“何の気なしにこのSSを覗いてしまった好奇心旺盛な貴方へ”

  このSSはKanonのSSです。が、野郎ばっかり出てきます。
  おなごが出てこないSSなんぞ嫌じゃ、と言う方はさりげなく戻ってください。
  
  このSSはKanonのSSです。が、メインは祐一、北川、そして久瀬です。
  久瀬が悪役じゃないSSなんざ嫌じゃ、と言う方は有無を言わず戻ってください。
  
  このSSはKanonのSSです。が、シリアス、ギャグな要素はどこにもありません。
  オチが見当たらないSSなんて嫌じゃ、と言う方はGo to Back OK?

  
  以上の3点で、特にいいんじゃない、と思った人だけこの先をお読みください。
  尚、このSSの内容について不満があっても僕は知ったこっちゃないのでご注意を。
  




   野郎だけの井戸端会議
         一日の過ごし方編(改訂版)・前編





 ある晴れた日、屋上にて




「あ〜、天気がいいなぁ」

と俺は空を見ながら呟いた。ちなみに今は昼休みの屋上である。
五月晴れとでも言うのだろうか? 空は吸い込まれそうな青が拡がっている。雲ひとつ無い。
何故、五月晴れかと言うと今は五月だからだ。
ちなみに俺は高校3年に無事進級できた。
ここに居る2人と名雪、香里、あゆとは同じクラスになった。
あゆと言えば、3年になっていきなり転校してきたのには驚いた。何でも秋子さんが黒幕らしい。
真琴も2年の方で転校してきたらしい。栞、美汐と同じクラスだと喜んでいた。
舞、佐佑理さんは近くの大学に入学している。そして舞と佐佑理さんは一緒に暮らしている。
まぁ、よくある話だが、全員のENDかつ誰ともくっついていないと言う非常においしい立場らしい。
………ていうか何でみんな同じクラスになったんだろう? 作者の陰謀を感じるぞ。

「相沢〜、前置きが長すぎるぞ〜」

横でウダウダ言っているのが、晴れてまた同じクラスになった北川潤。
こいつとは前も同じクラスだっただけあって、よく一緒につるんでいる。

「せっかく、久しぶりにここに集まったんだからよ〜」

そうなのだ。ここ、屋上は我々3人の秘密の場所としてたまに集まっているのだが、
ここには実に一週間ぶりに来る事になる。
6人の視線をかいくぐるのは容易な事ではないのだ。

「まったくだ。僕も何かと忙しいんだからな」

と言ってきたのは、悪名高き久瀬 翔(くぜ かける)。あの有名なKanon唯一の悪役だ。

「嫌な言い方するな! …気にしているんだからな」

あ、やっぱり気にしていたのか…
コイツと友達になったのは卒業式の時、在校生代表で答辞をしたコイツは全校生徒が見ている前で、
舞と佐佑理さんに謝ったのだ。それも土下座までして。
そして卒業生代表で送辞をした佐佑理さんがコイツの事を許した…
この事はみんなに“久瀬会心の巻”と言われ、この時最高視聴率が60%に…

「なってないなってない」
「その前に“久瀬会心の巻”って何だ? そんな風に言われていたのか?」

いや、言われてません。
後から聞いた話だと、今までの自分を変えたかったらしい…その所為もあって親に勘当されたらしいが。
それで3年になって同じクラスになったのも幸いして急激に仲良くなった。
……ん? 何で俺のナレーションに突っ込みが入るんだ?

「そりゃあ、お前が全部喋っているからだろ」

何ですと!! ナレーションを喋っているですと!!

「いいから、かっこをつけて喋ろ」
「へ〜い」

北川の指摘に仕方なく俺はかっこをつけて喋る事にした。
俺と北川にとってこんな会話は最早日常茶飯事である。
久瀬もその事がわかっている分、やれやれと一つ溜息をつくと俺の方を睨みながら言ってきた。

「まったく……君が普段、僕をどう思っているか良くわかったよ」

「どう思っているかだって? そりゃ決まっているだろ……なぁ?」

そう言って隣の北川に問うと、北川も頷いた。
どうやら思っている事は同じらしい。

「それは興味あるな。君達は普段、僕の事をどう思っているんだい?」
「「貴重な金ヅル!!」」

見事に即答、しかもハモッた……さすが北川、俺の期待を裏切らない男だ。
みると久瀬は遠くでいじけている。
屋上の隅でしゃがみ、指でのの字を書いている。……うむ、見事ないじけっぷりだ。
花マルものだな。

