――御音王国末期――

この当時、御音王国における王権を傘にきた役人、貴族階級の庶民に対する横暴には、目を背けたくなるほどの凄惨なものがあった。
多くの無辜の民が様々な理由から搾取を受け、死んでいった。
それは国家の末期症状だったとも云えるだろう。
そして、異様なまでの弾圧が、内乱に至るのもまた必然であった。自然と、御音各地では幾つもの反政府組織が誕生していく。
とはいえ、この頃の王国がまだまだ強大な力を維持していた事は間違いなく、小規模の組織が幾つ暴れたところで所詮象と蟻の戦いであり、いずれ限界が出てくることは目に見えていた。
そんな見通しの立たない中で台頭してきたのが、組織の中でももっとも古株の小坂由起子率いるグループだった。

潤沢な資金と折原浩平、長森瑞佳といった稀有の人材を揃え、なにより小坂由起子のリーダーシップがモノを云い、 彼女のグループは各地の小規模な組織が合流していった結果、革命軍と呼ぶに相応しい規模と内容を持つ組織へと変貌していく。

この過程で、川名みさき、深山雪見、上月澪、七瀬留美といった後に名を成す人材が、革命軍に参加していった。
その中でも特に目に付いたのが、当時、規模はともかく、その組織力・情報能力は群を抜いていると評価されていた反政府組織『アンブレラ』の革命軍への合流だった。

そして、その『アンブレラ』の長であり、里村茜や柚木詩子らを擁した天才。その名を城島司と云う。

地下に限られていた活動が、民衆の蜂起や、一部王国軍の革命軍参加などから名実ともに戦争と呼ばれる段階に至るなかで、折原浩平と城島司は指揮官としての名声を二分していく。
革命軍内のライバルと目された二人だったが、特に派閥争いをするわけでもなく、同じ年齢という事もあり、親友と呼んでも過言ではない間柄だった。

同じ傷を――大切な人間を王国の弾圧により失ったという傷を抱えていた事も影響したのかもしれない。

二人は時に競い合い、時に協同で王制軍を撃破し、その名声をさらに高めていった。
だが、彼らの友誼は唐突に途切れることとなる。

城島司の死というカタチで……



革命軍と呼ばれた組織は、その成立当初から内部での綱引き…つまり権力争いが行われており、その内実には凄まじいものがあった。
一応、軍という形をとってはいたものの、所詮は幾つもの反政府組織の寄せ集めでできた集団という面を拭い去れなかったのだ。
これが空中分解せず、革命軍という形を持ちつづけた事は、小坂由起子の涙ぐましい努力と稀有な才覚、そしてカリスマの賜物としか云い様が無い。

だが、由起子の力もまた全能ではない。

無理に形を維持してきた反動。それは最悪の形で噴出した。



自分たちの軍内の立場に不服を持っていたある組織の裏切り。
そして、その組織を利用した王制軍による奇襲攻撃

この合戦で、革命軍の主力を率いた浩平と司は、初めての大敗を喰らう。
革命戦争を一年長引かせたと云われるこの惨敗で、革命軍が失ったものは時間と軍勢だけではなかった。

戦闘で大怪我を負い、味方とはぐれ、道無き道を彷徨っていた浩平と司。
彼らは王制軍の残党狩りに追いまわされるはめになる。王制軍にしても、折原浩平と城島司という名前には恐怖に近い感情を抱いていたため、自然とその追跡は苛烈なものになった。

逃亡虚しく残党狩りの一群に追いつかれ、岸壁の上で包囲され、追い詰められた二人。
その絶望的な状況の中で、司は浩平を庇い、崖下へと転落…谷底へとその姿を消した。

その後、城島司の消息は途絶え、やがて彼の死は厳然たる事実として皆の内に受け止められるようになる。
そして、苦しい戦いの中、生還した折原浩平の鬼気迫る活躍、深山雪見、川名みさきなどの各将の奮闘などが続くにつれて、革命軍を支えた一人の少年の名前は、人々の記憶から徐々に消え去っていった。
僅かに、友人たちの心の奥底にその残滓を残して……






魔法戦国群星伝





< 第四十七話 虚無はやがて闇へと至る >




御音共和国 大統領府 地下階



「何とか…何とか言えよ!! ……司ぁっ!!」

折原浩平の震え混じりの絶叫は闇を切々と焦がした。
死者との再会は彼に混乱をもたらす。
死んだと思っていた人間が生きていた。それは喜ぶべき事のはず。
だが、この闇が…虚ろな闇が浩平を際限ない不安の底へと落とし込む。

