魔法戦国群星伝





< 第五十一話 Battle Master/return of Calamity Blue >




カノン皇国 皇都 雪門郊外の森



今日の日差しは冬が通り過ぎようとしている季節の割には暖かい。
寒気に覆われた世界を優しく抱き締めようとでもしているように……

だからこそ、彼は孤独だった。
まるで世界の視界から零れ落ちてしまったとでも云うように……
いや、彼は自分が独りだと気がついていないのかもしれない。
周りを見ている余裕は今の彼には無い。

ただ、逃げ出すように走るだけ。


森の中、踏みしめられる事で出来た小道を走る。
ぼう、と熱に浮かされたような意識の中で、もがくように走る。

そこには冷静さなど欠片もない。

もとより、冷静さを止めていたら独りで飛び出そうという考えなど起こすはずもなかった。
だが、彼の中にある、酷く醒めた一部分が自分に語りかけてくる。
耳を塞ごうとも、内なる声は聞こえてくる。


相沢祐一…お前は何故走っている?
あゆを助けるため……そうなのか?
本当は自分の存在意義を失わないためじゃないのか?
七年間、ただ守りたいという意思のまま強くなろうとして……
それがまったくの無駄だった事を認めたくないだけじゃないのか?
だから……自暴自棄になっている。

「………くっ!」

ギリリと、走りながら祐一は歯を軋らせた。

わかんねーよ、そんな事は!!
だがな、俺は…俺は

「もう止まれないんだ!」


僅かに茂った茂みを突き抜ける。
二本の歳若き新木の間を抜けた先。
木漏れ日の差し込む開けた自然の森の広場。

タッタッ、と祐一の足がゆっくりと止まった。


木陰の脇。木の幹に一人の少年がもたれかかって佇んでいた。
少年は祐一に気がつくと、居眠りから覚めたように顔を向け、「よう」と片手をあげた。

祐一はそれをどこかぼんやりと見ながら、ふと思う。

昨日、月光の下にいた彼と、日差しの影にいる今の彼…このあまりに違う親友の雰囲気。いったいどちらが本当の北川潤の姿なのだろう…と


だが、その思考はすぐに胡散霧消した。

今の彼にとっては、どうでもいいことだから……

そう……こいつはつまりは邪魔者に過ぎない。
それ以上でもそれ以下でもない。

障害物だ。





北川潤はゆっくりと、立ち尽くしているように見える祐一の方へと進んだ。
彼の顔色は遠くから見てもはっきりとわかるほどに悪く、生気が見えない。
ひどく歪んだ印象を与える。
ある意味正気を失っているのだろう。でなければ、そもそも一人で魔王の本拠地に乗り込もうなどとするはずがない。
たった独りでは、捕らわれた月宮あゆを絶対に助けられるはずがないのに…

だが、間合をあけて足を止めた北川は、相対する祐一の瞳の奥に、明確な意思の光を感じて舌打ちした。

…自分で何をやってるか、わかってるのか…それでも止まろうとしないとはな…馬鹿野郎が

北川は何を言うべきか考えを巡らせながら、一寸前に舞と立てた作戦を思い起こす。

今、舞は祐一と北川の二人から身を隠し、様子を窺っているはずだ。
彼らの立てた作戦は、北川が正面からぶつかり、その戦いの最中に祐一が隙を見せたその瞬間、舞が祐一を仕留めるというものだった。
舞と祐一の腕はほぼ互角…もし真正面から戦えば、どちらが勝ってもひどい怪我を負いかねない。二人掛かりで戦っても無傷という訳にはいかないだろう。最終決戦を前に戦力を潰すのは痛すぎる。

なにより、傷を治してくれる天使はもういないのだから…

北川より強い舞を伏兵に回したのも、一撃で祐一を無力化するのが、そちらの方が成功率が高いと見たからだった。


(戦う時は本気で倒すつもりで……でないと祐一は隙を見せない)

って簡単に言われてもなあ……

表情の下で微苦笑を滲ませる。

さて、どうしたもんか……



「相沢〜、君はどこへ行くつもりなのかな?」

とりあえず友好的に話し掛けてみる。

「あゆを助けに行く」

………そんな真面目に即答されて、俺にどうしろというのだ相棒。

普段の軽快な軽口が返って来ない事で、改めて北川は彼が暴走している事を実感した。
まったく…軽口も叩けない相沢祐一など全然面白くない。

はあ、と気を取り直すようにため息をついてみせる。

「お前な…それ本気で言ってるのかよ」

祐一はすっと視線を逸らして顔を横に向けた。
沈黙が流れる。
どこか無意識に左手で剣の柄を確かめるように握り、離していた祐一は、やがてポツリと呟くように言った。

「北川…お前、香里がこんな風に攫われたとしたらどうする?」

驚いたように北川の目が見開かれる。
そして、ふと考え込むように瞼を閉じると、困った様に頭を掻いた。
やがて口元を苦笑の形に歪ませて、彼は答えた。

「たぶん、お前と同じ事をするだろうなあ」

すっと視線が戻り、北川の瞳に合わされる。

「なら…わかるだろう? 俺の邪魔をするな、そこをどけ」

「ダメ、断る」

困ったような笑みを変えず、北川は何の躊躇もなく竹を割るように言ってのけた。

「…北川」

唸るように自分の名前を呼ぶ親友を、彼はじっと見据えた。

「ならこっちも訊くぜ? 俺が美坂を攫われて暴走したとしたら……」

お前はどうするよ――と、彼は静かに訊ねた。

今度は祐一の目が意表を突かれたように見開かれる。
何か言おうとして口を開き…言うべき言葉が見つからず、彼は口を噤んだ。
風が…二人の間に流れる。
やがて、祐一は観念したように目を伏せ、答えた。

