その日、この町の空は押し込めるような黒い雲に覆われていた。
手を伸ばせば届きそうなほどに低く、地上を押し潰さんばかりに暗黒の雲が空に居座っている。
まるで、落ち込むように静かな空気。
光届かぬ闇の世界。
その薄暗い情景に、病院は無言で聳え立っていた。光降り注ぐ太陽の下では、その白い壁が照り返し、希望に輝く白亜の城にすら見る事ができるその建物も、今この情景の中では白い壁も灰色に映り、さながら絶望に満たされた魔王の城だ。
そして、その外観にでも影響されたように病院の内側もまた沈痛な空気が流れていた。
普段は活力に溢れ、笑顔を閃かせながら病院内を駆け回る看護婦の表情は曇りを帯び、柔らかな言葉で患者を励ます医者たちの口調もまた鈍い。
これでは病院内の雰囲気も自然と暗くなろうと云うものだった。恐らく、病院の暗色の外観も曇り空の反映ではなく、この内側の雰囲気により滲み出たものなのだろう。
病院内の沈滞した雰囲気、理由は明白にして一つだった。
今日…秋子さんが退院する。
そう、当病院のアイドルにして女神―水瀬秋子さまがとうとうこの病院から立ち去られてしまわれるのだ!
看護婦や医者どもの落ち込みようったら、もう笑っちゃうほどである。
まるで大好きだった先生が結婚して学校を辞めてしまう現実にイジケまくる小学生も斯くやというべきウジウジとしたイジケっぷりであった。
とはいえ、幾ら病院関係者どもがイジケて病院食の調理に失敗しようが、拗ねて患者に渡す風邪薬を下剤と間違えようが、落ち込んでレントゲンに映ったただの水泡を悪性の腫瘍だと云ってしまおうが、当の秋子さんや彼女を取り巻く面々からすれば、そんな事は知ったこっちゃない訳で。
着々と秋子さん退院とその祝賀会の準備は整いつつあった。
「ちょっと! 今、あそこの角を左に曲がっていった黒塗りの車を追って! 急いで!!」
パタリ、とタクシーの後部座席のドアが運転席からの遠隔操作により開いた途端、飛び込んできた茶色の髪の毛を頭の両端で括った少女の発した絶叫がそれだった。
「了解した」
間髪入れず返答する運転手。
素早く左手を動かし、ギアをパーキングから一速に入れてアクセルを踏もうとしたところで、後から飛び込んできた青年が焦ったように絶叫した。
「待て待てマテえぃッ!」
青年はポカリと少女の頭を引っ叩き、頭を抱えんばかりに喚きたてた。
「馬鹿者! 何訳分からん事を云ってやがる!」
「あう〜、何よ、ちょっと昨日読んだ漫画の一シーンを再現しただけじゃない」
「実際にやるやつがあるか、馬鹿。だいたいアンタも何なんだ、運転手!」
壮年に見える運転手はバックミラー越しに鋭い眼差しを一瞬閃かし、無表情に告げた。
「私は客の要望に応えるだけだ」
「電話でタクシー呼んだんだから、いきなり目の前の車を追えなんて云うはずないだろうが!?」
「世の中には在り得ない事などないのだよ、お客さん。故に私はあらゆる事態に対処できるように心がけている」
まるで戦場の最中で営業しているかのような断固とした渋みのある言葉。
あっぱれ、客商売の鏡だった。だが、この場合ははた迷惑でしかない。
青年こと相沢祐一は内心で、何でよりにもよってこんなのが、と呟きつつ行き先を告げる。
「ああ、もう分かりましたよ。とりあえず、小菅総合病院まで行ってくれ」
「了解した。五分で送り届けよう」
「わぁ、はやーい」
ちなみに通常は総合病院まで車で十五分かかる。
「ゆっくり行けぇ! ゆっくりだ!」
「……仕方ない、客の要望とあらば妥協しよう」
