯を思いっきり吸い込んで、溺れかけた。


「わっわっ、なにしてるの二人とも〜!?」

 いきなりバシャバシャと溺れ出した二人に、名雪は慌ててお湯を跳ね上げて駆けより、二人を抱き起こす。

「ゲホゲホッ!」
「ケホンケホンッ!!」
「もう、二人ともなにやってるの?」
「なにやってるのじゃないっ!」

 咽ながら、涙目で祐一は怒鳴った。

「いきなりそんな格好で走ってくるなっ! びっくりしたじゃないかぁ!」
「えっ、だってさすがに裸だと恥ずかしいし」
「いや、そうじゃなくて」

 うんしょ、と自分と北川の腕を抱かかえている名雪。ぷにょん。腕に押し付けられている薄布一枚隔てただけの乳房の柔らかさに、祐一は思わず口を噤んだ。
 そんな祐一に、名雪はクスリと笑って囁く。
「でも、祐一たちが期待してたのって、こういうことでしょ?」
「……はい」

 そうです、と祐一は目の前でたゆたゆと揺れるおっぱいに目を奪われながら深々と頷いた。

「げほっげほっ、くぁぁ、し、死ぬかと思った……って、水瀬ぇぇ!?」
「あ、北川くん、大丈夫」
「な、なんつう格好を!?」
「変かな」

 不思議そうに、飛びのいた北川に名雪は小首を傾げてみせた。
 北川はあたふたと目を泳がせながら、ぽけーと突っ立っているクラスメイトの姿を眺めた。
 卓球場で見た香里のスラリとした裸とは違い、名雪の裸身は全体に角のない柔らかさをかもし出している。お湯に濡れて薄っすらと透けた小さなタオルの貼りついた乳房は流線型。大きいのでハンドタオルでは隠し切れておらず、下とか上から柔らかそうな膨らみがはみ出している。
 まったくもって実に観賞のし甲斐のある――

「じゃなくて、なんで!?」
「なんでって、ここ温泉だから」
「……あ、そうか。って、いいのかよ!?」
「いいのかって、北川くんたちがそうしろって言ったんだよ」
「あ、そうか」

 ほかならぬ自分達が彼女らに強要した事を思い出し、北川は我に返った。

「って、だからいいのかよ!?」

 今更なに言ってるのかなあ、と名雪は腰に両手を当てた。

「名雪、あんまり前屈みになるのはどうかと」
「なんで?」

 重力に引かれた結果、思わず下から手のひらでタプタプ持ち上げたくなるような形になってるおっぱいに、男二人は握手した。

「いや、まあそのままでいいや」
「ありがたや、ありがたや」
「ほ?」
「な、名雪っ」

 遠くから悲鳴が聞こえる。
 名雪はクルリと振り返ると、手を振った。

「香里も早くおいでよ」
「おいでよって、あなたねっ」

 塀の境目で、名雪と同じように髪をアップした香里が、顔だけ覗かせて此方を窺っている。
 あまりにも堂々と行ってしまった親友の大胆さに怯み捲くっている。

「み、美坂……」

 遂に念願の彼女の登場に、北川は戦慄いた。
 両手を広げて、叫ぶ。

「かむひあ!!」

 ど真ん中ストレートだった。
 ちょっとは繕え。

「香里、観念しなよ」
「そうだぜ、いつまでもそんなところへばりついてても仕方ないだろ」
「ってか、来ないならオレから行くぅぅ!」
「ううっ」

 三者三様にせっつかれ、香里は絶望したかのように二の腕に額を押し付けた。
 そして、諦めたようにフラフラと姿を現す。

「ひゅう♪」
「うおおおお!」
「あ、あんまり見ないでよ!!」

 トボトボ近寄ってくる香里の姿は、名雪と同様危険極まりない際どさだった。
 幅が短く薄いハンドタオルを胸と腰に巻いただけの艶姿。胸は辛うじて大事な部分を覆えているだけで、下乳や谷間は隠しおおせていないし、よく見ると頭頂部のピンとした尖りが布を押し上げていて、タオルの上からもよくわかる。腰に巻いたタオルも膝上二十数センチというレベル。少し歩いただけで太股の付け根が露わになってしまいそうな際どさだ。それが気になっているのだろう。タオルの結び目を腰の下のほうにしているのだが、それはそれで下草の生え際が見えてしまいそうなほどギリギリのラインだ。正面から見ると臍下十数センチというレベルで柔肌が晒されて、小股の切れ込みも殆んど下の方まで見えてしまっているので、凄まじく扇情的な姿になっている。
 同じ格好の名雪など、後ろを向いているのでお尻の割れ目の上半分ぐらい隠せていないのが良く見える。香里も同様だろう。
 もしかしたら、全裸よりエロティックかもしれない。

