魔法戦国群星伝





< 第七〇話 四重奏/詞重葬 >



東鳩帝国 降山盆地



人間、悟ってしまうということはそれなりに悲しいことかもしれない。

東鳩帝国総軍代理執行総指揮官 委員長こと保科智子は、今回の戦で自分がどんなデタラメな事態にも動じる事のない強靭な神経を手に入れたと思っている。
もしくは神経が老朽化してしまって何も反応しなくなったのかもしれない。
だから、別段いきなり自分達の影が爆発し、中からバラバラと知り合いが宙へと飛び出してきたからといって驚愕に絶句する事も無かったし、錯乱する事もなかった。

ただ一言。

「なんや、今取り込み中やねん。邪魔すんな!」

と、一瞥しながら言ってのけただけだった。

……へーぜんと。

言った後にちょっと自分の神経が悲しくなる保科智子であった。



「梓…退きなさい」

「痛たた、わ、悪い、千鶴姉」

豊満な胸に谷間に押し潰されながら、がるるーと低く唸る姉の声に、慌てて飛びのく梓嬢。
他にも腰を打ったと泣き叫ぶ長岡志保、衝撃に漸く目覚め、寝ぼけた眼を擦りながら小首を傾げる柏木楓ら例の面々。確かに邪魔としか云い様がなかった。

ただ、最後に出現したカゲロヒが智子を見つけて喜色の混じった声をあげる。

「こりゃ運が良い、丁度いい所に出た!」

そのまま焦りの混じった声で告げる。

「お嬢ちゃん、確か軍の最高指揮官じゃったな。じゃったら早く後ろに軍勢を下がらせろ。攻勢に出たのは良いが、ここは『灰燼の卵』に近すぎる!」

「あ、あほな事ヌカすな!」

泡を食ったように振り向いた智子が、拳を振り上げながら絶叫した。

「いまさら後ろに下がれるかい! せっかく押しとんねんぞ! だいたい後退にどれだけ苦労するかわかっとるか!?」

だが、怒りに赤く染まった智子の顔は、次のバルトーの一言に面白いように青ざめた。

「芹香殿が張り切っとるのだ。見ろ」

「せ…せりかぁさんやとぉ!?」

あうあうと首を軋ませながら智子は背後を振り返る。
そこにあったのは黄金の光に包まれた丘の情景。

あの女ぁ、また見境無しかぁぁ!?

次の瞬間、智子は裏返った声で絶叫した。

「ぜ、全軍後退!! 後先考えずに後ろに逃げぇぇ!!」





(よ、ヨーク、大丈夫なの?)

思わずそう呼びかけてしまうほど、柏木初音は周囲の異常を感じ取っていた。
初音と≪ヨーク≫の意識が繋がれた特殊な精神領域。そこが乱れに乱れている。
波長が歪み、無いはずの色が氾濫しているような感覚。
≪ヨーク≫の意識を通して見える≪ヨーク≫自身の船体が空中分解を起こしそうに激しく振動していた。
さらに気分の悪くなる高らかな軋みすら伝わってくる。
これまで≪ヨーク≫の邪魔をしないように大人しく黙っていた初音だったが、さすがに限界だった。
淡々と≪ヨーク≫が答える。

(七七の重相結界が限界値を突破。SGHBの余波が結界外まで波状。船体が爆縮しかかっているのです)

(ば、ばくしゅく? よ、ヨーク!?)

(問題ありません。残り14秒でRW(リーサル・ウェポン)システム停止。SGHBの精製を完了します。砲撃シーケンス完了済み。トリガー端末と皇血操者の意識界接続完了。精製完了と同時にハツネの意思のまま、SGHBは発射されます)

(き、聞いてなかったんだけど)

(なんでしょう?)

(SGHBって何?)

(SGHB――「スーパー・グラビトン・ハンマー・ブリット」…超重力子弾の略称です――SGHBの精製完了しました。SGHBの重力余波による船体爆縮まで9秒…急いでください」

付け足しのように≪ヨーク≫が言い添えた内容に、初音の頭がひっくり返る。

「き、きゅうびょぉぉ!? ど、どどどどうすれば――)

(撃つとイメージするだけで――)

(そういう説明は最初からしておいてぇ! 発射発射ぁ!!)

なし崩しのままに初音は泣きながら絶叫。
カシュン、と軽い駆動音とともに、船首に小さな砲口が開いた。
音も無く、振動も無く、静かに漆黒の球体が撃ち放たれる。
実に船体爆縮3秒前。
超重力に耐えていた船体が重圧から解放され軋みをあげて跳ね上がった。

産まれ出でたる母船を後に、人の頭ほどの黒い球体は、本当にまったくの無音のままに飛翔。
そして…『灰燼の卵』の蠢く肉の壁に何の抵抗もなく潜り込んだ。

その瞬間――


 ドッ―――グボッ!!