――つかさっ、お前はいったい

「生きてるよ、浩平。こうしてね」

そう云って、司は眩しげに目を細めた。

「幸運にもそこにいる氷上君に助けられてね」

そして、静かに微笑みを浮かべた。
その笑みには何の意図もなかったのだろう。だが、それは浩平に大きな衝撃を与えた。
浩平はその微笑みを目の当たりにして愕然と目を見開く。
その笑みはこの闇のように空虚で、かつての暖かさなど微塵も感じさせない、ペルソナの笑み。

浩平は自分が思い浮かべたモノを振り払うように首を振ると、怒鳴り声を叩きつけた。

「なら! 生きてたなら、なんですぐに戻ってこなかったんだよっ!! なんで…無事だって知らせて…くれなかったんだ」

怒りの滲んだ怒声が、言葉を重ねるにつれ、擦れて、そして消えた。まるで縋りつくように

「必要なかったからだよ」

「必要なかっただと!?」

項垂れるように床を見つめていた浩平は、その言葉に再び怒気を漲らせ、虚ろな瞳を睨んだ。

「僕はもう革命軍には必要なかった。幾多の人材が、そして君がいたからだよ、浩平」

「―――っ!」

「僕らは革命を成功させなければならなかった。 そして、あの時、革命軍には影を担う部分が必要だったんだ。浩平、君にもわかっていたはずだ。あの時期の革命軍は自意識が高いだけで有害以外の何物でもない者たちがはびこり、分裂寸前だった。再びあの大敗を繰り返さないために、裏切りを許さないためには影が必要だったんだ。無能と有害を取り除くための影が」

「…司」

愕然とする浩平を前に、彼は淡々と続ける。そこに微塵の感慨も見せずに

「僕が消息を絶ったのは偶然だったが、同時に幸運でもあった。影を率いるには死人が最適だったんだよ」

そして、その影を知る者は最小限でなくてはならない。と小さく呟く。

「君は影を知る必要のない人間なんだよ」

そう言った司の声はむしろ優しげですらあった。
だが、その言葉は逆に浩平を突き放す。
浩平は…微かに全身を震わせた。



御音共和国には、これまで暗然たる噂が広がっていた。
革命戦争終盤から共和政権黎明期にかけて、叛乱・造反・権力の乗っ取りを企てた個人・組織は秘密機関により事を起こす前に総て抹殺された、という噂が。
事実、浩平が知るだけでかなりの人数がいつの間にか姿を消している。
そして、司の言葉は、それが紛れもない事実である事を示していた。

そして、同時に表の人間である浩平には、その闇は絶対に共有できないものだということも…

その言葉は間違いなく司の優しさだった。
親友を影に近づけまいとする、彼の優しさだった。

だが、浩平にとって、それはかつての親友からの拒絶。
けっして越える事の出来ない溝を、露わとする言葉でしかなかった。

ギリリ、と歯軋りの音が響く。

考えれば、革命なんて破壊の末に出来上がった政権が、何の障害もなく運営できるはずがない。その障害をみんなこいつらが排除してたんだ。
いや、共和政府が出来てからだけじゃない。
あの司が行方不明になった敗戦以来、裏切りが起こらなかったのは、司が影で動いていたからじゃないか。

そして、そして俺は……っ!

ツツ、と食いしばった口元から一筋の血が伝い落ちる。

影になったこいつの上で、ノホホンと戦ってたわけだ! 何も知らず! 戦争が終った後も…!!

「…司っ」

そうだ、今コイツがいる場所は、俺がいたって何の不思議もなかったんだ。
あの時、崖から落ちたのが俺だったなら……

「ちく…しょうっ」

思わず口走る罵声。自分への…罵倒

浩平は激痛に耐えるように顔を歪めながら、意識を振り絞り司の瞳…黒洞を見据えた。
深い…深い…虚ろな闇がたゆたう瞳に眩暈を覚える。
そうだ…知ってる。この闇を俺は…