「止めるだろうな、今のお前と同じ様に……」

「まっ、そういう事だ」

ふっと肩を竦めて北川はケケケッと笑った。

空気が変わる。

まとう気配が尖り出し、研ぎ澄まされた声が響いた。

「ここは止まってもらうぜ、相沢」

微かに首が揺られた。
そこに漂うは何故か哀しみ。

ゆっくりと、祐一は頭を振った。

「無理だな」

一言、息を漏らすように呟く。

「俺とお前…取る行動は同じかもしれない。でもその先が決定的に違う……俺はお前を止められるが、北川…お前は俺を止められない」

腰にさげた剣の柄を撫でながら、祐一は言った。

「お前じゃ俺を止められない」

それは平坦な声音。
感情が荒れ狂い過ぎて、磨耗してしまったかのような平坦な声。

「もう一度だけ言う。どけ…今の俺は手加減するほど優しくない」

「出来ないんだな、これが」

じり、と左足を擦らせながら引き、半身となって北川は口端を吊り上げる。

「こちとらお前を連れ戻すって約束してるんでね」

腰を落とし、綿毛を掴むように柔らかく右手を刀の柄に添える。

「叩きのめして頭冷やさせてやるよ、相沢ぁ!」

「無理だと言った」

硬く冷たい金属の声。

それに対する答えは刃。

もはや言葉は出尽くした。


陽炎の様に北川の姿が揺らぎ、刀光が閃いた。




カノン皇国 スノーゲート城



「勝てないよ、絶対にね」

そう呟いたのは一人の老女。
気配、物腰、動作、口調、言葉、目つき
そのすべてが抜き身の刀のような女。

当事者たちが消えた部屋の中で、彼女――上泉伊世は言葉を繰り返した。
周りのすべてを断ち斬るように…

「上泉伊世…大陸史上最高と云われた剣士。『剣聖』…『斬撃狂』…その貴女が北川君と相沢君の師匠だとはね」

明らかに険の篭もった口調で斬りかえしたのは美坂香里。
彼女は戸惑う名雪と、困ったように、楽しむように微笑する秋子の見守る中で、厳然と刃の女を睨みつけた。

「私は北川君の本当の強さを見たことがある。あれは……恐怖そのものだった。そんな力を揮う北川君でも相沢君に勝てないの? 相沢君はそこまで強い印象を私は持ってない」

「違うね、お嬢ちゃん。アンタは勘違いをしている。アンタは祐一の力も、お前たちが北川潤と呼ぶ小僧の本当の力も見たことはないはずだよ」

そうそっけなく云うと、彼女は携えていた長大な刀を前に掲げ、シャッっと半分だけ抜いて見せた。
長太刀『軋ヶ崎・藤の残影』。斬撃狂の愛刀として有名になった、血銘刀。
日差しに刃が閃き光り、この刀特有の荒波の波紋が妖しく蔭る。

「本物の剣術家は決して本当の力をひけらかさない。自分の手の内は最後まで隠しておくもんさ。アンタたちが見ていた祐一の力は本気とは程遠いもんだ。ヤツが命のやり取りやマジな勝負をやった所を見た事があるかい? あるならそんな口は叩けないはずだよ」

香里と名雪が小さく唸った。
生憎と香里も名雪も祐一が本当に戦う所を見たことはなかった。

「小僧も違う。アイツの剣は鞘そのものさ」

言いながら、鞘先を持ち上げ、水平に向ける。

「小僧にとって剣術とは鞘なのさ。抜き身の牙を納めるね。アタシはそのつもりで教えたし、小僧もそのつもりで教わったんだよ」

「なによそれ…意味がわからないわ」

謎掛けのような言葉に、香里の苛立った言葉が飛ぶ。
伊世はふん、と鼻で笑った。

「わからなくていいのさ。特にアンタはね、お嬢ちゃん」

その斬るような視線に香里はたじろぎ、言葉の意味に戸惑った。

「まあね、小難しい事を云わなくても力の差は歴然さ。祐一はアタシの全てを吸収し、さらに魔術まで自分の大系に組み込んでる。対して小僧が覚えたのは刀だけ…差は歴然なのさ」