おぞましいまでの巨大な圧縮音が響き、巨大な肉の塊が身悶えするように震えた。
ボコリ、ボコリと肉の壁が内側に向かってへこんでいく。
想像を絶する超重力の渦。それがこの破滅兵器の形状を縮圧していく。
直撃を受ければ、どんな生命も、どんな強度の金属をも圧縮してしまう超重力の封弾。
あがらうように肉塊から肉の触手が外へと噴出す。だが、超重力のフィールドが強引に増殖する肉手をも押し潰そうとする。
だが、再生の増殖速度はさらに加速。それはまるで本体の危機に反応したように、咆哮のような異音を叫びながら肉塊は自分を滅しようとする力にあがらい続けた。

≪ヨーク≫の想定通り、未だ≪ヨーク≫の最終兵器は『灰燼の卵』を滅ぼせない。








御音共和国 千葉




世界の深遠を覗いた感想…城島司、里村茜、長森瑞佳の三人は良く分からなかったと自答した。

言葉に形容できない経験とも言うべきか。
ただ、言うなれば盟約という力を握り、引きずり出したような感覚…やはり良く分からない。

それでも、呪とも祈りともつかない言葉は、自然と口から漏れ出で、事象は敢然と現出した。

誘われるがままに……



見据える視心(シシン)は虚空を睨み――


此方(コナタ)永久(トワ)は無く――」



詠う(コトバ)は世界に溶ける――


彼方(カナタ)永遠(トコシエ)は無し――」


今、彼らは共に在る。
心を内に解かり、想いを受け止め、大切な人々を傍らに感じる。

世界を通じ、すべての願いを我が身と成す。

司が――茜が――瑞佳が――

親友――柚木詩子を
愛する人――折原浩平を
司と茜――かけがえの無いお互いを 

失われしあの人――想い出の先生を
妹と云うべき娘――折原みさおを

自分自身の心の内に、重なるように触れ合い宿る。

それが世界との接触。
盟約の召喚。

みずかの想い。



世界を守るために

来るべき日々を守るために

即ち輝く未来を守るために――


彼らは(サケ)ぶ。

「「「去ね! 望まぬ世界をもたらすモノよ! 果て無き世界! 虚ろなる世界! 無明なる世界へと!!」」」


すべてを消し去る始と屍と終の理を――


「「「扉は――開かれた!」」」



黒洞の生誕。

否、それは厳密には黒ではない。
光すらも消し去るそれに色は無い。

只々無明。
只々虚ろ。

大気を―空間を―世界をも滅しながらそれは現出した。

真なる盟約―――絶対虚無。



火焔を纏う赤髪の少女は曲刀「ハルペー」をラルヴァの頭蓋から引き抜きながら振り仰ぐ。

「あれ…なんだい?」

「ふんっ…永遠の盟約は知っているなリュカ」

自分が降らせた強酸の雨で、肉汁を滴らせながら溶けるラルヴァたちを一瞥し、ピロは無の球体に視線を向けて云う。
リュクセンティナ・ファーフニルは訝しそうに眉を顰めた。

「そりゃ知ってるよ。だけどあれは…」

「永遠の盟約とはあくまで世界からの生命体の排除に厳選された効果を発する。国家が盟約を犯したならば、その国家の国民が。組織が盟約を犯したならばその組織に所属する者たちのみが消滅する」

左手の光剣を解除し、高エネルギーのブーメランへと変じさせ投擲。進路上のラルヴァを片っ端から両断する。
氷上シュンは軽くステップを踏み、ラルヴァの炎弾を避けながら続けた。

「リュカ、あれこそがその永遠の盟約の根源なんだよ。盟約とは特殊な呪法で虚無を導き、対象となるモノだけを世界から排除する呪いだ。そしてアレこそがその虚無そのもの、世界と世界を隔てる虚界――絶対虚無だ」

「すべての原初…絶対虚無。あれが…さすがにあんなもの喰らったら『灰燼の卵』だって…」

「それは…どうだろうな」

吠声…先ほど横合いから乱入してきた瑞佳の『猫』たち――『大地の剛虎(ベヒーモス・タイガー)』たちの暴れ狂う嬌声だ。
それを一瞥しながら、ピロ・バルタザールは苦渋すら滲ませて呟き返す。

その瞬間、絶対虚無と『灰燼の卵』は接触した。
無と触れ合った途端、触った肉が文字通り消滅する。虚無の球体はそのまま何の抵抗もなく『灰燼の卵』を飲み込むかに見えた。

だが――

「止まった!?」

虚無は何かにつっかえたように進撃を停止する。
肉塊が狂ったように再生を爆発させていた。消滅という事象に反応するように、対照的な事象――再生が加速していく。
肉が弾け、血が噴出し、膨れ上がり、増殖する。
ただただ増え続けて行く。