「…司! だからって何でお前がそんな目をしなきゃならないんだよ!!」

何も無い虚ろを湛えた闇色の瞳を。


だが、その悲痛な叫びに司は何の反応も示さなかった。
口が開き、言葉が発せられる。

「浩平…君は僕に話してくれたね。この戦い…王国との戦いは復讐だと」

瞼が閉じられ、虚無が遮られる。

「君は妹を失った」

ビクリ、と浩平の身体が痕の痛みに震える。

「僕は先生を殺された」

す、と再び虚無が開かれる。

「そう、僕らは復讐という感情に身を任せることでしか、前を向けなかったんだ。この世界に存在することができなかったんだ」

虚ろな眼差しが、浩平から外れ虚空を漂う。

「でも、もう復讐は終ってしまったんだ。僕には何も残っていない」

彷徨っていた視線が、再び言葉をなくしている浩平に当てられる。

「君は……総てが終っても前を向いている。でも…僕は…」

唇は閉じられた。
繋がりは閉じられた。

「浩平、君はここにいてはいけない。こんなところに来てはいけない」

「つか…さ、違う…だろ? それは…違うだろっ!?」

泣きそうになりながら、途切れ途切れに言葉を吐く浩平に、司は頭を振ると氷上に頷きかけ、背を向けた。

それは断絶。

氷上は呆然と佇む浩平を促し、虚ろに満たされた部屋を出た。





すべての生気を失って、死人のように廊下を進む浩平の背を見ながら、氷上は少し離れて後ろを歩く。

「…折原君」

そのあまりの悄然とした後姿に、氷上は思わず声をかける。

「あの眼…司のあの眼を俺は知ってる」

浩平の足が止まる。そして誰とも無く呟いた。

「あれは、みさおを亡くした時の俺の眼だ」

氷上の足が止まった。

「総てを無くして、世界を拒絶して、自分まで消してしまいたかったあの時の…」

虚ろ、虚ろ、そこには何もなく。空虚で、中身も無い。何も無い。何も無い。

虚無

そう虚無とは、虚無とは即ち――

氷上は小さく口ずさんだ。

「―絶望へと至るモノ」

浩平の形相が一変する。
氷上の言葉は停止しかけていた浩平の心を叩いた。突然噴き上げるように怒りが爆発する。
猛然と振り返り、氷上の首元を掴み上げ、壁に叩きつけて絶叫する。

「氷上、お前!! なんでアイツがあんなになるまで放っておいたんだ!? あんな、あんな眼になるまで!! なんでっ!!」

氷上は静かに自分を吊り上げる浩平の手に、自分の手を添える。
そしてすり抜けるように、浩平の手を外した。

静寂を湛えた瞳が、浩平を見つめる。

「僕にはなにもできない」

「なにぃ!!」

無責任なその言葉に、浩平は激昂した。だが、その怒りは氷上の深い眼差しに射止れ、前に進まなくなった。

氷上は静かに続けた。

「僕はただ時が移ろい往くのを眺めるだけの存在なんだ。時と共に流れていく者たちを離れて見ているだけの…ね。だからこそ、僕は一時、人に関わる事になっても、力を貸す事はする。だが、相手の内面に干渉する事はしてはいけない。道を指し示す事をしてはいけないんだ」

「…なに…言ってるんだ?」

意味が…わからない。それよりも、浩平には氷上の瞳の色が気になった。その深い深い色は……苦痛と哀しみ?

氷上は静謐とも云える声で続ける。

「何故なら、僕の時間は君たちとは断絶しているから、僕の流れは止まっているから…」

「…それは」

どういう意味だ? と云おうとして、氷上自身の言葉に遮られた。

「僕という存在は時の流れと断絶しているんだ。僕は永久に世界を流れる者。もう……千年以上にもなる」

「―――っ!?」

青年の瞳は遥か深遠を望んでいた。
その言葉の意味を解し、浩平は言葉をなくす。
何か言おうとして、何も言葉が出てこない。
言葉が見つからない。
これほどの…悲哀を…孤独を前にして…何を言えばいいと言うのか?