ちょっと泣きそうになりながら声を枯らした祐一の耳に忌々しげな舌打ちの響きが確かに聞こえた。
病院に着くまでに死ぬかもしれん。
祐一は一応覚悟を決めつつ、蒼白となりながら後部座席のシートベルトを装着する。
「じゃあ、名雪、天野、行って来る…さらばだ」
「行ってきまーす!」
悲愴極まりない表情で別れを告げる祐一とニコニコと上機嫌に手を振る真琴。
水瀬家の玄関前、水瀬名雪と天野美汐が見送る中、対照的な二人を乗せたタクシーはいきなり急加速を決め、爆煙を残しつつ走り去っていった。
「ゆ、祐一大丈夫かなあ」
「……コメントのしようがありませんね」
冷汗を垂らしながら呟く名雪に、美汐は呆れた様に目を瞬きつつ返答した。
「よう、水瀬、美汐ちゃん。相沢たちもう行ったのか?」
しばし呆然とタクシーの去った方を眺めていた二人の背後から、能天気な声が降りかかる。
名雪たちが振り返ると、茶色のジャンパーに両手を突っ込んだ北川の姿があった。
「あ、北川君。早いね。祐一たちなら今、お母さんたちを迎えに行った所だよ」
「そうか、じゃあもうすぐ帰ってくるな。で? パーティーの準備出来てるのか?」
「だいたいね。美汐ちゃんにも手伝ってもらったし。後は料理がもう少しってところだよ」
「料理ね、じゃあ、ま、オレもちっと手伝うかな」
それを聞いて美汐が少し驚いたように眦を吊り上げた。
「北川さん、お料理出来るんですか?」
「ええ!? 出来るの、北川君!?」
「多少はな。っと、立ち話はいいけどさ。中に入らないか? 流石にこんな所突っ立ってたら凍えちまう」
「そうだね。じゃあ北川君にも手伝ってもらおうかな。エプロンあったかなあ」
記憶を探るように人差し指を唇に当てる名雪を先頭に、三人の姿は水瀬家の中へと消えていった。
§
水瀬家の家の中に響き渡る呼び鈴の音。
どうやら、他の面々も到着したようだ。
「お願い北川君、ちょっと出て」
「りょうかーい」
パタパタとスリッパの音をはためかせつつ、北川は玄関へと向かった。
靴に履き替えるのも面倒なので、ドアの脇に手をつき足は残しつつ身体を預け、空いた方の手でドアを開いて顔を外に覗かせる。
「うぃっす、美坂に栞ちゃん、それと先輩方いらっしゃい」
「なんだ、北川君先に来てたの」
「まあな、どうぞどうぞ、オレんちじゃないけど上がって上がって」
云いながら、北川はヨッとドアの脇についた手を押して身体を玄関口へと戻す。
そしてドアが開いて美坂香里、栞、そして倉田佐祐理、川澄舞の四人が家の中へと入ってきた。
「あははー、お邪魔しますねー」
「…お邪魔します」
「こんにちはー」
「ねえ、相沢くんたちはもう行った……の」
四者四様に声を上げつつ、ドアを潜った彼女らは、暖かいはずの水瀬家の中へと入った瞬間に凍りついた。
硬直する四人の後ろでドアがバタンと大きな音をたてて閉ざされる。
「あん? どしたのみなさん、目玉ひん剥いて?」
面々を出迎えた北川は、濡れていた両手をタオルで拭きながら小首を傾げた。
((に、似合い過ぎ)))
異口同音に四人の思考がシンクロした。
蒼空を模したような空色に濃緑色のディフォルメされた怪獣が火を吹くアップリケが貼り付けられたエプロンをつけた北川潤。
そのはまり様たるや、昼時に放送している三分クッキングで20年間無休で料理を作りつづけたような一体感。
彼女等の脳裏に今、北川潤=エプロン姿という公式がここに刻まれた。
「はぇぇ、北川さん、お似合いですよ〜」