其れは無限再生。

ケロピーのプラズマに焼き尽くされ様としていた時を上回る、凄まじいまでの再生速度だった。


「そうか…確かアレはエネルギー供給が無尽蔵だって誰かが言ってたよ。竜脈から力を吸い上げ、枯れる事が無いってね」

「やはり竜脈がエネルギー源か。道理であれだけ再生を繰り返しても崩壊せんはずだ」

「もしかして、アタシは分が悪い方に賭けちまったのかもね」

「後悔してるのかい? リュカ」

どこか楽しむように、片目だけを細めて横目で此方を見る氷上に、リュカはフッ、と鼻を鳴らしながら首を竦めた。

「結局アンタらに殺られるかどっちかの話だろ? どちらにしろバッドエンドさ。なら分が悪くてもアタシが生き残れる可能性がある方に賭けるさ」

後悔なら延々とし続けてるけどな、と竜の少女は牙を剥きながら苦笑した。

「ま、悪くはないさ。決断した自分てのはね。それに何とかなるんだろ? バルタザール」

「何故そう思う?」

「さあね」

そっけなく言い捨てながら、飛んできた火球を無造作に手で弾くリュカ。
接触と同時に火球は爆発。リュカの姿が炎に呑まれる。が、リュカの右手の一振りに、彼女を包んだ轟炎は逆にリュカの右手のハルペーに集束された。
爆術はリュカの髪の毛一本すら焼くことは出来ない。

爆炎に乱れた髪を手の甲で掻き上げながら、不遜にも自分を攻撃したラルヴァに飛び掛っていくリュカをバルタザールは見送った。

「あまねく世界の行方は子供たちの手に委ねられた。ただ信じるが故に…それが真理か、それも真理か――真琴、名雪殿……」





§






ある程度なら気の流れを、自然に近い種族である真琴は視る事が出来る。
その彼女の眼から見て、明らかに水瀬名雪は生から死へと転落していた。
あえて表現するならば、全身から生命力が急速に干上がっていくような光景。

「バイパス、用意できました!」

その声に真琴は間髪入れず叫び返した。

「繋いで!」

そして、自分の内にある妖力…即ち魔力を引き起こし、活性化させる。
名雪にバイパスを通じて自分の魔力を送り込み、彼女の魔力消費を少しでも助けようという試みだった。
伊達に大妖 九尾の狐の血筋ではない。そんじょそこらの魔術師や妖族魔族などとは比べ物にならないほどの魔力を自分は保持している――そう真琴は自認していた。
だから、ある意味心のどこかで楽観していたのかもしれない。
名雪と魔力が繋がった時、それはまさに楽観でしかなかった事を思い知らされた。

「かうっ!? あうううううううーーー!!」


まるで体内にある臓器全てを引きずり出されるような…おぞましい感覚がいきなり彼女の神経を叩き伏せた。

――死

瞼の裏に、死の姿を視た。

凄まじい…喪失感。

一瞬にして全身から力が失われ、抱きかかえていた名雪の上に力なく倒れ、覆い被さる。
全身から温度が消え去り、感覚がなくなっていく。
まるで氷柩に閉じ込められたように寒い。死に逝く氷結。
ごっそりと生命が抜け落ちていく。まるで底の抜けたバケツのように…

「なゆ…き」

真琴は必死に彼女の顔を睨む。
この期に及んで浮かんだのは彼女に対する怒り…
こんな無茶苦茶で絶望的な事を一人で耐えようとしていた名雪への怒り…
本当に頭にキた。

「ホント…バカなん…だからぁ!!」

「真琴ちゃん! い、今みんなもバイパスを――」

「ダメェェ!!」

一瞬にして動けなくなった彼女の様子を見て、自分達も魔力を供給しようとした魔導師たちに向かって、真琴は自分の状態も忘れ、血相を変えて叫んだ。

「絶対にダメ! アンタたちじゃ…アンタたちの魔力じゃ3秒持たないわよっ! 死んじゃうから! あっという間に全身砂になって死んじゃうから! 絶対にダメ!」

その叫びに動けなくなる魔導師たち。その目の前で、真琴の体が爆音とともに煙に包まれた。

「ま、真琴ちゃん!」

誰かが悲鳴を上げる。
煙の中から姿を現したのは金色の毛並みをなびかせる一匹の獣。
九つの金毛尾をしなだれる妖狐の姿。
その黄金の毛並みには艶は無い。
その金色の草原とすら謳われる輝くばかりの金の毛並みは、今はただのくすんだ黄土色にしか見えなかった。

もはや、意識する事無く維持し続ける人への変化すら、保てぬ程に真琴は憔悴していた。
まだ何分も経っていないのに…

冗談じゃ…ないわよっ。こんなの自殺と変わんないじゃない! 何考えてんのよ、バカバカバカ!