「じょ、冗談だって……なぁ、相沢?」

それを見て、慌ててフォローを入れる北川。基本的にコイツは良いヤツなのだ。
北川に倣い俺もフォローを入れる。

「そうそう……金を借りる時は有るけど、そんな風には思ってないって」

現在、俺は何かあるたびに百花屋に募金をしている。しかも8人分だ!!
こんな事神が許そうとも、俺のサイフは許しやがらない。そこで久瀬金融の出番なのだ。
バイトをしている事はしているが、困った時にはとっても便利なのだ♪

「便利なのだ♪ じゃない!! さっさと貸した金を返してくれ!!」

いつの間にか久瀬にフォローを入れるのが借金の返済要請になってしまっていた。
現在手持ちも少なく、借金など返せるわけもない。
久瀬から目を逸らしつつ、いつもの台詞を吐く。

「ちょっと待ってろって、バイト代が入り次第返すから……」
「それは先月も、先々月も聞いたような気がしたが? どうかね、相沢君?」

久瀬の猛攻に一瞬怯む俺。やはり毎回毎回同じ台詞では芸が無さ過ぎるか……
しかし過ぎた事を言っても仕方が無い。
というか、仕方が無いのは今の現状である。
もう開き直るというよりもよりもむしろ自棄になって俺は叫んでいた。

「返そうとはしたさ!! けど、その前に鉄壁の包囲網があるんだ!!」

そうなのだ。バイト代が入る日は必ず8人全員を奢ってやる羽目になるのだ。
それでバイト代は雀の涙程も残っていない。実に不毛な労働だ。

今まで俺と久瀬のやりとりを横で楽しそうに見ていた北川は、溜息をつくと投げやりな調子で言ってきた。

「……ハーレム状態も楽じゃないねぇ」

その北川の言葉に久瀬も同意する。

「まったくだ。今に全部搾り取られるな、あの調子だと」

今の8人に囲まれている現状……人はそれを“相沢ハーレム”と呼ぶ!!
しかし、たとえ8人に囲まれてウッハウハとは言え、そんな状態が続いたら体が持たない。
そこで、たまに隙を見ては3人で屋上で昼飯を食べているのだ。
屋上は立ち入り禁止だ。鍵も掛かっているし誰かが入ってくる心配も無い。
で、何で俺たち3人が入ってこられるのか、と言うと生徒会長である久瀬が鍵を持っているからだ。
ちなみに久瀬は俺たちの推薦もあって、無事生徒会長に当選できた。

「よっ、流石“悪徳会長”!!」
「だから、“悪徳会長”って言うな!!」

ちなみに“悪徳会長”とは久瀬のあだ名である。まぁ、つけたのは俺だけど。
こんなあだ名が呼ばれるのはコイツがみんなに信頼されている証拠だろう。
みんなが親しみを込めて“悪徳会長”と呼ぶのだ。