「……見事」
佐祐理と舞が感心し切ったように両手を合わせたりコクコクと頷いている。
「は、はあ、そりゃどうも」
なにやら自分が異様な注目のされ方をしているのに漸くながら気がついた北川は、冷汗を垂らしながら視線を泳がせる。
「北川君、そんなもの着けて何やってるのよ」
「コスプレですか?」
「コスプレって…栞ちゃん。料理作るに決まってるでしょうが、あんた」
失礼極まりない栞の発言に苦笑を浮かべながら答える北川。返って来たのは美坂姉妹の裏返った悲鳴だった。
「「エエエッ!?」」
「待て待て、それはどういう意味だ?」
「あははー、きっと北川さんが料理を作られるという事実に錯乱したのだと思いますよ」
「…みんなパニック」
両手を握り合ってこの世ならざるモノを見てしまったように後退る美坂姉妹に引き攣る北川の笑み。
そこに的確に現状を言い表わす佐祐理&舞の言葉のナイフ。
それは見事にグサリと心臓に刺さり、北川は呻き声をあげながら仰け反った。
「グハッ、ってオレが料理出来るのがそんなにおかしいかいッ!」
「へ、変態!!」
「えぅぅ、人類の敵ですぅ!」
「ガハッ!? そ、そこまで云う!?」
情け容赦のない言葉に、変態的人類の敵は心に深い傷を負わされうずくまる。
その背中に台所から飛んできた声がぶつかった。
「北川君、遊んでないで早く手伝ってよ〜」
「ういーっす」
こらえ切れず瞼からこぼれ出た心の汗をトレーナの袖でゴシゴシと拭い去り、北川潤はトボトボと台所に消えていった。
思わず顔を見合わせ、四人もまた台所へと足を踏み入れる。
台所では三人の人間が忙しげに手を動かしていた。
腕まくりをして、ボウルに押し込められたミンチを捏ねている北川潤。
持参だろうか、飾り気の無い純白のエプロンを纏い、水を切ったレタスを千切っているのは天野美汐。
そして、二人に指示を出しながらフライパンを引っ繰り返している水瀬名雪。
「あ、いらっしゃい」
台所の暖簾を潜って現れた佐祐理たちを振り返り、名雪が花の咲いたような笑顔を見せた。
母親がとうとう退院するという安心感がもたらすのだろう、何の憂いも見えない笑顔。そんなものを見せられれば自然と佐祐理たちの顔にも微笑が浮かぶ。
「名雪さん、佐祐理たちも何かお手伝いさせてくださいな」
「え、でも先輩方はお客さんですし…」
「おーい、水瀬ぇ、オレはお客さんじゃないんですかぁ?」
「手伝うって云ったの北川君でしょ? だいたい男の子は使われてこそ華なんだよ。祐一なんて料理関係は逆に手伝われるの迷惑なんだから」
「…喜んでいいのかね?」
この間なんかグラタンに練ワサビを入れようとするんだよ〜、と愚痴を零している名雪に、ペタンペタンと両手で捏ねたミンチの形を整えながら北川は首を捻った。どうやらハンバーグを製作中らしい。
「祐一さん、最悪です」とワサビの緑色を想像しながらうめく栞の傍らで、思わず手を口元に当ててクスクスと笑いながら、佐祐理は名雪に眼差しを向けた。
「ただ待ってるのも申し訳ないですし、なにかさせてください」
「そうですか? じゃあ、もうすぐケーキのスポンジが焼けるんですけど、クリームとか飾り付けお願いできますか?」
「はい、喜んで。舞、頑張ろうね」
「はちみつくまさん」
「じゃああたしたちも…」
「では美坂先輩、お皿のほうの用意お願いできますか? 栞さんは北川さんの方を」
「わかったわ」
「はい、了解です」
美汐の声に美坂姉妹も動き出す。
「ねえねえ、北川さん」
「ん?」