考え付くだけの悪態をつきながら、抜ける力を補おうと渾身を振り絞り、歯を食いしばる。
眼差しの先には苦しげに瞼を閉じる名雪の顔が…

「全部終わったら…肉まん好きなだけ奢って…もらうんだからね! こんなバカな真似したのを祐一に…思いっきり…叱ってもらうんだからっ。だから…だから…今は真琴が助けてあげる。真琴の力、全部あげるっ。だから……」

大地に炎が吹き上がる。
小麦色に輝き光る、魔力の焔が爆発した。

「やっちゃえ、なゆきぃ!!」


光り輝く粉雪が、倒れる二人に優しく降り注ぐ。

やがて収まりゆく小麦色の陽炎。

そしてその眩き命の輝きを背に身を起こす…人影。

水瀬名雪はゆっくりと手の平を開き、そして握った。
身体が動く。
まだ、辛いけど…自分の意志で自分の身体が動いてくれた。

これなら…最後の術の立ち上げぐらいまでなら何とか持ちそうだ。

名雪は自分に覆い被さるようにして倒れる大きな狐の顔をそっと見下ろした。
命がけで、自分を助けてくれた…自分に力を分けてくれた大切な妹。
完全に意識を失った妖狐の頭をそっと抱き、名雪は一滴の涙を零す。

「ごめんね、バカだよね、わたし…ありがとう真琴」

柔らかな毛並みに頬を摺り寄せ、

「好きなだけ、肉まん買ってあげるから……許してね。祐一とあゆちゃんたちが帰ってくるの…ちゃんとお迎えしなきゃダメだよね。一緒に…帰ろう」

そして…震える膝に両手を乗せて、欠片も入らぬ力を振り絞って立ち上がる。

「だから…だからこそ負けないよ…わたしは負けないよ!」

あんな破壊の卵にも…押し包もうとする絶望にも…死という終わりに逃げ出したくなる心にも!

「力を貸して! 命ある者たち、心有る者たちよっ!!」







東鳩帝国 降山盆地



その感情は恍惚。
初めて振るう全力に、歓喜する心。

爪先まで漲る力。

魔力が踊り、祝福する。

唇が歌い、呪がざわめく。

極絶たる力が…今、降り立つ。



≪ヨーク≫の一撃を受けてなおも滅びぬ無限再生する肉塊。
見る者に、真なる嫌悪を与える醜悪なる塊。

その周囲に更なる魔力の発言を感じ取ったのは、やはりカゲロヒであった。

「来るぞ!」

影人の咆哮に、その場に居た全員が振り返り…仰ぎ見た。

大地を揺るがす轟音とともにそそり立つ四つの巨大な光の塔。
それぞれが眩い四色の光を放ちながら『灰燼の卵』へと出現した。
圧倒的なまでの…存在力が口ある者どもを黙らせる。

「なによ…あれ!」

志保の悲鳴に答えるでもなく、銀色の狼が茫然と呟いた。

「高積層の立体型魔法陣…だと?」

バルトーの言葉に他の者たちは目を凝らし…アッと口を半開きにした。
彼の言葉通り、赤白青黒と光り輝く巨大な塔の如き四なる光柱。そのすべてがびっしりと描かれた難解な文字により形成されていた。

北に黒色―南に赤色―東に青色―西に白色

四色の立体魔法陣がまさに『灰燼の卵』を取り囲む。

そして次の瞬間、光が一際高らかに輝き唸る。



(ハツネ!)

その光を確認した≪ヨーク≫は迷わず意識を震わせた。
柏木初音はもうやけくそ混じりに絶叫。

(あー、もう良く解からないけど…いっけぇぇ!! プログラム・ドラァァイブッ!!)

―トリガー・オン。
――超重力子弾の呪式プラグラム作動
―――重力子崩壊


刹那――物理的とすら思える光の放射が戦場を押し包んだ。

『灰燼の卵』本体の中心で、超重力を発し続けていたSGHB−スーパー・グラビトン・ハンマー・ブリッドはプログラム通り崩壊プロセスを進めた。
重力子の圧縮崩壊……その結果起こされた反応、それは……


――核爆発


内側から膨れ上がった炎熱地獄に醜悪なる巨塊は粉々に吹き飛んだ。
爆熱はそのまま外へと噴き出し、四方の大地を嘗め尽くそうとし……東西南北にそそり立った四つの立法型魔法陣の生み出す結界に完全に阻まれた。
上方すらも塞がれて、核の熱波は外へと逃げる事が出来ず内部にて荒れ狂った。
その膨大なエネルギーに耐えれる存在があろうものか……


だが…それでも……


なお、破滅をもたらす破壊の権化は消えようとはしなかった。

この鉄をも蒸発させる高熱の中で、『灰燼の卵』はしぶとく…悶えるように再生を続ける。
それを脅威と云わずして何と云おう―それを狂気と云わずして何と云おう。

それは生命の冒涜としか言いようがなかった。







悪夢の如き情景が 山葉で 降山で 

現出している。


だが…

彼らはそれを許さない。


破滅を 終焉を 冒涜を 

―――彼らは決して許さない。






――山葉の地で…

空へと舞い上がるは黄金の火の粉。

天より降りたるは光り輝く雪の欠片。


誰かが呟く。

「この光は…魔力?」

誰かが囁く。

「大気中のマナが…消えていく…吸い込まれている? あの…緑の幻獣に集まっていく」



盲目の少女は、独り光ある方角を見上げた。

「祈り、願い、信じる力。あまねく力が集い流れる……視えるよ…みんなの想いが…光が」

綺麗――と川名みさきは口ずさむ。





――降山の地で…

「(生命の生きる力とは…そんなイビツなものではありません!)」

小さく呟き叫ぶ声。すべてに掻き消され、それでもなお響き渡る声。
来栖川芹香の囁くような絶叫が響く。


「(赤き南天にて舞い下りたるは、始源の炎 華焔崩翼…翔なる朱雀)」

その揺れる事無き呪に誘われ、
南に聳え立つ赤き円柱の内側に、真紅の焔が現れ出でる。
打ち拡がる焔は翼、燃え滾りたる焔は嘴。まといて体を成したる姿は火の鳥。
炎の尾羽根を震わせながら、炎の翼を羽ばたかせながら、炎の鳳は甲高く啼いた。