「嬉しくない……全然嬉しくない……」

頭を抱えて唸る久瀬。それほどまでにこのあだ名はお気に召さないらしい。
なんとも贅沢なヤツだ。
そしてまた、そんな久瀬を見かねて北川がフォローする。

「いいじゃないか、よく噂聞くぞ? お前、年下に人気あるんだぜ?」

コイツは独自の妙なネットワークを持っているので注意が必要だ。
逆に味方につけると非常に役に立つヤツでもある。

「相沢、お前の言い方は何か刺があるな……」

何故かジト目になった北川が言ってきた。

「いや、そんな事は無いぞ」

俺がラブレター貰ったのがバラされて、奢りアンド半殺しにされたのなんか全然根に持ってないぞ。

「あれは悪かったよ……あの所為で他のコ、お前に近寄んないもんな……」
「ハイ、アレは地獄を生きながら体験させてもらいました」

生きているのが夢のようです。

「今の状況からうかつに動けないもんな……」
「ハイ、誰かに決めようもんなら、確実に死人が出ます」

地雷に囲まれながら生きているようなもんです。
ちなみに死人とは俺がなる確率が1.02倍でダントツの一番人気です。

「……モテすぎんのも困りもんだな」
「まったくだ。人生、平凡が一番だね」

しみじみと頷きあうは北川と久瀬の自称平凡コンビ。
俺はそんな自称平凡コンビに向かって言った。

「お前等は良いよな……知らんうちに彼女作りやがって……」

そうなのだ。コイツ等は俺がオゴリやらなにやらで苦労しているうちに彼女作りやがったのだ。
正にゴール前でまくられた哀れな逃げ馬なのだ、俺は。

「その例えはわからんでもないが……そんな事俺の知ったこっちゃないし。なあ、久瀬?」
「ああ。君は君でおいしい思いをしているんだから良いじゃないか」

彼女を持っているという立場の違いからか何か余裕というものを感じられた。
味方がいないこの状況でたまらず俺は空に向かって叫ぶ。

「くっ、誰か俺のこの思いをわかってくれるヤツは居ないのか?」
「俺が知っているのでも2、3人って所だな」

俺の涙まじりの問いに即答する北川。

「え? 居んの?」
「へぇ……居る所には居るんだねぇ」

と妙な感心をする久瀬。それにしても居るのか……ビックリだ。

「それよりも、だ。久瀬君」
「な、何だい? ……北川君?」
「お前さん、生徒会室でイチャイチャとしてたそうじゃないか?
 書記長が嘆いてたぜ? 生徒会長と副会長が仕事してくれない、ってな」
「な、何をバカな事を!!」

いつの間にか北川の攻撃の手は久瀬に向かっていた。
この久瀬の慌てっぷりは素晴らしいものがある。去年の久瀬からは考えられない。
……それが良いんだか悪いんだかわからないけどな。
しかしいまこそ必勝の時、ここに乗じずは相沢の名折れ!!
俺はニヤニヤしながら相方に向かって問いかける。

「へ〜え、そうなんですか、北川さん? ここの生徒会長がそんな事を?」
「どうやらそうらしいですよ、相沢さん? まったくここの生徒会長ときたら」

「「と〜んだ“悪徳会長”ですこと。オーホッホッホッホ!!」」

と2人でマダム笑いをする。この辺のコンビネーションはばっちりだ。
そう、久瀬の彼女はここの生徒会の副会長なのだ。
おまけに彼女の尻に敷かれっぱなしだったりする。
ここの生徒は生徒会の本当のボスは誰か、ちゃんと知っているのだ。

「……ほっといてくれ」

渋面を作って呟く久瀬。こんな表情も去年の久瀬からは考えられないものだ。
それが嬉しいのかニヤニヤしながら北川が追い討ちをかけに行く。

「いや、ラブラブで結構。君も若いねぇ」

と、ここで今まで一方的にやられていた久瀬が北川に向かって反撃に出た。

「何を!! そういう君だって彼女のプレゼント買うために必死でバイトしてただろう」
「うっ……何故それを?」
「世界は狭いのだよ。北川君」

ちなみに北川の彼女は隣のクラスの学級委員。
まぁ、そんなことはどうでもいいか。

「やっぱり、な〜んか刺が有るな……」
「気にするな。……まったくお2人ともラブラブで結構なこった。うらやましいぞ」
「うらやましいって……お前には」
「言われたくないのだが」