「うううううう」
「あうあうあうあうああう」

 もはや茫然と、そんでもってじっくりと舐めるように全身を見つめる祐一と北川の視線に、ひたすら我慢していた香里の意思が挫けた。

「や、やややっぱりダメ、だめよ、だめだめ、こんなの恥ずかし過ぎるわよぉぉ!」
「わっわっわ、香里逃げるのはなしだよ!」
「いぃぃやぁぁ、目で犯されてるぅぅ」
「……それならもう卓球場で全部見られてる、というか自分で見せた癖に」
「はぅ!」

 女湯の方に逃げようとして、名雪に羽交い絞めされていた香里は、ヘナヘナとお湯の中に膝を付いた。

「栞、お姉ちゃん汚れちゃったよう」
「まだまだこれからっぽいけどね」
「はうぅ」

 一方の男たちはといえば、仲の良い女の子二人がそんな格好で目の前に並んでいる。まさに極楽。祐一と北川は感涙に咽んだ。

「相沢っ」
「北川っ」
「生きてて良かったぁぁ」
「ううっ、拝啓お母さん、今ボクは幸せです」
「あああんたたち、覚えてなさいよぉぉ」
「おう、当然だぜ美坂。絶対忘れないから」
「うむ、忘れっぽい俺もこれは忘れないぞ」
「死なす。いずれこいつら死体も見れないくらいに死なせてやる」
「あはは」


 まあ、ともあれ、いい加減観念したのだろう。香里は渋々と胸元や股間を腕で隠しながら、お湯に浸かった。

「あ、お湯にタオルを浸けるのはいけな――」
「ギロッ」

 魔眼で睨まれ、北川の喉は声を発する機能を封じられる。

(北川、焦るな。こういうのは順を追ってじっくり雰囲気に任せればいいんだ)
(そ、そうか?)
(元々既にけっこう二人とも開放的な気分になってる。それに香里なんか流されやすいタイプだからな)
(確かに。今、こうしてる時点で流されてるし)
(それにだ。なんとか名雪をこっちの味方につけてやろう)
(なに? できるのか、そんなこと)
(まあやってみて損はないだろう。あいつも結構その気になってるみたいだしな)

 何だかんだ言いつつやはり露天風呂は心地いいのだろう。いつの間にか目を細めて気持ちよさそうに温泉にひたっている香里の横で、同じくのほほんとしながら香里とポツポツ他愛のない言葉のやりとりをしていた名雪が、二人の視線に気がつき、キョトンと目を瞬いた。目線が逢った途端、祐一が何やら目配せをはじめる。
 そして、北川がボケーと見守る間で、なにやら祐一と名雪がアイコンタクトで会話をし始めた。傍目にも高度かつ密度の濃い情報がやりとりされているようだ。

「……テレパシー?」

 いや、あくまでアイコンタクトです。

「名雪? どうしたの、さっきから目、パチパチして。ゴミでも入った?」
「あ、うん、でも取れたよ」

 どうやら情報のやり取りは終わったらしい。
 最後に名雪が、僅かに赤らんだ顔で恨みがましく祐一を睨みつける。
 だが、祐一の目配せに、我侭なんだからと言わんばかりに目を細めると、さり気ない様子で会話を切り出した。

「わたし、温泉ってもっと濁ってるものなんだと思ってたけど、ここのお湯って透明だね」
「詳しくは知らないけど、半々ぐらいじゃないの?」

 と言いながら、香里は改めてお湯の透明度が気になったのか、自分の身体を見下ろした。
 お湯は確かに清流のように透き通っていて、敷き詰められた石まではっきりと見える。

「うー、でもおかげでさっきから二人のそれ、見えちゃってて困るよ」
「え?」
「なにが?」

 香里がキョトンと顔を上げ、自分達を指差された北川が不思議そうな顔をする。

「祐一のも、北川くんのも、なんか元気いっぱいだし……えっち」

 名雪の指差すものを見て、香里はお湯の中で凍りついた。
 タオルを巻くなどという無粋な事をしていない男二人の股間は――タオル巻いててもあんまり意味なかっただろうけど――名雪と香里の裸同然の姿を前にして、当然のように天を突いて大きくなっていた。
 お湯が透明なので、その様子がくっきりと香里たちにも見える。

「―――っ!!」
「おわっ、わわ」

 ボンッと赤面する香里と、慌てて手で隠そうとする北川。祐一だけが、

「いやん、えっち」などとほざいて笑っている。

「ちょ、ちょっと隠しなさいよ、それ!」
「えー、香里、それ勿体無いよ。二人とも、もっとちゃんと見せて〜」
「な、なななな」

 泡を食う香里に、名雪は何事もないかのように笑って言う。

「だって、卓球の時は動き回ってたし、遠かったからはっきり分かんなかったし」
「見たかったの、あんた!!」
「明るいところでじっくり見たことないもん。香里も興味あるでしょ。男の子のおちんちん」
「おち――」