「(黒き北冥にて聳えたるは、創なる激震 金剛凱亀…硬なる玄武)」

その揺れる事無き呪に導かれ、
北に聳える黒き光柱の内側に、漆黒の岩山が大地より聳え立つ。
崩れ落ちたる岩石の、下より鈍く輝くは金剛の甲羅。漆黒の眼を照らす頭。そして長く伸びたる蛇首の尾。
大地を、すべてを揺るがせながら、万黄の大亀は激しく大地を踏みしめた。


「(白き西楓にて駆けたるは、終末の風 疾雷纏気…迅なる白虎)」

その動じる事なき呪に誘われ、
西に聳える白き光柱の内側に、真白き風が吹き荒れる。
風が姿を成したる姿 長くなびきし毛並みは白雪、風と雷とを纏いて睨むは神鳴る白虎。
大気を激しく打ち据えながら、白き神虎は雄雄しく吠える。


「(青き東水にて昇りたるは、滅びの波涛 海神嵐絶…覇なる青龍)」

その動じる事なき呪に導かれ、
東に聳える青き光柱の内側に、青き瀑布が立ち昇る。
水が砕けし内より出でしは 青なる鱗鎧 静なる眼 長き蛇身をうねるは龍王。
水気を満たし、羽衣みたく纏わせながら、青き龍威は静かに見据える。


「(嗚呼、今、我が招きに誘われ、導かれ 始から終を司るモノ達が集う)」


轟ッ、と四色の光芒が立ち昇った。


「すべては焔にて始まり、震い揺れたる激震にて世は創りたもう―それは創世
そして終末には風が吹き、在り得るすべてを吹き飛ばし、押し寄せたる大波が滅びとなりて世の終焉を告げるものなり」