と言って、2人で頷きあう自称平凡コンビ。
そしてそのまま、3人で空を見上げた。空は未だ雲ひとつ無い。嫌になるほど快晴だ。

「あ〜あ、なんでGW明けに学校来なきゃなんないんだ?」
「それはGWが明けたからだろう」

愚痴る北川に正論を返す久瀬。
そんなことわかってるとばかりに、盛大に溜息をつくと北川はまた愚痴った。

「そりゃそうだ……でも、ダルいよな……」
「まったくだ。このまま午後の授業サボりたいよな……」

と言いながら腕時計を見る俺。そろそろ予鈴がなる時間だ。教室に戻らないと。

「そろそろ戻ろうぜ」
「え〜、いいじゃんサボろうぜ? なあ、久瀬?」

とここで久瀬に振る北川。バカなヤツだ。俺たちの仲間となったとは言え、久瀬は久瀬。
頭の固いのは変わっていない。サボるなんて許すはずが無いだろう。

「いいんじゃないか? サボっても」

「何ですと!!」

今何とおっしゃいました? 見ると北川も目を丸くしている。
久瀬がサボるなんて言うなんて……お父さんは悲しいぞ。

「嫌な事言うな……僕のことなんだと思っているんだ?」
「「“悪徳会長”だろ」」

ここでも見事なコンビネーションを発揮する俺と北川。
見ると久瀬は頭を抱えている。

「……もういい。教室に帰ろう」

と言って扉に向かって歩き出す久瀬。それを慌てて止める俺と北川。

「悪かったって・・・なあ、相沢?」
「ああ、悪かった。でも、なんでお前の口からサボるなんて言葉が出たんだ?」

俺の言葉を聞き、久瀬は不思議そうに俺たちに問いかけた。

「知らないのか?」
「ん、何をだ?」

北川の答えを聞くと久瀬はやれやれ、と嘆息する。

「はぁ……、まったく君達は授業をきちんと聞いてないな?」
「当然」

久瀬の言葉に胸を張って即答する。ちなみに俺は気が向いたときしか真面目に授業を受けていない。
その気が向いた時も今年になって数えるほどしかないが。

「ま、時と場合によるが……ちなみに次の授業は爆睡してるけど?」

と、北川。コイツの場合は受ける授業と受けない授業がちゃんと決まっている。
受ける時は香里も驚くくらい真面目に受けているのだが……
受けない時は俺が驚くくらい不真面目なのだ。

俺たちの答えを聞くと久瀬はまた頭を抱えるようにしながら言った。

「はぁ……次の授業は自習だ。この前の授業の時に言っていたぞ?」
「な〜る。だからサボってもOKってわけね……よっと」

と言って寝っ転がる北川。俺もそれに習い寝っ転がった。

「やれやれ、だな」

と言って久瀬も寝っ転がり、3人で寝る体勢になった。
そのまま、しばらく会話の無い状態になる。

「なぁ?」

と、いきなり久瀬が話し出した。

「空って良く自由の象徴みたいに言われるよな? それってどう思う?」

いきなりにしては何やら哲学的な質問だったので俺は久瀬に向かって言った。

「何だよ、突然」
「まぁ、いいじゃないか。で、どう思う?」

再度久瀬に言われて考え込む俺と北川。そして、北川が自分の意見を言った。

「ま、確かにそういう事はよく言うな」

次いで俺も久瀬の質問に対し、自分の意見を言った。

「空を飛ぶ=自由、みたいな事も言うしな」

俺と北川の意見を聞き満足そうに頷くと久瀬は自分の意見を言った。

「だろ? でも、僕はそうとは思えないんだ。空=自由とは、ね」

久瀬の言葉に俺は思わず聞き返していた。

「どういう事なんだ?」
「僕には空は大きな地球と言う監獄の鉄格子に思えてならないんだよ。
 人間はこの地球と言う監獄で重力と言う足かせをつけて生きていく……
 そう思うと空=自由には思えない」

その久瀬の考えに北川は軽口をたたく。

「さっすが生徒会長、考えてる事が深いねぇ」
「茶化すなよ。それで、君達はどう思う?」

久瀬に意見を求められた俺達はまた考え込む。
そして俺が久瀬の考えを元に自分の思った事を素直に述べた。

「そうだな……そんな事考えた事も無かったな……
 でも、俺はこう思うぜ? 監獄に居るからこそ外の景色にあこがれる。そして外の景色を写すのが……」
「空、だと?」

黙って俺の話を聞いていた久瀬がポツリと呟く。

「ま、そんなトコだ。監獄って言い方はちょっと何だけどな」
「なるほど。……それで、北川。君はどう思う?」

話を振られた北川はふむ、と一度唸ると言った。

「ンな事言われてもな……俺たちは自力で空を飛べないんだし、そんな事考えても仕方が無い。
 自由が欲しかったら自分で何とかしろ、って所か」
「要は、難しい事考えてる暇があったら動け、か」
「そーゆーこと」
「それが一番かもな」
「案外、そうなのかもしれないね」

そう言って3人でひとしきり笑った後、また無言の時間がやってきた。
俺はふと浮かんだ疑問を聞いてみる事にした。

「なぁ、久瀬?」
「何だい?」
「さっきの質問……なんであんな事聞こうと思った?」
「特に何も。強いて言えば暇だったから、かな」
「あっ、そ」

再び訪れる無言の時間。それぞれがボーっとしたりしてこの時間を楽しんでいた。
その時、屋上の扉が何者かによって開けられた。
誰だ? この場所は誰にも知られてないはず……
と思い、顔を上げると。そこに居たのは……