刀の波紋を瞼を半分閉じた目で眺めながら彼女は云う。

「そう、相沢祐一は天才だ。アタシが知るなかで最高の素材だったよ。アタシですら今の祐一とやって絶対に勝てるとは云えないね」

「祐一、本当に強かったんだ」

どこか場違いな調子で名雪が呟いた。

「戦いにおいて尤も重要な要素とは何か…それは速さでも力でもなく、間さ」

「ま?」

思わず口をあけて問い返す香里に伊世は刀を鞘に納めて頷いた。

「そう間…間合だ。間合こそが戦闘を支配する。間を支配するものこそが、戦いを支配する。戦いという空間を支配化に収めることが間合を支配するということだ。
物質的な空間ではなく、魔的な空間でもなく、概念的な空間支配。それが深陰流の奥義…それを祐一は修めている。まずよっぽどの事がない限り誰が相手でも不覚は取らないだろうね」

そして、伊世は流れるように語り出した。
まるで自分が創り上げた芸術品を称えるように
自らが研ぎ上げた名刀を語るように

「剣術の剣とは武器の剣にあらず。即ち、ありとあらゆる戦いのシンボル。剣術を極めし者とは、それ即ち戦いを極めし者。
それが…深陰流剣術の創意だ。
剣・刀・槍・この世に存在するあらゆる武器を使いこなし、素手で相手を捻じ伏せ、周囲にある全ての物…木の枝・小石・布ですらもその手にかかれば必殺の武器と為す。
あのガキはその深陰流を極め、さらには魔術すらもその手の内に収めた存在。
剣・即ち物質を統べる者。
魔・即ち魔の理を統べる者。
そして間、即ち概念的空間を統べる者。

魔剣――エビル・セイバー……これぞ戦闘技能者、その一つの究極形だとは思わないかい?」

「でも…今の相沢君はいつもの精神状態じゃない。そんな状態で本当の力を発揮できるの?」

どこか挑むように、香里。
対し、彼女は出来らいでか、と嘲笑った。

「どれほど情緒が乱れていようと、事、戦闘に関しては常に冷えた思考を保ち続ける。私がそう出来るように教えた」

笑いが、癇に障った。
何故、この女はこんなに他人事の様に言うのだろう。
燻っていた感情が弾ける。

「なら…ならどうして貴方が行かないで、二人を行かせたのよ! 相沢君には誰も勝てないんでしょ? 舞さんと北川君が殺されるかもしれないってわかっててなんで!」

香里は罵るように叫んだ。叫びながら、何故これほど苛立ちを感じるのかを漸く理解した。
この女は、適当に北川を止めるそぶりだけ見せて、その実あまり感心なさげだった。
ましてや自分に力があるのにそれを振るおうとはしない……真摯でない。
腹が立つ。凄く腹が立つ。

だが、香里の怒りは柳の枝を押すように相手に何の影響も与えなかった。
怒りを受け止めるでもなく、反発するでもなく、彼女は動じない。

「小僧は勝てない。でもあの川澄ならどうにかできるよ。二人がかりなら止められるだろうさ、だから行かせた」

ジロ、と睨まれ香里はうっ、と息を飲み込んだ。

「さっき間は戦いを支配するとあたしは言ったね。川澄もそうさ。確か剣舞なんて言われてるんだろ? 舞踏は間を掴む事に通じる。つまり川澄もまた間という概念的空間支配をモノにしてるって事さ。パッと見た感じ、あの娘なら祐一と互角にやれるだろ」

「でも……でも、貴女は無責任すぎる!」

「責任なんざ、知ったこっちゃないね」

何を馬鹿げた事を、と言わんばかりに女剣士は瞼を閉じた。

「あの子らに対してあたしは何の責任もないよ。あの子たちがどう生きて、どう死のうが勝手さ。多少の忠告はするが、その行動に責任を負うつもりはないね」

ギッ、と歯軋りする香里の肩に秋子が手を置く。
見上げる彼女に、秋子は首を横に振った。

わかってる。わかってる。私が言ってる事は理不尽だ。この人は二人の師匠かも知れないが、確かに何の関係もないのも確かなのだ。

それでも……それでも苛立ちは消えない。
そんな彼女を薄めを開けて見ていた伊世がポツリと呟いた。

「お嬢ちゃん、あんたが苛立ってる理由を当てて見せようか……」

ハッ、と顔を上げた香里に続けて言う

「小僧だろ?」

「なっ!?」

香里の顔に朱が差す。

「何のことよ!」

「心配なんだろ? 北川潤の事が…。今のあの子…妙に不安定だったからね。わかってるんだろ? 今の小僧の状態を……」

「わ、私は……」

視線が泳ぐ。
そうなのだろうか……私は不安なんだろうか……
昨日の夜見た北川君は…まるで綱の上を歩いているような不安定さが透けて見えた。
ゆらりゆらりと振り子の様に揺らいでいるように見えた。


「…香里」

名雪と…目線があった。
心配そうな光を湛えた綺麗な瞳。

なに、人の事心配してるのよ…今は相沢君の事心配してなさいよ…アンタは…いつだってそうやって周りを気に掛けないとすまないんだから

激情が思考を押し流す。
香里は思わず口ずさんだ。

「関係…ないわ」

苦しげに繰り返す。

「そんな事…関係ないわ」

「…そうかい」

苦渋に顔を歪ませる香里に、女剣士は意外なほどあっさりと引き、椅子の背もたれにどっかともたれかかった。
一撃は深く斬り裂けど、決してそれに固執せず重石もなく退く。
彼女のスタイルはまさに戦いのそれと同じものだった。