狼の口から漏れ出でるのは朗々とした詞。
カゲロヒが続ける。

「始まりから終わり…在るという意味…開闢・創成・終末・滅び…その全ての力を具象化したと云うのか……」

その声音にはありとあらゆる感情が漲っていた。
それは怖れか、感動か。すべてが混ざり、混沌とした色は黒ずむ。

「すごく…綺麗」

千鶴が、恐らく無意識にだろう…小さく呟く。
それは見る者すべての共通した思い。

あまりにも隔絶した力を…恐怖を…人は美しいと思うのだ。

「恐ろしい方だな、来栖川芹香。大陸を沈めようとする力を…大陸を消滅させかねない力で消し去ろうと云うのか…」

「その制御は紙一重…我らの命も紙一重…それも一興よ。滅多に見れぬモノを見た。これも僥倖よ」

カゲの言葉に、狼はただ眠るように眼を閉じた。

「すべては生と死の邂逅に拠りて……徒然なるままに…またそれも…悪く無し。ならば見守ろう…生命の強さを」








光と魔力が荒波のごとく荒れ狂う奔流の中で――
来栖川芹香は囁く。

「(傲慢なる意思にて破滅を導きしモノの具現……それを私たちは許せません)」



「僕はまだ…みんなに謝っていない。浩平にも、詩子にも……そして茜にまだ何も伝えていない」

城島司は告げる。

「まだ…まだ終るわけにはいかないんだ」



「やっと司が帰ってきました。すべてはこれから始まるんです」

里村茜はギュッと司の手を握り、告げる。

「邪魔をしないでください」



「わたしはずっと続くと信じてる。幸せな日々、幸せな未来が……」

長森瑞佳はここに居ないあの人を心に宿し、決然と告げる。

「だからこそ、守る。帰るべき日常を!」



「負けられないんだよ! 皆の思いは未来にある! 皆がそれを信じてる!」

大地を踏みしめ、身体を支え、水瀬名雪は絶叫する。

「ここはわたしたちの場所なんだ! それを壊そうとするなぁぁぁぁ!!」








光が 黄金の光が優しき緑の幻獣へと集って行く。

名雪は雄々しく…ただ思いのままにソレを指差した。

「世界を巡りし第五の要素ッ! そのあまねく無限の力を今ここに結集せんッ! 今、聖断は下されたッ!」

純粋なる怒り…決意…




消し飛びそうになる身体を静かに支え、芹香は詞を流れ詠む。

「嗚呼、今我は汝等の頚木を解き放つ」

譲れぬ…明日






――水瀬名雪は
――――来栖川芹香は



聖なる女神の化身のごとく、ただ高らかに宣告する。



「「滅せよっ!! 世界に仇なすモノよっ!!」」







――四聖の獣が……光となる。

――緑の獣王が……光を纏う。






――静寂の魔導師の
――――眠りの姫の





最後の叫びが――――





――今





ここに―――






「(『四聖天崩(カタストロフ・ノヴァ)』ッ!!)」

「いっけぇぇぇぇ、ケロピィィィッ!! 『ウルティメイト・プラズマァァァァ』!!」








世界が静止した。








世界を支える柱の如く、四柱より立ち昇りし四光の螺旋が――

神への門の開くが如く、幻主の胴が左右に開き内に満ちたる黄金の輝きが――





終焉を導く悪意の卵に突き刺さる!!












ド―――――――――――――――――ッッ!!












光が―――――――






























―――――やがて





絶風が――止む。





穏やかな微風が…人々の肌を撫でた。





そして人々は見る。






何も……無い。




其処には……何も……










「……あ」





誰かの呟き

意味も無く、ただその音は荘厳なまでに風に流れた。

まるで…それが世界に初めて流れた音色だとでも云うように……











破滅の具現――『灰燼の卵』


その肉片の欠片も……世界の何処からも消え去って……いた。











肉塊は…原子の欠片まで焼き尽くされ、核の炎ごと終末の風と滅びの波に滅せられ―――


肉塊は…分子の結合まで滅ぼされ、虚無の世界へと掻き消えた。















誰もが見据えるその先には何も無く―――――




ただ平穏の静寂が続く。







そして―――


連ねて紡がれる人々の思いは……

途切れる事無くそこにある。
















パタン、と倒れ掛かってきた初音の身体を、芹香はそっと抱きとめた。
見上げれば暖かな光を放つ箱舟は、その姿を薄らげている。

(ハツネによろしく)

そんな言葉を聞いた気がして、芹香は薄っすらと微笑み、コクリと頷いた。
見れば安らかな面差しを浮かべる少女。
芹香はパタリと座り込み、彼女の頭を膝に乗せ、ゆらりと世界を見下ろした。


それは静寂の世界……ただ、優しく風が吹く。






みんなが涙と歓声を上げながら駆け寄ってくるのを遠くに見ながら、水瀬名雪はフラリと後ろに崩れ落ちた。
パフンと柔らかな毛並みに受け止められる。
空を見上げれば、大きな緑の盟友の姿。

「ごくろうさま、ケロピー…またね」

魔法陣を介して自分の世界へ帰って行く彼を見送りながら、名雪はそっと笑った。

「疲れたねー、真琴」

返事は無い。ただ、頭の下から伝わる吐息の震動が心地いい。

「うーん、眠たくてしかたないや……もう、眠ってもいいよね」

ふさふさの毛が気持ちいい。これは眠ってもいいという事だろう。

「おやすみ、真琴……次に眼を覚ましたら……みんな揃ってるといいね」


そしてあなたが起こしてくれると嬉しいな……祐一。


飛び掛ってくるみんなの前で、名雪はゆっくりと瞼を閉じた。








「大姉さまっ!」
「うわーん、吃驚やーん! めっさ怖かったんですぅ!!」

衝撃波にでも吹き飛ばされたのか、泥だらけの静葉と半泣きの紅葉が駆け寄ってくるのが見えた。
散々ラルヴァの群れを蹴散らして、久々に大暴れした玉藻は、既に人型へと戻りパタパタと裾をはためかせ埃を払っている。

「うーん、偶には身体動かさんとあきまへんなぁ。ストレス発散云いますんやろか、こういうのん」

普段からストレスなど微塵も貯めていないくせに、実に清々しい笑みを浮かべながら玉藻は孫娘がいるはずの方角へ顔を向けた。

「ま、今回は誉めといてあげましょ。ようやりました、真琴」









「初音!」

すべてが収まり、ようやく我に返った千鶴たちが…慌てて末の妹がいる丘へと走って行く。
それを背に、智子が一人元気よく叫んでいる。

「ほら、なにボケっとしとるんや! けっこう吹き飛んだけど、ラルヴァはまだまだ残っとんよ! 掃討戦やー、頑張れぇ!」

それらをそれこそボケーと眺めながら、志保が未だ現実にいないように訊ねる。

「ねぇ、終ったの?」

「ああ、終ったな、ここは」

バルトーが座り込む志保の横に身を横たえながら、労るように呟いた。

「見事だ…生ける者の強さとはな」


「生ける…者か」

カゲロヒは風にローブをはためかせながら、黙って西の空を見上げた。










遠くを見渡せば、軍旗がはためく様が見える。

轟き渡る歓喜の歓声。

今ごろ…みんな――みさきさんや雪見さん、そしてカノンの人たちが悲愴の影無く戦場を疾駆し始めているだろう。


座り込み、遥か先を見つめていた所に、コツリ、と肩に頭が置かれた。

司は何も言わず、彼女の肩をそっと抱く。

茜の香りが鼻を擽った。



「もう…大丈夫だね…司」

そう云ったのは、陽炎のような少女。
知らなかったとはいえ、どうやら彼女にもとても心配をかけていたようだ。
自分の哀しみを受け止めていたもう一人の少女――みずかと名乗ったか…

