〜狼は弦月を仰ぎ〜


「王よ」

大量の人間が集まる帝都といえど、深夜ともなれば喧騒も消え、ただ冷え冷えとした静寂が広がる。
下方に弦を向けている月を眺めていた金髪の男は、自身が見上げる天上の月にも似た金瞳を傍らに落とした。
いつの間にか銀色の毛並みの狼が此方を見据えていた。

「何故、人間相手にあのような契約を交したのだ?」

「趣味だ」

ばっさりと斬り捨てられた銀狼の呆れの篭った沈黙を受け流しながら、再び夜空を見上げる。

「確かに…ここの人間たちは王が好みそうな人種だが……」

溜息の替わりとでもいうような口調。

「正直貴方の<暇潰し>とやらは少々理解しかねるものがある」

「…そうか?」

「わざわざあやつと対立する陣営に協力するところから…だ」

「その方が面白いからな。あの芹香嬢を気に入ったのも確かだが」

再び呆れかえって沈黙する銀狼を一瞥し再び視線を戻す。

月の光が静かに降り注いでいた。



「バルトー。一度死んだものが生まれ変わったとして、そいつは生きていると言えると思うか……?」

ポツリと呟きが漏れた。
月影に紛れ込んでしまいそうな問いかけ。あまりに抽象的なその問いの意を理解できず困惑する銀狼に、金髪の男は苦笑を浮かべた。

「少し言葉が足りなかったな」

そういうと男は苦笑を収め、どこか虚ろな口調で問いかけた。

「死を経ながら輪廻を経ず、(いびつ)なる生を受けた者。そいつは果たして自分を生者と認める事が出来るだろうか……」

否、果たしてそれは問いだったのか……

ハッと息を呑んだ銀狼は、微かに唸った。

「それは…残酷な問いだぞ、王よ」

「そうか…」

小さく非難を込めた言葉を軽く流され、少し眼を細めた銀狼は、暫く沈黙すると口を開いた。

「その者がかつての自分の死を認識していないのなら、その者は紛れもない生者だと言えるだろう。たとえ始まりが自然の律と異なるものだろうと、その者が生きている事は間違いないのだから。だがその者が自らの死を取り戻したなら……」

銀狼は詰まるように言葉を区切ると、やがて詠うように先を続けた。憂鬱なる気配を漂わせながら。

「輪廻を経た生まれ変わりは、魂の浄化を受ける…キオク、ジンカク、その生命を形作ったもの総てが洗い流される。白紙に近くなった魂を素とした生まれ変わり。それは例え魂は同一でも再生した者はまず別の存在と言っても構わない。微かに前世の性癖・性格を受け継いでいたとしてもだ。だが輪廻を経なかったのなら? 魂は死する前の存在を色濃く残している。いや、そのものと言っていい。そんな者がかつての自分の死を認識したなら?」

銀狼の視線が金瞳をじっと見つめる。

「自分が死んでなお現世にしがみついている醜い死人(しびと)と思うか…それとも素直に生き返ったと考えるかは…その者の生き方次第だろう」

金髪の男は無言で頷いた。
それを見て、銀狼は目の前の男が特に答えを求めていたのではない事をあらためて確信した。

「俺は……残酷だと思うか?」

その問いが発せられるのを知っていたかのように銀狼は間をおかずに答えた。

「我々魔族の原則はただ一つ ――自らの心のままに自由に振舞うべし―― それだけだ。それとも……貴方は後悔しているのか?」

言われて…少し考え込む。微かに首を振る

「いや、後悔はしていないな。道を与えた事を後悔していない…ただ…」

困惑したように眉の端を下げる。

「思ったより愉快じゃないのかもな」

「面倒な方だな、貴方は。だが…」

銀狼の口端から鋭い牙がのぞく。そうすると表情の無い狼の顔が楽しげに見えた。

「結局はなるようにしかならぬよ。まあ、少なくとも私は楽観しているがね」

「……ふん」

ニヤリと口元を吊り上げた金髪の男――魔狼王ヴォルフ・デラ・フェンリルの表情が夜闇に隠れていく。
語る者たちと闇夜を照らしていた弦月が雲の中に姿を消そうとしていた。