 思考回路もフリーズした。

「だとさ。おい、北川。お嬢様方がご所望だ、見せてやれよ」
「オレか?」
「先陣は任せた!」
「む、むう、仕方ない」

 とか言いつつさり気に嬉しそうに、ザバンと立ち上がる北川。

「二人がどうしてもというので、仕方なく、恥を忍んでお見せして進ぜよう。抵抗はしないので、ご自由にどうぞ〜」
「ノリノリだな、北川」
「おう」

 腰に手を当て、名雪と香里の前に仁王立ちに北川は立った。
 当たり前だが、硬くそそり立ったそれは二人の顔の前にギンと突き出される。

「わー」
「―――っ!!」

 好奇心一杯に目を輝かせる名雪と、喉に餅を詰まらせたような顔をして、でも目を離せなくなってる香里。

「香里香里、すごいねえ、こんな風なんだ」
「……ゴク」
「相沢ぁ、オレ変な気分」

 美少女二人が自分のモノに顔を近づけてはしゃいでいる状況に、北川はもうデレデレ。

「祐一も同じ形なの?」
「男は一緒だぞ。個人差あるけどな。見るか?」
「見る見る♪」
「よし」
「――――あうッッ!!」

 祐一が立ち上がり、香里たちの前にもう一本、男性のシンボルが突きつけられた。
 もう香里、卒倒寸前。だが、気を失うでもなく、上気した顔で最も近しい友人達のそれを唾を飲み込みながら凝視している。

「簡単に説明するとだ、ここが竿でここが亀頭」
「うんうん」
「んで、ここが裏筋っつって、触られると特に気持ちがいい」
「触ってみていい?」

 交互に名雪が二人を見上げる。だらしなく弛緩した祐一たちの顔はさらに蕩けた。

「や、やれやれ、仕方ないなあ」
「おさわり自由だぜ」
「じゃ、遠慮なく」

 名雪はさほど抵抗もなく、右手で北川の、左手で祐一のものを握った。

「わっわっ、固いよ〜」

 グニグニと竿を握る名雪。

「み、水瀬、そんな乱暴に」
「こら、握るな」
「わわっ、凄い。二人ともまだ大きくなってる」
「そりゃ、そんな風に触られると」

 ビクリビクリと震える二人のものを、名雪はキャーキャー言いながら、揉みしだく。

「こんなに硬くなるんだ。ほら、香里も触ってみなよ」
「え? え?」

 促されるまま、思わず名雪から右手の方を受け取る。
 リコーダーを持つようにそれを握りしめ、ぽかんとそれの持ち主を見上げた。

「あ、ども」
「―――っ!」

 今更のようにそれが北川の男性器だと理解し、香里はゴクリと唾を飲み込みながらもう一度手の中のそれを見る。にょきりと顔の前に突き出す赤黒い肉の棒。触ると分かるのだが、手のひらの中でビクビクと震えている。そして、硬い。お湯より熱くて、そそり立ってる男性の剛直。

「な、なななな」
「あたっ」
「ふえ!?」
「み、美坂、爪立てないで、痛いいたた」
「あ、ごめんなさい」

 思わず力を込めてしまっていたらしい。慌てて、握る力を弱め、両手を添えるように持ち返る。
 だが、こんなもの握らされて、どうしていいか分からない。
 パニックに陥った香里は、親友に救いを求めた。

「な、名雪、これどうすればいいの?」
「ええっとねえ、とりあえずこうやって、ここをしごいたり」

 祐一の竿の部分を握って、上下に動かす名雪。

「こうやって、揉んでみたり」

 さらに、亀頭の部分を握ってグニグニ揉む名雪。

「こうやって擽ってみたり」

 トドメに裏スジの部分を擦する名雪。

「すると、気持ちいいんだって。ね、祐一」
「お〜、気持ちいいぞ〜」
「え? え?」

 いや、そういうことを聞いたのではなく。

「はい、今したみたいにやってみたらいいよ」

 でも、他にどうしたらいいのか頭が真っ白の香里には分からなかったので、名雪のやっていた動作を、見様見真似でやってみる。

「み、美坂、わっわっ」

 頭上から北川の落ち着きない声が降って来る。

「北川、香里の手コキ、どんな感じだ」
「死ぬ」
「……単語しか返ってこないし。おい、名雪。なんか負けてるぞ」
「むー、北川くんが弱すぎなんだよ。祐一、だめ?」
「いや、だめじゃない。全然ダメじゃない」
「うーうーうー」
「あたし、だから、なにを、いったい」

 と、言いつつさり気に熱中している香里嬢。
 グイグイとこね回しているうちに、さらに北川のものは硬く大きくなってくる。自分の行為で北川のものが変化していく。それが妙に楽しいと言うか嬉しいと言うか、気が大きくなるというか。
 鼻先に当たりそうな先端。思わず、香里は舌を出して舐めてみた。

「うひゃ」

 悲鳴があがる。

(ななななによ、変な声出しちゃって)

 なんだかさらに動転してしまった香里は、あまりにもしゃぶるのにいい形をしていたのをいいことに、勢いに任せてそれを口に含み、舌で舐めまわした。
 ねっとりとした温かい口内に先端を包まれる。香里の小さな唇が一生懸命自分のものを頬張っているその光景、加えてレロレロと舌で弄られて、北川は声にならない呻き声を漏らす。