司は彼女の深い深い瞳を見据え、小さく確かに頷いた。


そして彼女の後ろを望む。

近づいてくる二人と一匹。

「ご苦労な事だったな…三人とも」

小さな猫は偉そうに云いながら、彼らの元に歩み寄る。

その首元にひょいと手が伸び、ピロは少女の胸元に抱き締められた。

「温かいですね」

「な、わ、離せっ!」

「嫌です」


バタバタと暴れるピロを茜はギュッと抱き締めた。

「あ、いいなぁ」

「後で貸してあげます」

もの欲しそうに呟いた瑞佳に、茜が澄ましながら答えた。

「こ、こらまるで物のようにっ! わ、我輩を誰だと――」

「猫ですね」

「猫さんだね」


「う、うにゃぁぁ、笑うなリュカぁぁ!」


かつての恐怖の対象の余りの情けない姿に、七転八倒して笑い転げる赤毛の少女。

「氷上」

そんなみんなを穏やかな笑みで眺めていた青年に、司は声をかけた。
振り向く彼を真っ直ぐに見つめ、司は告げる。

「…ありがとう」

それは万感を込めた言葉。
常に…無明の闇の中ですら、傍らに居続けていてくれた親友への…言葉。

氷上は何かを言おうとし……何も思い浮かばない自分に気付いた。

だから……

ただ、ゆっくりと頷いてみせる。

それで……充分だった。



その横顔を見上げ、みずかはすべてを包むように穏やかに囁いた。

「行くの? シュン」


「…? どこへ…」

訝しむ司に、氷上は東の空を見上げながら小さく答えた。


「もう一つ…贖わなければならない罪があるんだ」


失われた聖地へ……と氷上は囁いた。


暴れるのを止め、その言葉を聞いたピロは視線を巡らせ、リュカ、と茜の腕の中からその名を呼んだ。
片膝を抱えて座り込み、笑いの余韻を楽しんでいたリュクセンティナ・ファーフニルはやれやれと云わんばかりに首を竦め、

「アタシは騎竜じゃないんだけどね…まあ、乗りかかった舟さね。それとも毒を喰らわば皿までってヤツか」

云うや、少女の身体が渦巻く火炎に飲み込まれる。
そして、炎のドームが吹き払われた後に、轟然とソレは出現した。

打ち振るわれる赤き皮膜。大地を叩く長き尾。しなやかに伸びる首筋から頭にへは燃えさかる火炎が鬣となってなびいていた。
連なる牙を剥きながら、紅蓮の鱗を纏った巨大な赤竜は高らかに咆えた。

「さあ、音速を越えた突風に吹き飛ばされない自信があったら、ちゃっちゃと乗りな、魔人(デヴィル)!」

「…ありがとう、リュカ」

竜は答えずバシバシと尾で地面を叩いた。
それは果して照れ隠しか。


「氷上!」

軽やかに竜の背に飛び乗った青年に、司がやや切羽詰ったように声をかける。

氷上はニコリと笑い、声をあげた。

「大丈夫、このまま姿は消さないよ。そうだね、一度酒でも交わそうか、折原君も加えてね」

「ああ…それは良い」

「じゃあね、まただ」

「ああ、また」

うん、と頷き氷上は言った。

「バルタザール、後は頼む」

「ああ、行って来い。こっちはもうやる事はなさそうだがな」

「わたしたちに遊ばれる使命が残っています」

「う、うにゃあ」

情けない声を上げる猫の姿に、竜は楽しげに笑いながら翼をはためかせた。

「あははははははー、何か腑抜けちまったね、アンタたち! でもさ、こういうのも良いかもね!」

心地よさげに彼女は叫び、そして大きく高らかに咆哮しながら、氷上を背に乗せ空へと羽ばたく。
旋風をその場に残し、高く高く…螺旋を描きながら遥か天まで舞い上がる。
そして、一度大きく翼をはためかせ、虚空に停止した途端……ドン、という衝撃波の輪と一条の光跡を青空に描いて、瞬く間もなく姿を消した。



