無節操とも取れるほどに輝く太陽の下、不釣合いなほどに白い肌の少女がその赤い瞳を大きく開いて動きを止める。対して向かい合う女は目を細め、口を僅かに笑みの形へと変える。

 大胆不敵。
 誰もが目の前の二人の女性に同じ評価を下すだろう。
 避けられた戦いを避けぬ女と、昼間から平然と街道で寝に入る少女。

「……。」
「駄目かな?」
「……貴女は……?」
「私? 私の名前は佐奈子。川澄佐奈子よ。」
「……。」
「私の名前を教えたんだから貴女の名前も教えてくれない?」
「……私の名前はリネットと申します。」






魔法戦国群星伝

外伝:鬼の一族




 僅かなやり取りの間にリネットと名乗る娘も冷静さを取り戻してきたようだ。僅かな上目使いで此方を探るように見据える。警戒とも怯えとも取れる表情だ。

「急いでいるんでしょ? 一人じゃ危ないし、途中まで一緒に行こうか?」
「は、はい……。」

 急いでいると言う台詞が決して嘘ではない事は様子を見ればわかる。既に昼間である事に気付いた時の表情に演技の要素は全く無かったと確信できる。
 穏やかだが、佐奈子の声には有無を言わさせない微かな圧迫感があった。諸国を旅している内に出来るようになった処世術の一つだ。
 僅かに動いた足の向きから来た道を戻る事になる事実に落胆しそうになるが、すぐに気を取り直して歩き出した。
 その歩みは決して遅くなく、それでいて早くも無い。リネットのペースより僅かに早い程度だ。


「で、鬼の娘さんがこんな所で何をしているの?」
「鬼……此方の方々は私たちを鬼と呼ぶのですか……。」
「……違うの?」

 軽く俯いたまま、リネットは微かな声で答える。うっかりしていると聞き逃してしまいそうなほどに弱く、微かな声。憂いを帯び、諦めとも、悲しみとも取れる。

「厳密には違いますが、この地に住む方々から見れば変わりません。」
「……この地……貴女、異国の出身者?」
「いえ、この大地とは異なる空を持つ地から参りました。」
「……ええと、つまりは……。」
「はい。魔界、と言うべきが本来でしょう。」

 魔界の存在を正しく認識し、理解している人間は少ない。ましてや魔界の住人――いわゆる魔族――と接触を持つ事など希だ。
 それは人間は肉体的個体差が激しく魔法能力にも激しい偏りが出来る事と、人間特有の脆弱さが原因と言える。魔族から見れば人間は余りにも脆すぎるのだ。
 逆に魔族もまた、人間には関心が無かった。様々な勢力が入り乱れる魔界に於いて移動に激しい制約がかかる上に力を押さえつけられてしまう大盟約世界など所詮は対岸の地域に過ぎない。その為大盟約世界を訪れる魔族もまた少数だった。

「私達は魔界においてエルクゥと呼ばれています。」
「エルクゥ……。」

 その為当然だが魔族の情報を大盟約世界で収集する事は難しい。種族名を言われても、それがどのような種族なのかを知る者はいないであろう。それこそ魔界にでも行った事のある人間でも無い限り――。

「私たちエルクゥは戦いの民です。強敵と戦い、その命の輝きを糧に生きる、生粋の殺人者の一族です。」
「……つまり今回の鬼騒動はエルクゥ達がやったって事?」
「……はい。」

 ふむ、と口の中で得た情報を整理する佐奈子。唇に人差し指を置き、開いた手を反対側の肘受けにしている其の様はなぜか様になる。
 残念な事に傍にいるのがリネットだけなので、その微かに年増付いた仕草にツッコミが入る事は終ぞ無かったが。

「エルクゥって言うのはどんな魔族なの? なんで人を襲うの? なんでこの世界に来たの?」
「ええと……。」

 畳み掛けるような質問に少したじろぐリネット。
 これもまた、佐奈子が長い経験から得た交渉術の一つである。相手に事実の秘匿意思が有る場合のみに限る物の、質問を複数同時に投げかける事によって混乱を誘い、本人も気付かない内に真実を口に出させることが出来る。勿論質問の内容に自分が最も知りたい事を入れないようにしてだが。
 往々にして、人と言うのは質問事項に無い事は相手の興味の範疇外なのだという錯覚に陥りやすい。質問の内容からかけ離れれば離れるほどその錯覚は大きくなり、相手を警戒している人間ほどこのトリックに陥りやすくなる。

 だが往々にして例外と言うのは存在すると言う事を佐奈子は失念していた。

「エルクゥ族は魔族の中でも肉体的能力に特化した一族です。代償として魔法的能力の欠如が著しく、殆どのエルクゥは魔導能力を持っていません。また、生物の命が散る時に放たれる「輝き」を糧として生きる為、生きる為に他の種族を殺さなくてはならず、種族そのものも極めて好戦的です。私達は種族内の抗争に巻き込まれ、劣勢になった所を逃げてきました。」
「……。」
「あとは……佐奈子さん?」
「え? あ、大丈夫。大体理解してるわよ。」