「うわっ、香里のやつ先制口撃に出たぞ」
「ううっ、香里って意外と大胆だよ」
「しぬーしぬー」
「んーんーんー」

 アイスキャンディのように舐めまわし、香里はチュポンと音を立てて、北川のものを口から引き抜いた。ダラリと香里の唾塗れの先端が、香里の前に顔を出した。
 チラリと横目で隣を見ると、此方に対抗してか、名雪が祐一のものを頬張り、そのまま上下に顔をスライドさせている。なるほど、ああやるものなのかと香里が両手で竿をニギニギしながら見ていると、視線に気付いたのか、名雪が一旦頭を動かすのを止めた。

「ふぁふぁにゅふぁにゅふぃにゃ」
「こ、こら名雪、口に入れたまま喋るな」

 従姉妹の頭に手を添えて快感に耐えていた祐一がペシリと叩く。
 名雪は、恨めしげに祐一を上目に見やると、舌でチロチロと舐めながら口から引き抜いた。

「香里、どう?」
「どうって」

 言われても。
 香里は思わず北川を上目で見上げる。幸せそうな顔。先刻、卓球場で自分の裸を目の当たりにした時と同じような顔だ。香里は「うう」と唸って手に思いっきり力を込めた。

「うぎっ!」
「わっ、だめだよ香里。そんなに乱暴に扱っちゃ」
「べ、別にいいわよ、こんなの」
「そういう訳にはいかないよ」

 窘めるようにそう云って、名雪は――祐一のものを優しく擦りあげながら――、ひょいと首を伸ばして、北川の竿に艶かしく唇を押し当てた。

「な、なゆ」
「ほら、香里も。こうやってね、優しく」

 北川の竿の裏側を舌でちろちろと舐めあげていく名雪。何故か焦燥に駆られた香里も、慌てて亀頭の部分に口づけた。根本から丹念に舌でペロペロ舐めまわしていく名雪と、先端を必死に口に含んでクチュクチュとしゃぶる香里。二種類の異なった艶かしい粘膜に一度に自身を舐めまわされ、北川は上ずった声をあげながら空いた手を右往左往。

「や、やべえ、しぬ、相沢、オレしぬしぬ」
「死ぬな死ぬな。うう、でもいいなあ。なあ、俺の方もしてくれ〜」
「にゅ? 仕方ないなあ。香里、こっちこっち」
「あ、うん」

 ぼんやりと名雪に促されるまま、今度は祐一の竿に口を寄せる香里。名雪と二人で祐一の竿を挟むように舐めまわしていく。 勿論、北川の方は手で擦ったままアフターケアは忘れない――無意識だけど――。
 そうやって、何度か交互に祐一と北川の男根を二人一緒に唾液塗れにして回る。

「はぁ、温泉って癒されるなあ、北川」
「三光年ほど間違ってる気もするが、まったくその通りだとオレも思う」

 視界を圧する緑の山々。そして澱んだ心を押し流すような渓谷のせせらぐ音色。
 祐一と北川は、腰に手を当て湯張りに立ちながら、景色を眺めている。
 それだけなら、温泉を楽しんでいる若者二人という一種爽やかな構図で完成なのだが……
 女性二人が、それぞれの股間にしゃぶりついて竿を頬張り、競うように頭を上下に動かして淫らな音を奏でているので、色々と台無し。

「ううっ、そろそろヤバいかも」
「な、名雪、出そう」
「りょうふぁーい、かほい、まへないよ」
「ふん、ほはいてらっひゃい」

 二人揃ってペースを加速させる。

「み、美坂、出る出る」
「ううっ、名雪」

 その声に、名雪と香里は、キュッとストローを吸うように鈴口に舌を添え、思いっきり吸い上げた。極まっていた祐一たちは、その攻撃に耐えられるはずもなく、一気に爆発する。

「んん!?」
「んあ!?」

 勢い良く喉奥に叩きつけられた熱い液体に、名雪たちは反射的に口から男根を引き抜いた。まだ止まらない白濁液が、ビュクビュクと打ち出され、それぞれ名雪と香里の顔にぶちまけられる。

「ふわっ、わわ」
「あ……あ」

 無意識に竿をしごきながら、顔に掛けられる液体の勢いと、熱さに二人はびっくりしたように目を瞬いた。
 特に香里は放心したように、顔中にへばりついたドロリとした液体を空いた左手の指で撫でている。

「た、沢山出たね」
「わ、若いからな」

 あまり意味のない受け答えをしながら、祐一は脱力した。

「まだ、ちょっと出てるね」

 言いながら、名雪がやや力を失った男根をもう一度口に含んで、鈴口の奥に残った液を吸出して掃除する。放心していた香里も、

「み、美坂、あ、ちょっと」

 無意識にだろうか、名雪の真似をして、北川のものを頬張ると、舌先を鈴口に潜り込ませ、綺麗にしていく。

「……苦い」

 口端から垂れる白い液を舐め取りながら、香里は茫然と独りごちた。
 その様子にさすがに心配になってきたのか、北川が恐る恐る訊ねた。

「美坂、その……嫌だったんなら、ごめん」
「え? いえ、その……別に、いいんだけど」

 というか、どう考えても自分から進んでやったような記憶しかないので、香里としても今更怒るのも変な気がして、途惑うばかり。
 ポカンとしている香里。北川はまたもや、ムクムクと分身が硬くなっていくのを感じた。
 顔中自分の出したもの塗れで、かすかにタオルが透けて先端の蕾が見えている胸の谷間まで、白濁液が垂れている。そんな自分に汚された香里の艶姿を見て、興奮しないわけがない。