風の余韻が舞い降りる中で、瑞佳はそっと振り返り、戸惑いながらも声をかける。

「あ、あの」

後ろの背景を透かすまでに姿を消し掛けていたみずかは、自分の名前の元となる少女の声に動きを止めた。

瑞佳はすっと少女を見据え、言葉を紡いだ。

「浩平を…お願いね、もう一人のわたし」

ニコリと破顔したみずかはタタタと瑞佳に駆けより、ギュっとその身体に抱きつき云った。

「勿論…だよ!」

そして、パッと後ろに飛び退くと、瑞佳、茜、司、ピロの四人の顔を見渡して、ペコリと一礼した。

「また…会おうね。大好きだよ!」


そう笑って言い残し、みずかはふわりと空気に溶け込んだ。




彼女の残した確かな温もりを抱き締めて、瑞佳は彼方を見つめる。
おかえり、と声をかけるべき人のいる東の空を……













――かくして一つの死闘は終わりを告げ 

理不尽なまでの終焉は ここに一先ずの途絶をみる。



されど悪夢は未だ途切れず――


されど破滅は未だ消えず――



さあ、赴くとしよう―――

彼らの戦いは最終章へと至った。



決戦の舞台……



それは―――















グエンディーナ大陸中央部 失われた聖地



失われた聖地――

それは今は消滅した邪なる教団の総本山。

本来ならば、この地を聖地と呼ぶべきは、教義を信じる狂信者だけのはずだ。


だが、この地は聖地と呼ばれる。


それは、すべてを消し去る盟約への畏怖からなのか……




山を少し上れば、すぐに中腹へと差し掛かった。
そこはただ呆れるほどに平坦に広がる裾野となっている。
遥か視野の端。おぼろげに、岩盤をくり貫いた巨大な門が…幽かに小さく見えている。

美坂香里、藤田浩之をはじめとする十五人の面々は、興味深そうに周囲を見渡した。
教義とは関係もなく、ただこの広さには荘厳さすら感じてしまう。


彼らと共に来た水瀬秋子の軍勢はここには無い。
山の麓で派手に示威行為を起こす事で、既に数万を越すラルヴァを誘い出し、今現在も引き摺りまわしている。
少なくとも、この地に居たはずのラルヴァの多くがそちらへと向かったはずだ。
勿論、まだ多くのラルヴァが残っているだろう。彼らはそれを排除しながら進まねばならない。
ガディムの元へと。


そう、他の連中はガディムなんだろう…な。

彼はさり気なく一人の少年の横顔を見た。

決意に染まり、それでいながら決意に圧し潰されていない相沢祐一の強く光る双眸を。


「そうだぜ、それでいいんだよ、それで」

かすれた声が誰の耳にも飛び込む事無く虚空に消えた。



ヤツはまだ失っていない。失わないために戦う……


なんと……羨ましい話だろう。



カタカタと風に吹かれて妖刀の鞘が鳴る。
北川潤は逸る相棒を宥めるように押えながら、口元を皮肉げに歪めて裾野を眺めた。


また……此処に来るとは思わなかった。


今なら明確に思い出せる。


あの濃密な血の匂いを……

惨殺の宴を……



そして脳裏に未だ響き続ける、あの哄笑と絶望を……






気付いたのは美坂香里ただ独り。

背筋を走った戦慄に、彼女はそっと振り返り……

思わず唇を噛み締めた。



刹那だけ閃いた――

茶色い髪の少年の――

―――悪魔のような嗤いを見て




















最後の戦いを前に


―――今ひとたびの猶予を賜り


此れを記す



絶望のはじまりを――――

―――復讐へのはじまりを


此処に―――

―――――記す



―――――異聞(イブン)へ―――――


――to be next Nightmare.
――――the first stage <Despair Dead> start.







  あとがき



シュパパパパパッ!

八岐「ぬぅおぁぁぁぁ!? どこからともなくナイフの群れがぁぁ!」

回避回避♪

八岐「はひはひっ、し、死ぬかと想った(字が違う)」

栞「チッ」

八岐「舌打ちぃ! って栞ちゃんじゃん。なにすんのよ」

栞「出番(ボソッ

八岐「はい?」

栞「私はどこでなにをしてるんですかぁぁぁぁぁ!!」

八岐「そこらへんで何かしてるのです」

栞「あ、そうなんですぁ〜♪ なんて和むと思ってるんですかぁぁぁ!」

八岐「うー、でも君まだマシだよ。松原葵って人知ってる?」

栞「…? はい? 誰ですか、それ」

八岐「………」

栞「いや、本当に……」

八岐「………(大汗)」

栞「…………(一筋の汗)」

八岐「ま、まあそういうことだから(涙汗)」

栞「あははは、世は押し並べて事もなしですねぇ。平和と平穏と平社員が一番です(木枯らし一号(?)」

八岐「さて、万事つつがなく『煉獄会戦』編終了と相成りました」

栞「万事恙無くって…使う所激しく間違ってると思いますけど(苦笑)」

八岐「まま、気になさらずが勝ちという事で。兎にも角にも一方の決戦、これで終結です」

栞「それで次回は…」

八岐「以前からの予告通り、外伝的過去編…『魔法戦国群星伝・異聞』へと参ります」

栞「時を遡る事、百と十一年前――盟約歴985年の冬の日」

八岐「名と魂を失った独りの少年の回想から物語りは始まります」

栞「魔法戦国群星伝・異聞――Despair Dead 終らない悪夢の物語……どうぞよろしくお願いします」

八岐「あとがきも本編に戻るまで暫し封させていただきます。それまでさようなら……」

栞「え? あとがきないんですか? えうー、出番〜(泣)」



SS感想板へ

inserted by FC2 system