だが、氷上は自分の哀しみに気づく風もなく、淡々と言葉を続けた。

「そんな僕が…時の流れない存在が、生を生き、死に死す人の行く末を指し示してはいけない。人の人生を決め手はいけない。それが…」

瞳が揺らぐ。
唇が歪む。
咎を告白するように…

「それが僕が自分に課した掟だよ。自分の行動を…後悔しないための……」

それは違う。

浩平は唐突に悟った。

それは違う。

それは確信となって浩平の意思を走らせる。
氷上の眼が、口元が、表情が、気配が…総てが違うと言っている。

「……嘘をつくなよ」

「…嘘?」

「そうだよ、嘘だ! 何が…後悔しないためだ! 氷上…お前、後悔してるじゃないか!」

「…そんなことは」

「違うってのか!? 嘘じゃないって云うのか!? なら…なら、なんでお前は泣いてるんだっ、氷上!!」

「僕が…泣いて…?」

思わず手を目元に当てる。
乾いた、乾ききった頬。そこには涙の欠片もない

「僕は…泣いていない」

氷上は呟いた。どこか、呆然と。
何故? 確信を持って云えない? 泣いていないじゃないか

その答えは浩平が出してくれた。

氷上の襟元を掴んだ両手に額を押し当て

俯き、顔を伏せ、彼は押し出すようにこう言ったのだ。



「泣いてるじゃないかっ。茜…みたいに……」



その言葉は衝撃となって彼の心を薙ぎ倒した。

…ああ

ユラリ、と視界が揺らいだ。

以前、自分が司に言った言葉が思い浮かぶ。


――…彼女はいつもここに来るたびに泣いているね――


僕も…そうだったというのか?

自分が黙々と積み重ねてきたモノが、傾いた塔だった事に気がついたように揺らぎ出す。

浩平はさらに言葉を連ねた。まるで自身の身体を突き刺すように…辛そうに、言葉を連ねる。

「お前には出来たはずじゃないのか! あいつを! 司を助ける事が!!」

違う、そんな事は無い。

言い訳するように氷上は呟く。

「人ではなくなった者が人を導こうというのは傲慢だ。僕は…ただ見ているだけだ、彼を…そして君を…」

だが、その言葉にそれまでのような力はない

浩平は泣き出しそうになりながら、天井を見上げた。そして、その言葉を紡ぐ。

「人じゃない? 傲慢? そんな事…どうだって良かったじゃないか! アイツは…お前の友達じゃないのか? そうやって…友達を見殺しにする気かよ」

「―――みご…ろし…」



遂に、

ガラガラと、

自分を形作る何かが壊れ、

崩れ落ちた。




僕は…彼を見殺しにしようとしていたのか…?

そんな……そうなのか?

………………

ははっ、何を…今さら。
そうだ…今さらじゃないか。今さら何を…気が付いた振りを…
僕は、これまで何人も、そうやって…見殺しにしてきたじゃないか。
手を差し伸べようともせず、導こうともせず、助けようとせず、見殺しにしてきたんじゃないか。
奈落へと落ちていく者たちを…友人たちを…僕は助けようとしなかった。
百年前だってそうだった。僕は、彼が破滅へと向かう事を知りながら、むしろその手助けをして……死なせた。
見殺しにした。
見殺しにしてきた。
それを……僕は…見殺しにしたという事実から…目を逸らしてきたんだ。
逃げていたんだ。
そして…繰り返していたんだ。

繰り返して…

幾度も

幾度も



呆然と、立ち尽くす氷上。
浩平は虚ろな口調で言葉を紡ぐ。

「俺じゃあダメなんだ。アイツの犠牲の…虚無の上でノウノウと日常を過ごしてきた俺じゃあダメなんだ。アイツを…司を助けてやってくれよぉ、ひかみ」

ずるずると縋りつくようにうずくまった浩平の、血を吐くような苦しげな声に、氷上は呆けたように虚空を見上げ、立ち尽くしていた。



崩れて行く。
彼らの世界が

虚無は絶望へと至る

虚無

無力感

そして、罪

今、彼らはまさに絶望へと足を踏み入れていた。






§






「瑞佳ちゃん」

振り返った瑞佳の表情に、詩子は絶句した。
心が、締め付けられる
それは、まさに今の茜と何ら変わらぬ表情だったから。

「折原君は?」

辛うじて声は出た。だが、意識は彼女の顔に釘付けとなる。
瑞佳は疲れきった声で答える。

「……部屋に閉じこもったままだよ…わたし…あんな辛そうな浩平見たことない」

あたしだって瑞佳ちゃんのそんな辛そうな顔、見たことないよ。

思わず言いそうになったその言葉を、詩子は飲み込んで俯いた。
見ていられない。

「ううん、違う、わたしは見たことある」

「え?」

首が横に振られる気配と、言葉に、詩子は顔をあげて瑞佳の顔を見て、崩れ落ちそうになった。


涙が…


「あれは…浩平と初めて会ったときの……浩平が消えちゃいそうに思ったときの…」

相談なんかするんじゃなかった。

思わず、彼女を抱き締めながら詩子は後悔した。心底後悔した。

この二人を、こんなに傷つけてしまうなら、相談なんかするんじゃなかったっ!