やがて、月はその身を削りゆき、新月となる。
新月が示すのは終わりではなく始まり。

そう…それは新たなる…終わりのはじまりへの道標














魔法戦国群星伝




< 第二十七話 強さの頂 >




――藤田浩之帝都帰還の十日後


東鳩帝国 来栖川帝都別邸


平和ねぇ

気合の入らないぽややんとした意識のまま、そんな事を思う。
未だに戦争が続いてるとは思えないような静けさが、そこには広がっていた。

帝都の中心部から少し離れた場所に居を構える来栖川邸だからこそとも言えるが、つい先日まで帝都全体が騒然としていた事を考えれば、やはり帝都の住人にも落ち着きが戻ったと言えるのだろう。
帝都めがけて進軍していた御音軍が撤退し、戦場も国境付近に限定されているからこその落ち着きだろうが。
もっとも、帝都の主たる藤田浩之が戻ったのが一番大きいのかもしれない。


だが彼女――来栖川綾香にしてみれば、今の落ち着いた雰囲気が逆に気分を沈ませていた。
静かだからこそ、色々と考え込んでしまう。そういう事だろう。
散々いいように、御音に翻弄されてしまった身としてはじっとしている方が憂鬱になる。
わりと体育会系な性格も災いしていた。







「お客?」

燻る気持ちを少しでも晴らそうと、セリオを相手に組み手をしていた来栖川綾香は突然の来客の知らせに、繰り出していた蹴りを静止させた。

「誰よ、一体」

セリオがどこからともなく取り出したタオルで汗を拭きながら、呼吸も乱さず傍らに控える自分のメイド兼親友と顔を見合わせる。

「それが……柏木耕一様で」

「柏木様…ですか」

「耕一さんねぇ、なんの用かしら」

再びセリオと顔を見合わせ、取りあえず入ってもらうことにして自分は着替える事にした。





簡単にトレーニングウェアの上に上着を羽織るだけで身支度を調えた綾香は、執事(セバスチャンとは別の人)に導かれて入ってきた耕一の様子に息を飲んだ。
セリオの目元も微かに揺れる。
いつも温和な笑みを浮かべて穏やかな雰囲気を漂わせていた耕一の姿はなく、思いつめ、研ぎ澄まされた気配を発し、目つきにも険が窺えた。

「凄い…変わり様ね。何かあったの?」

変わったか、と自嘲気味に呟いた耕一は、勧められた椅子に座り憔悴したような視線を綾香たちに向けた。

「千鶴さんたちにも言われたよ。えらく心配もされたけどね」

何があったのか、という問いには答えない耕一に、綾香はその話題には触れない事にした。

「で? わざわざ屋敷にまで訪ねてくるなんて何の用なの?」

「うん」

肘をついて組んだ手で口元を抑えながら迷ったように口篭もっていた耕一は、意を決したように用件を切り出した。

「戦うための術を……教えて欲しいんだ」




「「はい?」

鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした綾香に、耕一は慌てて繕うように続けた。

「いや、別に直接教えてくれなくてもいいんだ。どこか紹介でもしてくれると有難いんだが」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

泡を食って立ち上がった綾香だが、セリオに「お茶をどうぞ」とカップを差し出され「あ、うん、ありがと」と間を外され椅子を直して座る。どこか落ち着かなかった耕一も、カップを受け取りセリオに小さく微笑んで見せた。

「耕一さん、ちゃんと説明してよね。貴方が何で格闘なんか習おうとするわけ? 十分強いんだから、別に必要ないじゃない」

「そう、十分強いつもりだったさ」

自嘲したように呟く耕一に、綾香は眉を顰めた。

「どういう意味?」

「負けたのさ、それも完全に…全く歯が立たなかった、完全に叩きのめされたよ」

「な!? 一体誰に!?」

テーブルを睨みつけるように言い放った耕一は驚く綾香にチラリと視線を上げて言った。

「北川…とか言ってたよ」

「誰よ、それ…」

覚えの無かった綾香は傍らのセリオに目で問い掛けた。すぐさまセリオが回答する。

「カノン皇国近衛師団長、元近衛警備隊隊長です。以前の資料では全く注目するところはありませんでしたが……先日のものみヶ原会戦で独立近衛鉄熊兵大隊の突撃を妨害したと神岸あかり様の報告にありました」