新たに炒めた玉ねぎ、ひき肉、パン粉、卵黄などをボウルにつぎ込み、調味料を入れながら練り混ぜ始める北川に、
ハンバーグのたねを両手でキャッチボールする役目を引き継いだ栞が視線を目の前に集中しながら喋りかけた。
「さきほどの言葉は冗談として、お料理できるんですか?」
「あれ、結構傷ついたんだがねえ」
「あははは」
笑ってごまかす。
そんな栞を一度ムッと鋭くした視線で睨みつけ、首を竦めた彼女に苦笑を見せる。
「料理とか家事とかは親にガキの頃から仕込まれてね。ま、独り暮らしもしてるからそこそこは作れるかな」
「へぇぇぇ。北川さん北川さん、それポイント高いです。ぐーですよ」
「なはは、そうですか、そりゃどうも」
ひき肉にまみれた親指をぐっと立てて見せる栞に、北川は少々引き攣った笑みを返しながら、パタパタとパン粉をボウルに足した。
「はい、スポンジ焼きあがったよー」
「あ、クリームもうちょっとです。舞、頑張って」
「…ん」
「名雪、お皿これでいいの?」
「あ、うん、それでいいよ」
「じゃあ美坂先輩、盛り付けもお願いできますか?」
「はいはい」
台所に絶え間なく響き渡る女性の涼やかな声の音色の音楽会。
北川は唐突に自分の置かれた状況に気がつき、今さらながら周囲を見渡した。
自分以外みんな女性。しかも誰も彼もが標準を遥かにぶっちぎる美人に美少女ばかりだ。
ボウルに両手を突っ込んだまま台所の真ん中に突っ立つ北川。その周りで姦しく料理を作り上げていく美少女一同。
北川のこめかみをツツツーっと一筋の汗が流れた。
な、なんか気がつかんうちにオレってば凄い世界に舞い込んだような……これって全部相沢の知り合いなんだよなあ。
「あ、あいつ、いつもこうなのか?」
いつの間にか止まっていた手元を慌てて動かしながら、北川は内心で独りごちた。
こ、これは羨ましいを通り越してちょっと怖かったりして。
あ、相沢め、これで動じないとは尊敬するぞ。
「北川さん、こっちは出来ちゃいましたよ…北川さん? おーい」
「は、はい! って、栞ちゃんか」
「…?」
「あ、いやいや何でもないっす。じゃあ次はこっち頼むわ。オレはそろそろ焼きに入るから」
「はーい」
§
キキィィィーーーードンッ!!
急制動を掛けた車輪に地面が摩擦音の悲鳴を上げ、前のめりになった車体が反動とともに大きく揺れ戻る。
「あうあう」と目を回す祐一と「きゃーきゃー」と喜ぶ真琴を振り返り、運転手は淡々と告げた。
「小菅総合病院正面玄関前に到着、ジャスト八分。安全運転でのご乗車ありがとうございます」
もう一度云うが、水瀬家から病院まで車で十五分だ。
「あ、運転手さん。ちょっと待っててくれる? 今日は秋子お母さんを迎えに来たの。だから帰りもお願い」
「ま、待て真琴ぉ」
「了解した。ところでお嬢さんの母君とはあの方ですか?」
そう云って、運転手はクイっと左手の親指を病院の正面玄関の方へ向けた。
そちらへ目をやった真琴の顔がパッと輝く。
そこには医者&看護婦一同を引き連れた水瀬秋子がにこにこと手を振っていた。
「秋子さーん!」
素早く運転手が開けた後部ドアから真琴が飛び出していく。
何かを言いかけたまま、あうあうと真琴を見送ってしまった祐一と運転手の冷めた眼差しがバチリと合わさった。
「あーっと、そのー」
「お客さん」
「は、はい!」
「今、トランクを開けます。お荷物はそちらへ。手伝いは?」
「結構!」
慌てて自分も車から飛び出しながら祐一は心の中で泣き叫んだ。
帰りもあれに乗るのかぁぁ!?