なんてことをしてしまったのだろう

あたしは、二人を、あたしたちの闇に引きずり込んでしまった。

ギュッと、少し牛乳の香りのする少女を抱き締めながら、詩子は声を出さず、泣き叫んだ。

どうすればいい? あたしはどうしたらいいの?

誰か…教えてよっ!!







§










シュン、何故、貴方は浩平を司のもとに導いたの?

わかってるんでしょう?

貴方は司を助けたかった。浩平に助けてもらいたかったんだ。


でもね、何故貴方は自分で助けようとしないの?
今、司の一番近くにいるのは貴方なのに
貴方は、そうやっていつも逃げ出していた。


絆さえあれば…貴方はそういったね
シュン、貴方は本当に気づいていなかったの?
あなたもまた絆を求めていたということに
あなたこそが絆を探し求めていたということに

虚無は絶望へと連なる
司も、浩平も世界に感応する者、世界に繋がる者、生まれつき世界に想いを伝える力を持った子供。
だから、あの子たちが世界に絶望してしまったら、世界を拒絶してしまったら、この世界から消えてしまう。
それでいいの?
貴方はいつも後悔してたじゃない。
いつだって、泣いてたじゃない。

わたしは怖かったんだよ、ずっと。あなたもまた消えてしまうんじゃないかって
本当に虚無に包まれていたのは、絶望していたのは貴方だったんだから。

皆を虚無が覆い隠そうとしている。絶望が押し包もうとしている。
わたしには何も出来ないの?
誰も助けてあげられないの?
司も、浩平も、茜も瑞佳も、みんな、私の子供たちなのに

お願い、わたしを拒絶しないで、わたしに絶望しないで

シュン、絆から…逃げないで


わたしはただ在るだけの存在

わたしにできることはなんなんだろう……



わたしの名前はみずか
わたしの名前はみさお

わたしの名前はあかね
わたしの名前はさえこ


どれもわたしの名前。でも違う


わたしは世界の女神

この大盟約世界の意思

そして……


見守るもの


ただ、見守るだけしかできないもの



見守る…だけしか…



いやだ…


そんなのは…


いやだ…よ…






シュン


わたしに自分で何もすることはできないよ


でもね


それでもわたしは……



わたしは…っ










    続く




   あとがき

八岐「……さえこって誰だよ」

詩子「えっとねえ、あたしたちの先生だよ。本名は南条紗江子」

八岐「……知らん」

詩子「あたしもー」

八岐「…………」

詩子「…………」

八岐「詩子ちゃん、今なんか問題発言をしたね」

詩子「あんたもね」

八岐「だって…なあ」

詩子「…ねえ」

八岐「まだ斉藤くんの方が有名だぞ」

詩子「南森とかねえ」

八岐「一応、小説では司がえいえんのせかいにいっちゃう原因になる人なんだろ?」

詩子「そうらしいねえ。でもあたし小説読んでないし〜」

八岐「…この話題は危険過ぎるのでやめよう」

詩子「いいけど、いいの?」

八岐「いいの」

詩子「でもさあ、本編も怒涛の様に暗いねえ」

八岐「君もね」

詩子「あはは、悩める女ぁ〜」

八岐「……こっちではお気楽だな」

詩子「ま、息つまってばかりじゃね。さて、次回予告いっきましょー」

八岐「へーい、さて次回――大陸に解き放ったラルヴァたちを殲滅させられたガディム だがやつの計画は着々と進められていた」

詩子「まさに大陸存亡の危機ってやつね、そして新たに明かされる真実やいかに! ってあれ? あたしたちはあれでほったらかし?」

八岐「第48話『破滅の足音』 それでは次回までさようなら〜」

詩子「て、こらー、勝手に締めるなー」

八岐「…なんだよー、別にほったらかしじゃないよー。後回しなだけだよー」

詩子「……それをほったらかしというのよねー(怒)」

八岐「…がお」

詩子「…(怒怒怒)」




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