気まずい沈黙が彼女たちを包む。

その空気を特に気にする風もなく瞳を閉じて動かなかった女剣士がふと瞼を開いた。
微妙な空気の差異を感じて秋子の方に目をやる。

そこにあった思いもよらぬ光景に、伊世はギョッと眼を剥き、次の瞬間部屋の入り口の方に視線をやり……

椅子ごと引っくり返った。


「ね、姉さん!?」

その裏返った声に香里と名雪が振り返り、仰天した。
初めて見る、水瀬秋子の引き攣りまくった表情を見て……

だが、次の瞬間さらに彼女らはあまりの驚愕に気絶しそうになった。

なんと、

バチン、という痛そうな音が響くと同時に秋子の顔が仰け反り、

「うきゃっ」

という可愛い悲鳴をあげ、額を抑えて蹲ったのだ


あの水瀬秋子が!!


「…それが久しぶりに姉の顔を見てする顔か、馬鹿者」

コロコロと皮製の指貫が転がる中、決して大きくはない、だが張りのある、大気そのものを震わすような良く通る声が響いた。

「ううー、ひどいです、姉さん」

赤くなった額を抑え、少し涙目になった秋子が顔を上げる。

「な、奈津子!?」

「奈津子さん!」

ヨロヨロと倒れた椅子に寄りかかって身を起こしかけた伊世の引き攣りまくった声と、名雪の驚きと喜びの混じった声が響く。

香里は、当てられたように口をほけー、と開き、ドアの前に立つ女性の姿を見つめた。

スラリとした長身。腰まで伸びた蒼空の色の髪の毛は絹糸の様に細く輝いている。
その纏う気配は颯爽。とても、十八の息子を持つ母親とは思えぬほど若い容姿は水瀬秋子のものととても良く似ている。
だが、その端を吊り上げさせた眼は、妹とまったく違う印象を周囲に与える。

相沢奈津子

相沢祐一の母であり、水瀬名雪の叔母であり、水瀬秋子の姉である女性。

かつては『ブレイカー・ブレイカー』『神の理不尽な鉄槌』『混沌なる蒼(ケイオス・ブルー)』という数々の忌名を以って怖れられた最終兵器

いわく、水瀬秋子より敵に回してはいけないと名高い禁忌の女。


総じて彼女はこう呼ばれる。

蒼の災厄(カラミティー・ブルー)』と…


災厄(レディ・カラミティー)と呼ばれる女は睥睨するように部屋に居る面々を見渡すと、おもむろにその形の良い朱唇を開いた。

「まったく…久しぶりに帰ってみれば、この騒ぎだ。さて、いったい何がどうなってるのか、教えてもらおうか」

ふふっ、とその女が漏らした笑みに、香里や名雪だけでなく、秋子や伊世までが震え上がった。

彼女を知る者は云う。


―恐怖とは、即ち彼女の微笑みの事を云うのだ―


「……俺もいるんだけど…だれも気づいてくれないのね」

その後ろでうじうじと壁にのの字を書いてる髭中年が一人。
まあ、それはどーでもいいことだった。

「…うう、ひどい」




カノン皇国 皇都 雪門郊外の森


「ヒュッ」

小さく細い呼気。
同時に鞘鳴りの音が空気を震わす。
誰の目にも映らぬだろう神速の剣閃。
もし、それを見る事が出来たなら、それは銀色の流麗な弧が虚空へと描かれたのがわかっただろう。

この時、北川が図ったのは速戦即決。
初っ端から全力の技を繰り出し、相手が本気を出す前に仕留める。

選んだ技は居合。
こと、刀術に関しては祐一にも負けないと自負する彼の最強の技だった。

大気すら断つ下段から逆袈裟への斬撃。

ガキィィ……ン

金属音。
神速の斬撃は祐一が鞘ごと掲げた魔剣により阻まれた。
だが次の瞬間、祐一が目を剥く。

――迅いっ!!

弾いた筈の刀は、初めから抜かれていなかったかのように既に鞘へと戻っていた。
いや、はや既に第二撃は鞘内より撃ち抜かれていた。
これぞ正に神速の名を与えるに相応しい激烈な抜刀術。

今度は弧が上を向く。
腰を捻るように傾けての、異型居合。上段から降り注ぐ銀閃。

「くっ」

祐一は全身の反射神経を爆発させて、左に身体を逸らす。
それはただ避けるだけの動作。
反撃へと連ねる見極めをする余裕もなかった。
頬に斬撃による大気の断層を感じた。