「よぅ、斉藤。どうしたんだ? 今、授業中だろ」

入ってきた男に声をかける北川。
そう、入ってきたのは斉藤明彦(さいとうあきひこ)だった。
そういえばコイツもこの場所知ってるんだった……
コイツは部活をやっているのでつるむ時間はあまり無いが俺の貴重な友達の1人だ。
何でも、バスケ部のエースらしい。……偉そうに。

「相沢、もしかして俺の事嫌いか? 俺とお前の友情はそんなもんなのか?」
「はいはい、俺が悪かったよ。それにしても、何でこんな所に?」
「相沢君。僕たちの言うセリフじゃないよ」
「そうだぞ。授業サボりやがって。自習中だけど」

苦笑しながら言う久瀬の言葉にうんうんと頷きながら斉藤が言う。
コイツも俺たちと同じクラス。と言う事は今は自習中である。

「まぁ、立ち話もなんだし座れよ?」
「そうそう。茶は無いけどな」
「そうか? それじゃお言葉に甘えるとするか」

北川と俺の言葉に頷き座る斉藤。そのまま後ろに倒れ寝る体制に。
ここでふと思い出したように斉藤が言った。

「あ、そうだ。相沢、いつもの面子がお前の事血眼になって捜してたぞ」

いつもの面子とはこのSSでは出てこないKanonヒロイン達の事だ。

「やっぱりか……」
「いつもの事とは言え、ご愁傷様」
「涙が出てきそうだよ」

本気で頭を抱える俺に北川と久瀬が勝手な事を言う。
俺はそんな二人を睨む。

「お前等……他人事だと思って……あぁ、さようなら福沢さん……」

そう言って、これから戦地に赴く福沢さんに心の中で敬礼する。
そして、これから地獄に招待される俺に敬礼する3人。
あ、ホントに涙が出てきました。

「よし、幸運にも明日は休みだ! 今日はとことん飲むぞ!!」

と言った途端、またかと言う顔をした久瀬。
他の2人は乗り気である。

「それじゃ、会場はいつもの久瀬ん家で……いいだろ?」
「ああ……他に選択肢が無いんだろ? いいよ。もう諦めたし」

と斉藤の提案に何かを悟ったような顔をする久瀬。
前にもちょっと言ったと思うが彼は今訳有って勘当の身。
すぐそこのマンションで一人暮らしなのだ。
でも、マンションと言った辺りが金持ちって感じなのだが。

「さすがに親が居る所で騒げんし……しょうがないって」
「あぁ、わかってるさ……」

北川の言葉に不承不承頷く久瀬。
今まで久瀬の家以外でもたびたび宴会は行われた。
しかし、どれもが乱入者の出現により宴会の続行を断念するという事態に陥ったのだ。
この乱入者というのは……賢明な読者ならおわかりだろう。そう、今回出番のない彼女達だ。
久瀬の家は完全防音で近所迷惑にならないし、入り口が音声認識という素晴らしい長所を持っている。
これで久瀬の部屋まで名雪たちが来る事も無い。正にパラダイスなのだ!!

「ふぅ……そうなると問題が一つ」
「だな。彼女達の目を盗んでいかに準備するか、だ」

頷きあう久瀬と北川。
名雪たちは俺が久瀬の家に泊まると知ったら止めてくるだろう。
しかし、俺も健全な高校生。徹夜で宴会したいんだ!!

「オペレーションBでいいんじゃないか?」
「やはりそれしかないな……」

斉藤の意見に頷く久瀬。俺はそんな3人に頭を垂れる。

「ご迷惑おかけします……」

今日の計画は決まった。
そしてこういう時は決まって北川が指示を出す

「それじゃ、本日13:30を持ってオペレーションBを発動します」
「「「了解」」」

そして俺たちの昼はいつものように終わりを告げるのだった。





〜〜あとがき〜〜

  これは去年の夏に書いた同名のSSを加筆・修正したものです。
  何だって今更? とか思う人がいるかもしれませんが、僕もそう思います。
  とりあえずこの話が“Kanonアフター・はせがーVer.”のベースですね。
  だからという訳でもないんですが、今この話を見直したのは意味がある……かも?

  とりあえず、この話の続きもよろしくです。
  
                                          はせがー

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