「香里、顔拭いてあげるから、こっち向いて」
「あ、うん」
「せーえきなんて、お湯に混ぜちゃったら拙いもんね」
「せ、せいえき」

 名雪にタオルで顔や髪についた白濁液を拭われながら、香里は茫然と繰り返した。
 手淫してフェラした挙句に、顔射までされた自分。

「……あ、あたしってば」

 ガックリとお湯に手を付く。

「まあまあ、何事も経験だよ」
「そうだぞ、香里」
「そ、そういう問題?」
「でも、オレ気持ちよかったぜ。美坂、ありがとな」
「お、お礼を言われても」

 そんな晴れやかな顔で、顔の前にまだ勃起したまんまのおちんちん突きつけられながら、そんな事言われても、どう反応していいやら。


「さて、すっきりしたところで、名雪」
「うにゅ?」

 突然の祐一の猫なで声に、名雪は嫌な予感がして動きを止めた。

「次は名雪の見せてくれ」
「………へ?」
「いや、俺たちのはじっくり見せた上に触らせた挙句、味見までさせたんだから、次は言い出しっぺの名雪だよなあ、という話だ」
「え……ええええええ!?」

 そんなの聞いてないよと悲鳴をあげる名雪。だが、祐一は問答無用で彼女の背後に回りこみ、脇に手を添えると、座り込む子供にやるようにして名雪を持ち上げ、無理矢理立たせた。

「ギブ・アンド・テイクは世の中の常識だぞ」
「わっわわわ」

 手を離され、名雪は慌てて自分の足で立った。

「ちょ、ちょっと祐一、どうするの!?」
「そうだな、まずは俺たちに名雪の大事な部分を見せてもらう」
「うそぉぉ!」
「ほんと」
「ちょっと待ってよぉ」
「タンマは無しだぞ」

 名雪の抗議をあっさりいなし、祐一は背後から名雪の腰に巻かれたハンドタオルの裾に手を掛けた。

「どれどれ、ではご開帳」
「わーわー」

 そして、一気にペロリと捲った。

「あーっっ!!」
「ぶはははっ!」
「あ、ちょ、ちょっと」

 唐突な成り行きをポカンと見守るしかなかった香里たちの前に、水瀬名雪のデルタ状の下草に覆われたプックリとした恥丘が晒された。
 下腹部に当たる視線にカチンと硬直している名雪の耳元に、祐一は優しく囁いた。

「感心感心、ちゃんと手入れしてたんだな」
「ゆ、ゆういち」

 さわさわとお腹を撫でまわす祐一の手つきに、名雪は力のない声で名前を呼んだ。

「ほら、香里たちにちゃんと見えるように足広げて立つんだ」
「う、み、見せるの?」
「見せてやれよ。北川も、香里だって他の女の子のココはちゃんと見たことないんだから。……ないよな、香里。まさか栞を手にかけてたりとかは」
「し、してないわよ!!」
「だとさ」
「うー、でもさすがにこれは恥ずかしいよ」
「大丈夫大丈夫」

 気楽に云う祐一に、名雪は一瞬拗ねたような視線を送り、仕方ないと諦めの混じった嘆息をこぼした。

「うー、もぉ。香里も北川くんも勘違いしないでよ、他の人がいたら、わたしこんな事絶対しないんだからね」

 開き直ったのだろうか。ある意味、ひどく扇情的な事を口にしながら、名雪は自分でハンドタオルの裾を摘み上げながら、躊躇う様子もなく立ち幅を広げた。
 ピッタリと閉ざされていた太ももの奥が空間を得る。お湯に浸かっている香里たちの目線にちょうど合うように、名雪のしっとりと濡れた薄い繁みの奥。ぴったりと閉じた割れ目が現われた。

「えっと、見えた?」
「…………」
「…………」

 言葉もなく瞬きも出来ず名雪の秘裂を見つめている香里と北川。

「ああ、バッチリ見えてる。ピンク色だな」
「云わなくていいよ」

 自分も肩までお湯に浸かって間近から観賞した祐一の声に、名雪は恥ずかしげに身動ぎした。

「香里も北川くんも、じっくり見すぎだよ〜」

 まさに凝視という言葉がぴったりの様子で見られ、名雪の泣き笑いの声が渓谷に響く。

「い、いや、オレ生で女の子のあそこ見るの初めてだから」
「そっか、それじゃあじっくり見たくもなるよね」

 我慢我慢と健気に紅潮した顔を頷かせ、もう少しだけ脚を広げてあげる名雪。
 かすかにヒクヒクと口をひらき、ポタポタとお湯の雫を垂らしている柔らかそうな襞が、くっきりと北川と香里の目に映った。