虚空に描かれる弧が止まらない。
地を滑るように北川の姿が朧に揺れた。

深陰流戦武踏『水面駆け』

北川は文字通り水面を駆けるがごとく軽やかに、そして刹那の間に祐一の側面へと移動した。
死角の侵略。
そして…弧を描く銀の飛沫が祐一の後頭部に向け、ほとばしった。


ガッッ

森に響くは鈍い激突音。

それは途絶の音だった。



「『水面駆け』から繋がる弧太刀『秋水』か……今のはマジで焦った」


刀を繰り出した体勢のまま、北川はゾッと肌を泡立たせながらその言葉を聞く。
刃を返し、峰で振るわれたはずの妖刀『絶』は、祐一の後頭部の直前で止められていた。

祐一が背中にまわした右手。その広げた中指と親指に乗せられた指の太さもない細い木の枝。
恐らくは先程茂みを突っ切った時に引っかかっていたのだろうその木の枝に、妖刀は受け止められていた。

「だが、届かなかったな」

バッ、と北川は思いっきり飛び退いて間合を取った。
ドッと冷たい汗が流れ落ちる。

冗談じゃない。

ギリリ、と彼は歯を軋らせた。

冗談じゃない、峰打ちとはいえこの『絶』の一撃を木の枝で受け止めるだと!?

「化け物め!」

「深陰流は武器を選ばない。気を隅々まで張り巡らせば、ただの木枝ですら鉄棍にも勝る武器となる。そう婆さんに教わらなかったか?」

「だからって…マジに見せられるとは思わなかったよっ!」

そうかい、とそっけなく呟き、祐一は木の枝を投げ捨てた。そして、剣をすらりと抜き放ち、ぶらりと右手にさげる。

「今度はこっちの番だ、北川」

感情の消えた声。底冷えした寒気が吹き荒ぶ。
北川の顔がみるみると青ざめた。

ヤバイ!

すでに充分取ったはずの間合。だが、北川はさらに後ろに飛び退いた。
本能と経験がハモりながらそこは既に危険地帯だと絶叫する。
吹き荒ぶ圧力から逃れるように……退く。
だが、警鐘は止まない。

祐一が剣を構える。剣の型は地擦り。下から斬りあげる体勢。
だが、祐一は動く事無く、ただ一言呟いた。

「…アクセス」

ちょうど飛び退いた体が地に足を着いた刹那、北川はそれを見た。
祐一の持つ魔剣『メモリーズ』の剣身が仄かに光り、ズルリと伸びる様を…

「なっ!?」

蛇のごとく空中をうねり、迫る白色の鞭。
つい数瞬前まで剣だったそれは、今、白鞭と化し凄まじい速度で北川の首めがけて伸びた。

――くっ

必殺の技を破られ、自分との格の違いを見せ付けられた事で動揺していたのか……
北川はここで致命的な間違いを犯した。

咄嗟に右手の『絶』で白鞭を斬り捨てようとする。

斬れるはずがない。形状を変えたとて、それは紛れもなく魔剣そのものなのだから。

刃がその白い蛇身に触れるや否や、ぬめるように鞭がうねる。

――しまった!

白魔鞭は獲物を捕らえた。瞬時に妖刀の刀身を雁字搦める。

そして二度目の間違い。

ぐい、と鞭が引き寄せられる。
ここで北川は刀を離すべきだった。だが、結果として北川はこの瞬間、思わず柄を握りこみ、引き寄せられるままにグラリと体勢が崩れる。
それは戦闘の際における決定的な隙……

音も無く、気配を気取る暇もなく、気づいた時、すでに祐一の姿は懐の内に…

ああ…

北川は絶句した。

これじゃあ最初から最後までこいつの手のひらの上じゃないか

ド……ガッ

肩口からの体当たり。
肺から空気が強制的に吐き出される。
重力に逆らって、体が宙を舞い、やがて重力に逆らいきれずに大地に叩きつけられる。

「ゲッ…ハァ」

足りない酸素を補おうとする意思と、衝撃にさらに吐き出される空気がぶつかり、行き場を失う。
暗む視界を無理やり開き、北川は自分を見下ろす親友の顔を睨みつけた。

「無理だと…言ったろう?」


降り注ぐ、言葉。

トリガーに指がかかった。


くっ…くくくく

侮蔑すら含まぬ感情の擦り切れたそのセリフに北川は喉を震わせた。声は出ない。

言う…ねえ……言って…くれるねえ


嗤いが思考を侵していく。
何もかもが楽しくなってくる。

ヨロリ、と北川は立ち上がった。

思わず、笑い転げそうになりながら刀を肩に引っ担ぎ、目の前にいるヤツに言う。

「痛いじゃねーか、相沢」

ガッ、と頭がぶれた。
気がつくと、視界に空が見える。顎が痛い。どうやら下から顔を打ち上げられたらしい。
今度は鳩尾。いきなり突かれた。弓なりになり、続けて背中から叩き伏せられる。
地面に口づけする直前、視野の端にチラリと映った。

今度は棍かよ

相沢祐一が手にしている武器は真白き直棒。
相手をぼこぼこにするには手ごろな武器だ。それにしても鮮やかな技の冴え。
どんな武器でも自在に扱えるというのはどうやら本当らしい。