「秋子さん! あゆ!」
後ろからヨレヨレになりながら付いて来る祐一など見向きもせず、真琴は秋子たちに駆け寄った。
「お迎えありがとう、真琴」
目の前にピョコンと立った新しい娘の頭を秋子は優しく手を置いて、その髪の毛の感触を楽しむように撫でる。
「真琴ちゃん」
多少、危なっかしいながらも月宮あゆも自分の足で立ちながら、真琴の傍らに立った。
ちなみに今回タクシーを使ったのは、あゆのためだと云える。さすがに病院から家までの距離は今の彼女の足では辛すぎる。
「秋子さん、待っててくれたんですか? よう、あゆあゆも」
うぐぅ、あゆあゆじゃないもん、というBGMを背に、祐一は少々ビビリながらゾロリと勢ぞろいした白衣の軍団を眺め見る。
「みなさん、見送りに来てくださったんですよ」
うぇーん、秋子さん行かないで〜
おおお、明日からオレはどうやって働けばいいんだぁぁ
もうダメだぁぁ。結局携帯の番号聞き出せなかったぁぁ
儂はまだ殆んどあの人とお話ししとらんのだぞー
こ、こいつらマヂで大丈夫か!?
退院の見送りというより、野辺送りではないかと錯覚しそうな悲嘆に暮れた一団を前に、祐一はこの病院がこの地域最高峰の病院であるという事実に深刻な疑いを抱いた。
だってこれだぜ?
びぇぇぇん
おろろぉぉん
ぐぁぁぁぁぁ
「よく栞の奴、治ったもんだな」
「あら、ここの方々は優秀な人たちですよ、祐一さん」
「そ、そうですかぁ?」
祐一は横目でそいつらを斜め見る。
うぇぇぇん
うぉぉぉぉ
あーーん、いやぁぁ
「…………」
絶対嘘だと思った。
「それじゃあ、さっさと帰りましょう。家にね。名雪もみんなも待ってますよ」
見送りの医者どもが持っていた秋子さんの荷物を毟り取りながら、祐一は云う。
秋子さんの微笑みが深みを増し、彼女は「ええ」と嬉しそうに頷いた。
そして、振り返り深々と一礼する。
「先生方、それに看護婦の皆さん、大変お世話になりました。あ、でもあゆちゃんのお見舞いにまた顔を出させていただくので、その時はよろしくお願いします」
ピタリ、と軍団の動きが石化した。
次の瞬間、一斉に目配せしあう、白衣軍団。一言も交わす事無く、あっという間に意思が統一される。パーフェクトなアイコンタクト。
そして、一人の医者がスタスタとあゆの前に立ち、ポムと彼女の肩に手を置いて云った。
それはもうさっきまでの暗い表情など微塵も無い、にこやかな微笑みを浮かべながら彼は云った。
「あゆちゃん……入院料無料でいいから、うちに永久入院しない?」
「ウグゥゥゥゥ!?」
あゆあゆ、無期限入院の危機であった。
ちなみに帰りにかかった時間は20分。
秋子さんの、
「安全運転でお願いしますね」
の一言は偉大であったと云い残しておこう。
パタリ、と力無い音を立ててドアが閉まる。
運転手はポケットから煙草を取り出すと、同じように取り出したジッポで火をつける。
そして、車に背を預け、冴え渡っているはずの蒼空を黙り込むように覆い隠している雲海を見上げながら煙を吐いた。
「ふぅ」
煙はいきなり横合いから吹きつけてきた風に、その白い姿を掻き消される。
その消え逝く様をぼんやりと眺めていた運転手の眦がふっと緩んだ。
「私もまだまだ修行が足りんな」
敗北が身に染みる冬の日だった。
ところで……いったい何の話だ、これは?
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