「香里、わたしのここ、変じゃない?」
「そ、そんな事聞かれても」

 自分のだってそんなにはっきりと見たことがないのに、分かるわけがなかった。

「ゆ、祐一。わたし、なんか変な気分になってきたよ。みんなに見られてるからかな」

 胸と腰をタオルで覆っただけの裸同然の姿。その上、捲り上げたタオルを摘み、下腹部を皆の前に晒しながら恥ずかしげに頬を染めている名雪の姿に、祐一は額に浮かんだ汗を拭う。

「あー、あんま気にするな。変な気分になってるのはお前だけじゃないから。その、なんだ、色っぽくていいぞ、名雪」
「そう? 色っぽい?」

 これで色っぽくないと言えるヤツは気が狂っているに違いないと祐一は断定できる。
 誤魔化すように祐一は自分の前でまだ名雪の秘所を見ている北川と香里をせっついた。

「ほれ、香里、北川。いつまでも見てないで、触ってみれ」
「さ、触るの!?」
「いいのか?」
「いいよな?」
「うー、もう好きにしていいよ〜」

 腰に巻いたタオルを摘み上げたまま、名雪は何だか投げ槍に空を見上げて許可する。

「じゃあ」
「って、いきなり指挿れないでっ」
「好きにしていいって言ったじゃないか」
「だからっていきなりはなし!」
「ああ分かった分かった、悪かったよっと」

 前フリ無しに小指を膣に挿れかけた祐一は、ニヤニヤと小指を立てたまま謝った。

「ほら、香里も北川も。ボケッとしてないで触ってみろよ」
「で、でも」
「でもじゃないって。名雪もいいって云ってるんだから」
「な、なゆき」
「香里、痛くしないでね」

 いや、そうじゃなくて。
 香里はどうしたらいいのか分からず、救いを求めて傍らの北川に視線を送るが、北川はと云えばポカンとしたバカ面のまま、名雪の下腹部に興味深げに顔を近づけている。

「水瀬、ここの毛の色、髪の毛と一緒なんだな」
「別に染めてないもん。当たり前だよ」
「おお、こ、ここから割れ目になってるんだ」
「そ、そうだよ」
「すげぇ、女の子の此処ってプックリしてて結構弾力あるんだな」
「あ、あんまり強く押したらやだよ」
「お、おう」

 遠慮なしに名雪のデルタ地帯を指で掻き分け、恥丘のラインをプニプニと触ったり押したりして確かめている北川にムッとした香里は、北川を押しのけるように名雪のひらいた両足の間に顔を近づける。

「ほ、ほんとに触るわよ!」
「うん、いいよ〜」

 本当に分かってるのか疑うような返事に、香里はもう止めるに止められず、名雪の女陰を指でひらいた。自分とは違う女の香りに香里は半ば酩酊しながら襞に伸ばした指を這わせた。
 かすかにぬめった感触。お湯に濡れているのとは違う。

「名雪、あなた」
「だ、だって」

 問い詰めるような香里の声に、名雪は恥ずかしげに目を伏せる。
 だが、香里には責めるつもりは毛頭なかった。だって、さっきまで自分達がやっていたことを思い出せば、興奮するなという方が酷。斯く云う香里自身も、北川のものに舌を這わせた時からもう下半身に熱を感じ始めている。顔にかけられた時には軽く快感すら感じた。
 自分ですらそうなのだから、先ほどから皆に大事な部分を見られている名雪が、濡れはじめているのは不思議ではない。

「か、香里」

 香里は無心に、まだ強張っている名雪の秘唇をほぐすように触り始めた。
 半ば投げやりな気分だ。やってる事は無茶苦茶だが、妙にみんなノリが軽くて後ろ暗さを感じないので、止めようとか逃げ出そうという気にならないのだ。完全に場の雰囲気に流されているのは分かっているのだが、どうにもならない。僅かにこびりついたイケナイ事をしているというドキドキ感が、香里の背中を後押しする。
 もう、理性ですらこのまま行くところまで行ってしまえと考える事を放棄していた。正直に言おう。はっきり云って死ぬほど恥ずかしい。恥ずかしいのだが、今こうやってこのメンバー四人でもって何も身につけず裸で戯れているのは楽しくてしかたがない。
 香里はいつの間にか自分が薄っすらと笑みを浮かべているのに気がついていなかった。