「いい加減うざったいんだよ、北川。そこでノビてろ!」

ゴロリと地面を転がり、のそりと立ち上がった北川を見て、祐一は苛立たしげに叫んだ。

くくっ…くくくく

顔を手で覆いながら忍び嗤う。

楽しくて仕方が無い。頭にきて仕方ない。

言うじゃねえか、相沢。こっちだっていい加減頭にきてるんだよ。好き勝手やりやがって……

祐一の表情が段々と険しくなっていく。ギリギリと歯軋りの音が響く。

「それとも死にたいのか…」

祐一の声が低く凍る。
気配が一変する。放たれるそれは…殺気だ。

それに打たれ、北川は震えた。


違うな、相沢…俺は死にたいんじゃない……


ヤバイ…なあ……相沢…そんなに殺気を撒き散らすなよ……


俺まで




コロシタクナルジャナイカ




「アクセス」

白の棍が魔剣へと戻る。
祐一は動かない北川に向かって剣を頭上に振り上げる。

殺す――と、祐一は楔の折れた思考で考えた。


北川も刀を肩から降ろし、右平行に振りかぶる。

殺っちまおうか――と、北川は楔が抜けかけた思考で考えた。


両者の殺気が研ぎ澄まされる。
二人の神経すべてが次の一撃に収束した。


その瞬間、

 ド…ン

祐一の目が見開かれる。
北川の目が見開かれる。

唐突に、あまりにも唐突に事態は転換した。

不意に現れたのは夜の如き黒髪の女。
その拳は、見事に祐一の腹腔へとめり込んでいた。


「…ま…い?」

呆然と、強制的に吐き出された呼気とともに目の前の女の名を口にする。
それが最後の抵抗だったとでもいうように、次の瞬間、祐一は気絶した。


北川は唖然と立ち尽くす。そこにはさきほどまでの微かに滲み出た狂気は消え去っていた。

あまりにも非常識な展開に、混乱する。
少し離れた彼の目にも、川澄舞は相沢祐一の目前に唐突に姿を現した。それこそ、空間転移してきたか、透明人間にでもなっていたかのように唐突に

「……囮、ご苦労」

淡々と言う舞に、思わず北川は問い掛けた。

「い、今までどこに――」

「ずっとここにいた」

「ここに…って!?」

自分の立ってる場所を指差す舞に、北川は絶句し……戦慄とともに理解した。
文字通り、川澄舞はその場にずっと居た事を……

「気配断ちの技…気殺…か? それも……俺たちにその存在を認識させないほどの……」

そう…目の前に居るにも関わらず、その姿を見ているにも関わらず、決してその存在を気取られない…認識させないほどの完璧な、完膚なきまでの気配殺し……
それも、相沢祐一と北川潤という屈指の使い手を相手に…である。

間近からずっと窺っていたのだ。この女は祐一が一瞬の隙を見せるのを、まさに至近距離から窺っていたのだ。
さすがに攻撃に移れば気が付かれる。だからこそ、じっと息を潜めて…待っていたのだ。

そして祐一は一瞬だけ隙を見せ…舞はそれを見逃さなかった。

それは…剣士の技能というより狩人の技能だ。それこそまさに…魔物を討つ者としての……。


「…ったく、どいつもこいつも化け物だ」

北川は呆れた様に呟いて、力が抜けたようにバタンと倒れこんだ。
当身や棍で叩かれた個所が今さらのように軋むように痛んだ。

「…あの野郎、容赦なしに叩きやがって…」

斬られなかっただけマシだが、痛いものは痛い。
幸いちょっとした打ち身程度だろうが……

まっ、これで頭冷やしてくれりゃあいいけど……

横目でぶっ倒れている祐一を流し見た。
とりあえず自分の出来る事はやった。後は誰か違う奴の仕事だろう。
舞が屈んで様子を見ている。綺麗に入ったようだったから、それこそ無傷だろう。コッチの方が被害甚大だ。


…………ィン

ふと、北川は何かを察知したかのように祐一の倒れている場所とは反対側に顔を向け、森の方を一瞥した。
そうする内に、よいしょ、とばかりに気絶した祐一を肩に担いだ舞がテクテクと歩いてくると、倒れる彼を覗き込む。

「…大丈夫?」

云われてハッと彼は見下ろす彼女の方を見て、パチパチと眼を瞬かせると何となく気もそぞろに言った。

「うー、あんまり。ぼこぼこに殴られたし……。ちょっと一休みしてから追いかけるよ、その馬鹿先に連れて帰っといてくださいや」

「…………」

……沈黙。
何故か舞は答える事無く、北川をじーっと見つめた。
そして、ジロリと先程北川が見た方を睨む。

「う、うーん、痛いなあ」

空々しく呟く北川を舞は再びじーっ、と見つめた。たらり、とこめかみを汗が伝う。

だが、やがてため息をつくように小さく形の良い唇を開いた舞は、コクリと頷くと踵を返した。

木々の奥へと消えていく舞の背中を見送った北川は、その姿が視界から消えてしばらくすると「よっと」と跳ね起きる。
そして、苦笑を滲ませながら言った。

「バレバレだったな」

「ぬう、睨まれた時はビビったぞ」

ゾワ、と森に澱んでいた影が盛り上がり、フードを被った人型をとる。

「気配を隠すならあれぐらい完璧にやらねーとな」

「…無理とは思うが肝に命じておくわ。さて……」

と、疲れたような声音を変え、影は北川の方に音もなく寄った。

「こうして顔を合わせるのは久しぶりじゃな――」

ジューン・ライツ・フェンリル……と影は北川をそう呼んだ。
人ではなかった頃の名前を呼ばれ、微かに北川の唇が歪んだ。だが、それ以上の反応を示す事無く、彼は屈託なく口を開いた。