「神岸さんの?」

「はい、かなり被害を受けたと」

「ふ〜ん、そんなのが全くこれまで知られていなかったなんてね。で、どういう奴なの?」

「チャランポランな奴だった」

その問いにはセリオではなく耕一が答えた。

「そのチャランポランなまんまやられたよ」

「そんなに強かったの? 不意でも突かれたわけじゃ――」

「いや、真正面からだ。それも完全に鬼化した状態で……ククッ、その鬼化も俺の意思でなったんじゃない。奴がいうには鬼の本能が奴を恐れたからだそうだ」

「………」

「その上なんて言われたと思う? アンタは素人だから殺さない、だぜ!? しかもその言葉通りに素人、いや子供扱いされたよ」

綾香は知らず知らずに口元を吊り上げた。
目の前の女性が無意識に薄く笑みを浮かべている事には気が付かず、耕一は幾分下を向きながら続けた。

「戦い方を知らないって言われたんだ。これでも強いって自惚れてたからショックでね……ちょっとでも強くなってあいつに一泡吹かせたいんだ」

「戦い方を知らない…か」

考え込むように腕を組んだ綾香は暫くその格好のまま瞼を閉じていたが、その瞳を静かに開き耕一を見据えた。

「取りあえず、一度試合ってみない? 耕一さんの今の腕前を知りたいし」



§



既に一汗流した後だったので体は暖まっていた。

ある意味、ラッキーだったかな?

身体の内側から滲み出てくる高揚感に小さく苦笑する。
実は綾香は耕一と直接拳を交えた事がない。魔王大乱の最中に知り合って以来、幾度も試合を申し込んだものの断られ続けていた。
同じ鬼族の柳川裕也にもなんだかんだと理由をつけて断られている。
結局、伝説の鬼なる存在の力を確かめる事は出来なかった。
それが今、向こうから飛び込んできたのだ。少し浮つくのも仕方が無い。

鬼人―柏木一族。

その力の凄まじさは見て知っているつもりだ。魔王討伐戦での、耕一や柳川の恐ろしいまでの鬼気。人外の力を揮うその様。
それは確かに伝説となりうるほどの恐怖を与えるものと映った。

そう……あの時は…





来栖川邸の中庭。綾香が普段訓練の場とするこの広場の中央に二人の姿はあった。

なるほど、―戦い方を知らない― ね。

綾香は声にならない声で呟いた。
高揚していた気分がすっと冷えていくのが分かる。
今、目の前には完全に鬼化した状態で構えを取る耕一がいる。
直接対峙してみて、カノンの剣士が言ったというその言葉の意味の一端がなんとなく理解できた。

吹き上げる鬼気。それは肌を泡立たせ、精神を萎縮させる。
筋肉は硬直し、生命が死を恐れる限り逃れられない恐怖が心を染め上げていく。
人間の天敵……それが古来より伝説となっていた鬼という種族だ。
まさしくその伝説は事実と何ら変わるものではないのだろう。
この鬼気がそれを示している。

だが……

「はじめ!」

セリオの号令と共に鬼と化した耕一の巨体が旋風と共に掻き消えた。
と思う間もなくすぐ眼の前に一瞬にして姿を現す。
視認すら困難な速度で間合を詰められた。


視界を埋め尽くす恐怖の具現たる存在。


……恐怖の具現? くだらない。そんな表現など綾香に取って何の意味も無い代物だ。

常人が受ければただ身を凍らせ、死の恐怖に震えるしかない鬼気だが、正直、彼女クラスの戦気の持ち主にとってはこけおどし程度の代物に過ぎない。
綾香は知らないが、実際鬼と対峙したカノンの川澄舞もまた鬼気をもろともしていない。

物理的とすら思えるその気を、綾香は何の障害とも感じず、静謐とすら形容できる冷静さで眼前の怪物を迎え撃った。

胴体めがけて突き出される砕鉄の威力を秘めた右手。
だがそんな威力など意味は無い、拳速も意味が無い。
視線・体勢・筋肉の躍動、その総てが容易に当の一撃の軌道と発動を予測させる。
例えその威力が、速度が大砲のようだとしても、来るとわかっている弾を避けるのは至極容易だ。
しかも撃ちだされる弾は一発だけ。連携、連撃、戦いの組み立てもなにもない。ただ力任せの一撃。次の事を全く考えない、流れが無い。
本当に無意味な一撃。

