仮面戦記KANON 第一話「動き始めた事態」

                 


全身を襲った激痛はいまだに引かない。それどころか今度は灼熱感までもが祐一の体を襲った。
そんな祐一の様子を嘲笑うかのように仮面の男――エプシロンが近づいてくる。ただ無造作に近づいてくる。
「君も運が無い。奇跡さえ起こらなければ…いや、君が奇跡さえ起こさなければ、君は死ぬことはなかったのに」
「き…せき……だ…と?」
全身を駆け巡る激痛と灼熱感をこらえながら何とか祐一は喉から声を絞り出す
「月宮あゆ。沢渡真琴。確か君の家の居候だったよね?」
「―――っ!」
一瞬呼吸が止まる。祐一の瞳が驚愕に見開かれる。
それとほぼ同時に祐一の脳裏に二人の顔が鮮明に映し出された。地面に倒れたままの体制で祐一は首だけを動かしエプシロンを睨みつけた。
そんな祐一の姿を見てエプシロンはクスリ、と笑う。おそらく仮面の下の表情は喜の感情一色に染まっていることだろう。
「さて、二人今頃どうなってるかな?」
祐一の瞳に憤激の色が宿る。全身を蝕む激痛などむししてうつぶせの体制から地面に片肘を付き体コマのように回転させ、ユプシロン
に足払いを放つ。
完全に不意を突かれたエプシロンだったが、訓練の結果というべきか。とっさに後方へ跳躍する。
エプシロンが後方へ跳躍した瞬間、祐一は瞬時起き上がる。
だがさすがに、不意をうった一撃だけあってエプシロンは着地した瞬間に体制を崩した。
その瞬間を祐一は見逃さず即座に間合いをつめ、エプシロンの顔へとたたきつけるべくして右腕を振りかぶる。エプシロンは来るべく
攻撃に両腕を顔の前で交差させる。<br>が、その行動は無意味だった。エプシロンの顔めがけてたたきつけられた攻撃は、両腕の
防御を突き破りエプシロンの右頬。ちょうど仮面で覆われていない場所へと、突き刺さる。
だが、わずかに後退しただけで、全く効いていないようだった。だが祐一はそんなことはお構いなしに怒声をたたきつける。祐一自体
何を言ったのか自覚していないだろう。ただ、怒りに任せて怒声を叩きつける。
「冗談だよ。二人は今頃、水瀬親子と一緒に君の帰りをまってる」
何がおかしいのかエプシロンは祐一に視線を向けクスリ、と笑う
「それにしても、君のイレギュラーはこの程度とはね。笑わせてくれるよ」
祐一の怒声にはお構いなしといった様子で、肩を震わせ声を押し殺して笑う。
笑いながらもついさっき、相棒に言われた言葉が脳裏に浮かぶ。
《少々のイレギュラーなら君だけでも切り抜けられるだろう》
―これが、イレギュラーだって。この程度がイレギュラーだというのか!
「下らない。酷く下らない。」
不機嫌そうに言い放った後、突如としてエプシロンの姿が祐一の視界から消失した。
「なっ!消え―」
祐一の驚愕の言葉は中断させられた。なぜなら、いきなり眼前に現れたエプシロンによって、喉笛を掴まれたからだ。
「チェックメイトってやつかい」
片手で祐一の喉笛をつかんだままもちあげる。エプシロンの口調には完全に余裕が入り混じっていた。
「このまま君の喉笛を握りつぶすか、君の体に電気を流せば君は間違いなく死ぬ」
一拍の間。
「でも俺はそうしない。なぜなら、君には疑問が残っているから。俺はね、疑問を持たせたままターゲットに死んで欲しくないんだ。
だから、君の疑問には答えよう。僕が答えられる範囲でならね」
そういうと同時に、祐一の喉笛をつかんでいる手のが少しだけ緩む。
だが、それでもまだ苦しいらしい。少し声がかすれている。
「マス…キーレン…ってのは何だ?」
「答えよう。マスキーレンというのはマスカレイドが選んだ人のこと」
「ちなみに、マスカレイドっていうのは異世界で作られたもので、僕が今つけているものがこれにあたる。そして、マスカレイドには、
特別な能力が込められている。例えば、俺のマスカレイドの能力は電気を発生させることができる。僕はこの能力をルーフグレンツ呼んで
いる。輝きの叫び≠ニいう意味さ」
そう言うと。エプシロンは自分の右手に電気を流す。
パチッ、と言う音を立てて電気が一点に集まり、ちょうど野球ボールぐらいの大きさの電気の塊が出現した。