「な、なあ、美坂。クリトリスってどこだ?」
「え? えっと……」

 北川に訊ねられ、香里は反射的に指を這わせて探すのだが、自分のではない女性器は勝手が分からず、

「わっわっ、変な風に触らないで〜」
「クリトリスなら此処だぞ」

 悶える名雪を見かねたのか、後ろから祐一が手を伸ばしてツンツンと割れ目の端を突いて見せた。

「ひゃん!」

 ビクンと名雪の体が震える。

「み、水瀬、やっぱりクリトリスって触られると感じるのか?」
「う、うん、ビリビリって来るよ」
「香里、北川、触ってやれよ」

 名雪の反応に咄嗟に自分で触った時の感覚を思い出していた香里は、言われるがまま北川が指で捲り出した肉芽を北川と一緒に中指で弄る。

「こういうのって息吹きかけても反応するんだぜ」

 と云いながら、祐一が顔を近づけ、息を吹きかけるどころかペロリと舌を伸ばして二人の中指ごと肉芽を舐めた。

「ひゃっ! やあ、はぁああ、な、なんかすっごく気持ちよくなってきたかも」

 少し上目に見ると、タオルを摘む手に力がこもり、膝の震えにチャプチャプとお湯が跳ねる。名雪の目はトロンと緩んでいた。

「どうする? もっと気持ちよくなるか?」
「え? ……う、うん、お願い」
「じゃあ、指入れてみるぞ」

 さすがに三人揃って名雪の前に顔をつき合わせているのは狭いので、祐一はお尻の方に回りこんだ。

「……相変わらず、名雪のお尻は綺麗だな」
「ゆ、祐一、撫でまわさないでっ」

 タオルを捲りあげ、二つの柔らかい肉を撫でまわす従兄妹に名雪は「ひゃっ」と声をあげて抗議した。

「わかったわかった」

 撫でる手を止め、祐一は身体をお湯に沈めると、下から股下を覗いて場所を確認して、股間に手を差し入れた。

「香里、ちょっとその部分、開いてみせてくれ」
「え、こ、こう?」

 一旦愛撫を北川に任し、香里は名雪の陰唇を指で左右に開く。
 最後の華がひらき、三人の前に名雪の一番奥に隠された部分が姿をあらわした。

「よし、ここだな」
「な、なあ、そこ?」
「き、北川くん、あんまり息吹きかけないでぇ」

 瞬きするのも忘れて、垣間見えた小さな秘洞を凝視する北川に、祐一はその周囲をツンツンと指で突いて云う。

「ああ、ここが名雪の秘密の花園だぞ」
「なによ、秘密の花園って」
「詞的な表現にケチつけるなよ。端的に云うとこれを挿れるところだ」

 得意げに自分の股間で自己主張しているものを指し示す祐一。香里は真っ赤になって顔を逸らした。
 あ、あんなのが此処に入るの?
 恐れにも似た心地のまま逸らした目線は北川を捉える。夢中で名雪の秘所を触っている北川。思わず視線を彼の股間に落す。案の定、ギンギンに勃っていた。思わずそれが自分の中に入るところを想像して、香里は下腹部が熱くなるのを感じた。

「じゃあ、名雪、指いれるぞ」

 云うや、祐一は小さな肉の秘洞に人差し指を挿し込んでいく。

「わっわっわっわっ」

 ずぷずぷと体の中に入ってくる得体の知れない感覚にあたふたと名雪の腕が宙を掻いた。

「ここ、どんな感じだ?」

 云いながら、膣に入れた人差し指を折り曲げて、クニクニと引っかく。

「ど、どどどんな感じかって言われても、はぅぅ」
「じゃあこっちは?」

 指先の方向を変えてコリコリと引っかく。

「あんっ、だ、だめ」
「うーむ、名雪敏感すぎ」
「だ、だって、みんなに触られてるって思ったら」
「名雪はえろいなあ」
「そ、そんな事ないもん」
「そうか? おい、北川」
「なんだ?」

 唾を呑みながら、祐一の指が出入りするのを見つめていた北川が目を瞬く。

「ちょっとこっち手伝え」
「手伝えって、何を」
「いや、お前も一緒に指ちょっと入れてみろよ」
「え? いいのか?」
「名雪、二本入っても大丈夫だよな」
「わ、わかんない、ひゃ」
「まあ、やってみれば分かるか。香里、もうちょっとそこひらいててくれ」
「え、ええ」

 祐一に促され、北川は祐一の指が埋まっている部分に、自分の小指を割り込ませていく。
 ツプッと軽い水音がして、北川の指は名雪の中に呑み込まれていった。

「あっあっ、ま、また違うのが入ってきた」
「うわっ、熱い。女の子の中ってこんなに熱いのか」
「やっ、ああん」

 新たに狭い洞を割り入ってくる指の感触に、名雪はか細い嬌声を漏らした。

「んんあああ、ち、違うのが入って」
「ちょ、これからどうすれば」
「えっとだな、んじゃ、まあ名雪の反応を確かめつつ、入れたり出したり」
「相沢、言い方が卑猥だ」
「あほか。卑猥な事やってるんだから当たり前だろ」
「あ、そっか」
「ど、どうでもいいけど、中途半端に動かすのやめないでよ〜」