綾香は拳撃をあっさり半身になって避けると、その大木の太さを供えた鬼の腕を無造作に掴んだ。
そして耕一がギョッとする間もなくそのまま懐に潜り込む。
恐らく耕一には綾香が消えたように見えただろう。
そして綾香は相手を視界から見失ったという認識に耕一の思考と身体が反応するより速く、右の掌底を鬼人の顎目掛けて打ち上げた。

鈍い音とともに脳髄を縦に揺さぶられ、一瞬耕一の意識が飛ぶ。

綾香は脳震盪を起こして揺らぐ巨体に再度一歩踏み込む。左足で震脚。地面が踏み割られる。そして、全身で螺旋状に巡らせた力を左掌底で爆発させた。

流連掌徹(りゅうれんしょうてつ)ッ!」

ドン、というくぐもった音が響く。
巨大な鉄球を思わせる衝撃は銃弾すら通さない鋼鉄の皮膚を透徹し、柔らかい臓腑を叩きのめした。


唐突に静けさが舞い降りた。
綾香は左掌を耕一の腹に当てたまま、耕一は綾香に覆い被さるような体勢のまま、沈黙のなかに静止する。

「う…がぁ」

呻き声

それと同時に綾香が一歩退き、身を翻すとスタスタとその場を後にした。
その背後で……鬼人の巨体が力無く、大地へと沈んだ。



「素晴らしいです」

セリオはその光景に小さく呟いた。
その眼には憧憬に近いモノが浮かんでいた。

「前からでしたけど、技の名前を叫びながら戦うなんて…流石は綾香さま、恥ずかしい事は気にしなければOKなのですね」

「聞こえてるわよぉ、セリオォォ!!」



§



「う、ううっ」

呻き声を上げながら目を開く。視界にはよく晴れた空が広がっていた。
何故か、それを苛立たしく感じた。

「気が付いた?」

掛けられた声の方向に顔を向けると、既に普段着に着替えてしまっている綾香の姿が目に入った。
ぼんやりと自分を見下ろす女を眺め、ようやく自分が又も完膚なきまでに叩きのめされた事に気付き愕然とする。
耕一は唇を噛み切らんばかりに強く噛み締めた。

心のどこかであの男だけが特別に強いと思い込んでいた事に気が付いたのだ。
結局まだ自分の強さに自惚れていた事を理解したのだ。
なんという……愚かさ。

綾香はスタスタと倒れている耕一に近づくと、傍らにしゃがみ込んだ。
無造作に敗者となった男の顔を覗き込む。

「耕一さん。確かにアナタ、ド素人だわ」

「……!!」

容赦の無い一言に言葉も無い耕一。
その様子に頓着する風でもなく綾香は続けた。

「鬼って種族は確かに凄いわ。速さ・力・動物的な野生の勘・戦闘センス、その全てが普通の人間から桁外れに上回っている。でもねえ…」

綾香は嘆息すると立ち上がり腕を組んで続けた。

「幾ら速くても、予備動作が大きいもんだから次の動作が丸わかり。しかも攻撃に流れが無い。その総てが点でしかなく線とならない。それじゃ当たらないわ。当たらなければ力が幾らあっても意味もない。剣や銃弾が通じない鋼の肉体とやらも余り意味はないわね。今私がやったみたいな透徹系の業なら内部に直接衝撃を加えられるし、わざわざそんな技を使わなくても、頭を揺らせば意識を飛ばせる。急所を的確に突けばそれだけで倒せる。相手が素手じゃないなら尚更意味ないわ。魔剣の類ならそれこそ鋼を紙の様に斬れるし、達人なら普通の剣や刀で鉄ぐらい斬るわ」

「………」

反論も出来ずに黙り込む耕一。

「要はいくら元のポンテンシャルが凄くても、それを使いきれてないのね。なまじ人としての意識を持ってるのも悪いかも…。鬼という怪物の力を持っているのは単なる素人の人間。野生の獣にもなれず、人の戦闘技術も持たない。まだ暴走してる方が相手としては厄介だわ」