「アンタも相変わらず無駄に死にそうにない所や影からコソコソ覗き見する趣味なんか変わってなくて何よりだ、カゲロヒの爺さん」

「……お前…なんか口が悪くなったか?」

「……そうか?」

何かショックを受けたようにブツブツと呟き出したカゲロヒに、彼は呆れながらに問いかけた。

「でさ、何のようだよ、わざわざ…」

おお! と気を取り直したように首肯するカゲロヒ。
居住まいを正し(といっても影だが)、おもむろに切り出した。

「王が…ヴォルフ・デラ・フェンリルがお前と会いたいそうだ」

そうか、と彼は驚く風でもなく頷いて見せた。

「丁度良かった。俺もアイツに話があったんだ」

云いながら、金色の魔族の姿を思い浮かべ、ふと思いついた。

いや、それとも同じ話かもな。

北川は内心で苦笑を浮かべると、さっさと連れてけ、と影に言う。
その表情にカゲロヒは微かな違和感を感じ、しばしじっと探るように黙り込んだ。

果たして…彼はこんな蝋燭の炎のような雰囲気をまとっていただろうか…と
かつてから、この少年は常に迷いを内に抱えていた。
だが……その迷いもつまりは彼の内にある太く通った幹の上での迷いに過ぎない。
歩くべき道を見据え、その道をどう歩くかという迷いだった。

だが、今の少年の雰囲気とは、道を歩きながらも周囲に濃密な霧が立ち込めている……

そんな感じだった。


黙り込むカゲロヒに、北川はどうしたと首を傾げる。
何でもないと云いながら、カゲロヒは心の中で深く深くため息をついた。


北川潤…か。ライツよ、お前はその北川潤と向き合う事で、どうするのだろうな。



ゾワ、とカゲロヒの足元から影が盛り上がり、森を覆い尽くす。
そして、影が消え去った後、その場に残ったモノは、木陰と木漏れ日のみ

もう誰の姿も残ってはいなかった。





カノン皇国 スノーゲート城


「つまり……私が態々会いに戻ったというのに、肝心のあゆちゃんは攫われ、馬鹿息子は暴走した挙句に今、暴れ回ってる最中という訳か」

すらりと細く長い足を組み、唇で挟んだタバコを上下に動かしながら、相沢奈津子は至極落ち着いた様子で状況を説明した香里を見据えた。
その通りです、とばかりにコクコク頷く香里。

奈津子はタバコを指先に挟むと、瞼を半分閉じ虚空を睨んだ。

「…ったく、一緒にいながら何をやってたんだ祐一はっ」

小さく、だが語気も荒く呟く。
一瞬だけ、考え込むように瞼を完全に閉じた彼女は傍らの中年の方に視線をやり、問い掛けた。

「少し勝手をさせてもらっていいか?」

きょとんとした中年――彼女の夫である相沢祐馬は、ふむ、と髭を扱くとニヤリと笑う。

「別に構わんさ。好きにしろ。どうせ祐一は魔王討伐隊の方に加わるだろうし、俺は相沢子爵軍の方を預かるさ。香里ちゃん、俺現役復帰してもいいよな」

「え、ええ。それは相沢のおじ様が軍を率いてくださるなら頼もしい限りです」

えへへ〜、頼もしいだってさぁ、とでれでれ親父。それを冷ややかな視線で突き刺す奈津子に、名雪が恐る恐る問い掛けた。

「あの、奈津子さんはどうするんですか?」

可愛い姪っ子の質問に、蒼の女は気配を緩め、茶目っ気たっぷりに答える。

「それは秘密というヤツだ、名雪ちゃん。まあ、少し姿をくらまさせてもらおう」

「なにを…」

「そうだな、役柄はナイトかジョーカーといったところかな。さて、それでだ老師」

「あ、あたしか?」

いきなり名前を呼ばれてビビる上泉伊世。
それにしても天下の剣聖が情けない有様である。

「貴女がいるとは丁度いい。ぜひ同行してもらいたい」

「な、なんであたしがアンタと一緒に行かなくちゃならないんだい!」

「うん、私が頼んでいるからだ」

「馬鹿な! 誰がそんな面倒な事を! あたしは嫌―――」

…だよ、とは云えなかった。
ビキィィィ、という凄まじい音が部屋中に響き渡る。
部屋に居た全員が引き攣る中で、部屋中の壁にひび割れが走った。

微笑んでいた。
奈津子がさきほどよりさらに凶悪に微笑んでいた。

静かに…大嵐が到来する直前の静けさをまとった声が響いた。

「……ああ、老師…今、私はすこぶる機嫌が悪い。どれだけ悪いかと言うと何故か老師の愛しい刀がグニャグニャにひんまがってしまいそうなほどに機嫌が悪い」

貧血を起こしたように顔を真っ青にして思わず刀を抱き締める伊世。
咄嗟に助けを求めて視線を巡らすが……

い、いないーー!? お、おのれ秋子め、逃げおったなぁ!