「この能力を応用すればこんなこともできる。さて、他に質問は?」
「……」
「質問は終わりのようだね。なら、僕から最後に一つ。君が僕に殺される最大の理由は、君がマスカレイドの運命操作をうけているから。
「マスカレイドの運命操作を受けている人間は必ずマスキーレンに覚醒する。それこそ、その人間を殺さない限りね」
「………俺は死にたくない!まだ死んでたまるかよ!」
「この際、君の意思というのは問題じゃない。じゃあね…バイバイ」
シュパッ!! 刹那――祐一の喉笛をつかんでいた腕が肘の当たりから何かによって切断される。
祐一の体とエプシロンの右腕がいきなりドサリと、地面に落ちる。そして、血飛沫が舞った。
エプシロンの反応は迅速だった。地面に落ちた自分の腕をすぐさま拾い、次の攻撃を回避するために後方へと跳躍する。
一瞬前までエプシロンがいた空間を何かが通りぬける。
バチッ!という音を立ててエプシロンの体が電気の帯に包まれる。
「成る程な。自分の体に、電気を流すことによって痛覚を麻痺させたか」
いつの間にそこに居たのか、祐一が視線を向けた先には黒いフードつきのローブを身に纏っている男が立っていた。
そして、彼の顔は青いマスカレイドによ覆われていた。
何がおかしいのかエプシロンは青い仮面の男に視線を向けクスリ、と笑う。
「水を操る能力。そうか、君かリヴァイアサン」
「ここは退け。いくら痛覚を麻痺させたからといってもお前は血を流しすぎている。お前は俺に勝てない」
「本当にそう思うのかな?」
「俺は戦う気はない。だが、そいつを殺されるわけにはいかない。戦うというのなら俺も全力でやる」
「ターゲットを殺す。それが僕のたちの仕事だから」
「じゃあ、戦うしかないな…」
ゴボッ、という音がしたのと、それは同時に起こった。リヴァイアサンの周りの地面から次々と水が噴出する。「ブラオシュラーク(青ざめた鼓動)=v
リヴァイアサンの手に水が集まり、それは瞬時に水の刃へと姿を変えた」
「全く厄介な能力だよね……尤も、君を殺せば終わりでけど」
エプシロンの周りの空気が帯電し無数の電気の塊が出現する。
「君を生かしておくと後々面倒だからね。君はここで殺す!」
「それはこっちの台詞だ!お前を始末する!」
裂帛の気合と共にリヴァイアサンが駆け出す。いや、駆け出そうとした寸前でとまる。
「な、なんだよ!これ!」
祐一の素っ頓狂な声に反応して二人は祐一の方を見た。
二人の視界に最初に入ってきたのは、まぶしいばかりの光だった。その輝きは、祐一が手にしている仮面から発せられていた。
正確に言えば、輝きを発していたのはマカレイドについている宝石のようなものからだった。
「マナクリスタルが輝いている。まさか…」
祐一が手にしているマスカレイドの無数のひびが入る。
「馬鹿な!早すぎる!マスカレイドと接触てまだ一日も経ってないのに!」
さらに、マスカレイドにひびが入る。
ひびがマスカレイド全体にいきわたる。そして、マスカレイドがついに音を立てて砕け散った。
『闘え。貴様の命燃え尽きるまで』
「イレギュラーだ!くそ、なら二人まとめて殺すまでだ」
エプシロンの周りを浮遊していた雷弾が明確な目的を持って、祐一を焼き殺すべくして。
閃光の弾丸が祐一に炸裂する。



あとがき
メ「どうも皆様こんにちわ。メイジです」
エ「どうも皆様こんにちは。突然右腕を切り落とされてしまったエプシロンです」
エ「で、一つ聞きたいことがあるんだけど」
メ「なに?」
エ「次回予告は?」
メ「廃止しました」
エ「何故に!」
メ「あれは序章だったので特別に次回予告つけてみました」
エ「だからって、いきなり廃止はないでしょう」
メ「まあいいじゃないか。さて次回は祐一君がマスキーレンに覚醒します」
エ「この流れでしなきゃ反則でしょうが」
メ「それはさておき、駄文にお付き合いいただきありがとうございました」
エ「それでは、また次回までさようなら」   



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