「鬼の本能に意識を乗っ取られてた方が強いっていうのか?」

「…はっきり言えばね。あえて凶暴な野生にすべてを委ねたほうが、人としての弱点を持たずに済む。どうやら柳川さんはそこらへん、わかってるようね。葵を相手に随分と鍛えてるらしいし。彼は人の技術を高める事で鬼の力を最大限利用する事を選んだんだわ。恐らく今の貴方じゃ彼には勝てないでしょうね……いえ、正直今のあなた程度じゃ、勝てる相手を探す方が難しいかもね」

「……」

「綾香さま…それは言い過ぎでは?」

「そうかしら? そうね、私たち一六翼将の面々で個人的武勇を誇ってる連中の名前挙げてみなさいよ」

「個人的にお強い力を持つ方々ですか? そうですね、綾香さまは別としても…姫川琴音さま、宮内レミィさま、柳川祐也さま、松原葵さま、坂下好恵さま、セバスチャンさまなどが…」

「今名前が出た連中、それに浩之なら、耕一さん…貴方を瞬殺できるわよ」

全く容赦のない痛烈なる一言に耕一は身を震わした。

「そう……なのか?」

ええ、と答えながら綾香は辛辣に言い放った。

「貴方を倒したカノンの剣士。どれだけ強いかは直接見てないから分からないけど。そいつを特別と考えない方がいいわ」

「…………」

様々な感情を渦巻かせて黙り込んだ耕一に綾香はあえて軽い調子で言った。

「私が基礎を習った師匠を紹介するわ。好き勝手やりたかったから直ぐに飛び出しちゃったけど、とにかく実戦派な凄腕の上に教え上手よ。のんべえで、ふざけた性格なのが欠点だけどね」

「……ああ、頼む」

返事をしたものの動こうとしない耕一を残して屋内に戻った綾香にセリオが話し掛けた。

「綾香様、嬉しそうですね」

「ん? そう見える?」

「はい」

ふふ、と笑みを零すと綾香は未だに寝そべっている耕一を振り返った。

「耕一さん、もっと強くなるわね」

「それが嬉しいんですか?」

「まあね、それと……」

セリオに向き直りニヤリと笑う。

「ほんとはね、耕一さんに勝つってのはやっぱり凄いのよ。まあうちの連中は化け物ぞろいだからね。今の耕一さん程度なら勝てるようなのがゴロゴロしてるけど…でもカノンにもそれだけの腕の持ち主がいるんだなってね。多分、そいつ一人じゃないわ。他にも何人もいるはずよ」

鼻歌でも歌いださんばかりの綾香にセリオは内心で呟いた。

この方も本当に戦闘狂(バトル・マニア)の極みですね。困った人です。

ただ…自分の主が普段の快活なる雰囲気を取り戻していることが嬉しかった。
彼女は…来栖川綾香は常に不敵な、陽気な気配を纏っていてこその彼女なのだから。






    続く






  あとがき

浩平「あらら」

八岐「なにか?」

浩平「いや、鬼ってこの話じゃ大した事無いのか? あっさり綾香にやられて…」

八岐「まあね。元から在る力だけじゃダメ。日々の修練なしには本当に強い人には勝てないって事だよ。耕一に関しては登場人物の強さの位置関係からして意外と低い位置に属してる。彼は元の力は強いけど、それを扱う能力を鍛えてないんだ。対して柳川はエルクゥとしての力は耕一に劣るけど、戦う術というものを収得してるので今耕一と立ち会えばまず楽勝で勝てる。エルクゥの力自体は最強なんだけどねえ。ほら、耕一が完全にエルクゥと化して暴走したときは相沢くんも苦戦してただろ」
浩平「んー、それじゃあ耕一をあっさり一蹴した北川ってどの位の強さなんだ」

八岐「こいつは活躍ばっかさせてるからなぁ(汗) 無茶苦茶強く見えるかもしれないけど、剣士としての北川より強いヤツは他にも結構いるよ」

浩平「そうなのか?」

八岐「そうなのです。剣士としてはね」

浩平「その言い方がまた……」

八岐「では次回予告 第28話『彼女はその小さな手をかざして』…久々にあゆや真琴たちの登場だ。そろそろあゆにも動き始めてもらわないとね」

浩平「そろそろ…ねぇ」

八岐「それでは、まだ次回に。さようなら〜」


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