捜し求める水瀬秋子の姿は、いつの間にやら煙の様に消え去っていた。

思わず顔を見合わせた香里と名雪が目で会話する。

(ちょ、ちょっと名雪、秋子さんどこ行っちゃったのよ)

(知らないよ〜。今まで全然気が付かなかったんだから。うー、お母さん薄情だよ〜、奈津子さん怒ってるよ〜、怖いよ〜)

(あ、秋子さんの本性の一端を見たって感じね。あっさり娘を見捨てて逃げ出すなんて…実はやっぱり名雪って秋子さん似?)

(ちょ、ちょっとお。香里、それどういう意味だよ)

(ふっ、言葉通りよ)

目で会話しながら言葉通りよ、もないと思うが目だけでこんな会話が出来るか! という話もあるのでそれはさておき。

「さて、老師…さっき何か言いましたか?」

「…………言ってないです」

実に楽しそうに苦笑を浮かべる祐馬の見物する前で、泣き疲れたように悄然と首を横に振る女剣士に満足そうに頷くと、奈津子は娘二人を振り返った。

「じゃあ、後はよろしく頼む。…名雪ちゃん」

「は、はい」

「祐一をよろしく」

「は、はい!」

表情を一変させて力強く頷く姪に、目を細めて微笑んだ奈津子は思い出したように付け加えた。

「あと、秋子に首を洗っとけ、と言っておいてくれ」

あうあう、と呼吸不全で喘ぐ姪っ子を残し、奈津子は颯爽と伊世を伴って部屋を出て行った。


それはまさに蒼い竜巻のように

色々な意味での被害を撒き散らして彼女は姿を消した。


「やれやれ…だねえ」

毎度のことながら面白れえなあ、と完全に他人事のままやり過ごした相沢祐馬は、脱力して突っ伏してる美坂香里とまだ喘いでいる水瀬名雪を横目で眺め、ククク、と肩を震わせた。




    続く





  あとがき


楓「……はろー?」

八岐「は、はろーって(汗)」

楓「……Hello」

八岐「あ、いや、英語で言われても…」

楓「では、はじめましてと言いましょうか?」

八岐「な、なんで?」

楓「……私、ほとんど一言しか喋ってないし」

八岐「ぐぁ! そ、それはぁ」

楓「……しかも一話しか登場してないんです」

八岐「ぎゃあ」

楓「ぎゃあ、じゃありません……怨みますよ、そう、来世まで」

八岐「ま、待って待って、何とかするから」

楓「本編に早く登場を……」

八岐「いやぁ、それは…あはは(汗)」

楓「……(しゃきん)」

八岐「わわっ、小太刀抜かないで、切先こっち向けないで…(と、さり気なく楓嬢の武器をアピール)」

楓「ふっ、まあいいでしょう。とりあえず、このあとがきは私に任せてもらいます」

八岐「はいはい、どーぞどーぞ(万歳しながら) あ、ところでお姉さんとかは」

楓「梓姉さんはそれなりに活躍しましたし、当分は出番なくても構わないでしょう。初音も後で活躍するそうですし」

八岐「あ、あのー、もう一人…」

楓「ふふ、私に千鶴なんて姉はいないんですよ、八岐さん」

八岐「……あ、そーでやんすか(しーらない)」

楓「という訳で、神秘的美少女 柏木楓があとがきのアシスタントを務める事と相成りました。どうぞ、よろしくお願いします」

八岐「これはご丁寧にどうも(汗) さて、とうとう相沢母・奈津子さんの登場です」

楓「無茶苦茶ですね」

八岐「一言で斬って捨てられてしまいました(滝汗)」

楓「無敵キャラの秋子さんと伊世さんがケチョンケチョンですよ、笑っちゃいますね」

八岐「笑ってください、はい(苦笑)」

楓「さて、そろそろ次回予告へ行け、だそうです」

八岐「誰が言ってるの? それ」

楓「貴方でしょう」

八岐「……そりゃまあそうですが…あれ?」

楓「これが原稿ですか、はいどうも。では……少年の前に現れる魔王。彼がもたらす真実とは。少女は一人思い出す。あの、暑かった夏の日の思い出を」

八岐「次回第52話『Boy meets Girl or the Soul meet again.』…それは出会いと再会の夏…」  

楓「それではまた次回…次回のあとがきも私です。いえーい」

八岐「…びみょーに性格が違うような」

楓「何か言いました?」

八岐「(ぶんぶん)」


八岐「……何気にあとがきはこれ系統の娘がやりやすいなあと思っている八岐であった」

楓「……(じぃー)」

八岐「(ぶんぶん)」

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