 指を入れられたままおしゃべりを始められて、名雪は恥ずかしそうに抗議。

「おお、悪い悪い」

 空いた手で形のいい名雪のお尻をもみながら、祐一は指を動かし始めた。

「北川も動かせよ」
「お、おう」

 二本の指が名雪の体の中に入り込み、それぞれ違う動きを見せる。同じ人間の二本の指ならこうは行かない。動きのパターンがまるで違うため、名雪の身体にははじめて経験する複雑な電気が走った。
 上気した名雪の切なげな表情に、香里は思わず唾を呑む。

「な、名雪?」
「か、香里、気持ちいいよぉ」
「す、すげえ」

 全身にしっとりと汗を掻いて喘ぎ出した名雪の姿に北川が鼻を膨らませた。

「香里、少し代わってくれ」
「代われって何を?」
「指だよ、指」

 ポタポタとお湯以外の液体が伝い出した指を抜いて、祐一はペロリと舐める。

「北川と名雪の中、弄ってやってくれ」
「え、え、あたしもやるの?」
「女同士の方がポイントとかわかりそうだしな」

 仕方なく、香里も名雪の秘洞に手を伸ばす。中を掻き回している北川の指。その指を呑み込んでいる周囲の肉を暫く躊躇うように揉んでいたが、やがて意を決して膣の中に中指を挿れた。

「な、名雪、こう?」
「あっあっ、も、もうちょっと強く」
「水瀬、こうか?」
「北川くん、あたしの反対側を、そう爪で引っかくみたいにして」
「こう、か?」
「わっ、ああっ、やぁぁぁ、イイ、いいよ、香里、北川くん。ふっ、ああ、ああん、こ、交互に出し入れなんて、へ、変だよ、やっああ」

 名雪の艶声が高まり、二本の指が、それぞれ競うように名雪の中を好き勝手に出入りしはじめる。

「あぅん、んん、やぁ、わたしみんなに、弄られてるぅ」

 風光明媚な温泉の真ん中でビクリビクリと震え、喘ぎながら足を開いて立っている少女。その周囲には夢中で少女の脚の付け根に顔を近づけて、その部分を弄って遊んでいる三人の男女。
 それは端から見れば淫猥な姿というよりも、戯れあってる子供達のように見えたかもしれない。

「名雪、どうだ? みんなに指挿れられて、膣触られてどんな感じだ?」
「はう、あう、う、うん、いいよ、ひっうん、うん、キモチいい。キモチいいよ。祐一の指と香里の指と北川くんのがみんな違う風に中で動いて、んんっ、あっ、ああっ、あっ、ちょ、ちょっとなんか、き、き、きた、きたかも」
「もうちょっと頑張れよ」

 足元が頼りなくなってきた名雪を支えるように、祐一は背後から名雪を抱き締めた。

「ゆ、ゆういち?」

 祐一は答えず、胸を覆っているハンドタオルを剥ぎ取った。ぷるんと重力に惹かれて、プリンのように震えて姿を現す名雪の乳房。

「こっちも触って欲しくないか?」
「ゆ、ゆういち、うん、うん、おっぱい触って、んんあああ触っていいよぉ」

 背後からその重さを確かめるように下に添えた手を持ち上げ、乳房を揺らす。
 そしてゆっくりと舐るように広げた手のひらを乳房に宛がい、揉みしだきはじめた。

「はぁぁん」
「ああ、名雪のおっぱい、やっぱり柔らかいなあ」
「そんな、こと、んんっ」

 首筋に舌が這いずり、ゾクリと背筋を震わす名雪。その感触に、それまで段々とせり上がってきていたものが一気に湧き上がってくる。

「あっ、ああっ、ふあああ」

 敏感なうなじを舐る粘膜の熱さ、張り詰めた双乳をゆっくりと焦らすように弄る両手、そして 自分の中を交互に出入りし、好き勝手に引っかいて掻き回す親友二人の指の攻撃。
 それら一箇所一箇所ならばともかく、三人がかりで一度に攻められては膨れ上がるものを抑える事など出来るはずもなかった。

「ひやっ、ああ、き、きちゃう、だめ、だめっ」
「来たって、水瀬?」
「あっ、あっ、あっ、と、止めないで」

 完全に切羽詰ったような名雪の声、そしてガクガクと震え出した膝に、三人は無意識に指の動きに激しさを加える。
 そして、一際激しく名雪の全身が痙攣し、

「あっ、ああ、あああ、かん、感じるよ、みんな、わた、わたしだめ、だめ、もう、もうあう、ひぁ、ああああああああああああああああああああ!!」

 艶の篭もった嬌声。
 同時に名雪の背が反り返り、香里と北川の指を膣壁がギュッと締め付ける。
 次の瞬間、クタッと名雪の体から一切の力が抜けた。

「っっと、わっわっ、な、名雪おい、わわわ」

 構えていなかった祐一は、いきなり前のめりに崩れた名雪の身体を支えられず、

「えっ、ちょ、まっ、きゃぁ」
「どわぁぁ」


 ――――バシャァァァァン

 名雪の足元に居た香里と北川ごとお湯の中へと轟沈した。












 温泉卓球――

 温泉篇→泡盛篇








inserted by FC2 system