 当たり前だが相手に秘匿意思が無い場合、律儀に全部答える可能性が出てくる。かなり低いとは言えその可能性を完璧に失念していた事を頭の中で毒付いていたが、別方面でしっかりと情報の理解はしていた。

「ええと……つまり、「生きる為に」人を殺しているわけね?」
「はい。」

 ふむ、と頭の中で方針を変更する。
 人を食う理由が快楽的なものでない事が判った以上、無下に「帰れ」と言う事も殺す事も出来ない。彼らとて生きる為に人を殺しているのだ。それは人も同じであるし、この大盟約世界に息付く全ての命となんら変わらない。

「……魔界に帰ることは出来ないの?」
「……恐らく不可能です。座標交換誘導機構は修復までまだかなりの時間を要しますし、誘導機構の片割れは恐らく魔界で破壊されているでしょうから。」
「……そっか。」
「人ひとり程の体積であればヨークの魔力で飛ばす事も不可能ではありませんが……。」
「ヨーク?」

 耳慣れない単語のオンパレードに混乱してきたが、何故か「ヨーク」と言う単語には惹かれる響きがあった。

「私たちの船です。エルクゥ族の皇族のみが操る事を許された船の呼び名です。エルクゥ一族の切り札とも呼べる戦闘能力を持ち、移動要塞としての機能も持ち合わせます。」
「へぇ……。」

 恐らく魔法的な不可視の力を利用した巨大な船なのだろうと推測をつける佐奈子。最も、既に意識は別領域に飛んでいた。

「エルクゥには「皇族」がいるんだ。」
「……はい。一族を統率し、導く使命と力を持ち……。」

 俯き、顔を曇らせるリネットの様子を見て、佐奈子は自分の推察が正解である事を確信した。
 おそらく目の前の少女も皇族の一員なのだ。そして皇族としては不相応な器である事も、周囲から疎まれている事も正解だろう。肉体能力に優れた一族と言う割には、一瞬とは言え戦闘態勢を取った佐奈子の気配に全く気付かずに寝入っていたし、見た目が余りにも人間に近すぎる。

「……皇族ってどんな人なの?」
「……今の指導者はとても素晴らしい人ですよ。誰よりも強くて、誰からも好かれてる……。」
「ふーん……。」
「……私とは全然違う……。」

 予想通りとも取れる答えだ。
 自分と比べると言う事はかなり近い身内なのだろう。親か、それとも兄弟か、どちらにしても目の前の少女は件の指導者から疎まれており、少女自身もそれがコンプレックスになっている。


「……。」
「……。」

 話が止まった。
 俯く少女と、平然としている女。傍から見れば女のほうが随分な悪役に見えるだろうが、幸運な事にその組み合わせを見る者は誰一人としていない。


「……。」
「……姉様は……。」

 ゆっくりと少女が語りだす。
 普段の声も小さいが、今紡がれている言葉はそれ以上にか細く、儚い。
注意して聞き取らないとあっという間に聞き逃してしまう。

「私達は四人姉妹で私は一番下です。で、一番上の姉、リズエルと言うのですが、その人が今の指導者です。」
「……。」
「半年程前でしょうか、私のひとつ上の姉、名をエディフェルと言います。彼女がヨークから居なくなりました。」
「居なくなった?」
「はい。謝罪の意が込められた伝言を残し、この大陸の何所かへと飛び出したのです。」
「……。」

 頭の中で記憶を遡らせる。
 藤田家でそんな話は聞いていない。他の地でも人食いの鬼が出たという話は聞いていないし、どこかの村が正体不明の敵に壊滅させられたという話も無い。
 つまり、その出奔した姉――エディフェルと言う名だ――と言うのは余程上手く隠れているのだろう。

「リズエル姉様はその事を知ると、ヨークの力で探すように私に命じました。」
「……。」
「そして昨日、ここから山を二つ隔てた集落に居る所を発見しました。」
「集落……じゃあ……」
「はい。エディフェル姉様は人として暮らしていました。人間の方と結ばれ、子供も……。」
「ちょっ、ちょっと待って!」

 混乱してきた頭を整理しつつ、得られた情報を噛み砕いていく。

「ええと……エルクゥって言うのは魔族なんだよね?」
「はい。」
「そのお姉さんって言うのはやっぱり貴女みたいに人間そっくりなの?」
「はい。黒髪ですし、この地に住む方々との違いは瞳の色ぐらいでしょう。」
「……魔族と人間の間に子供が出来たの?」
「……私も驚きましたが、確かにエディフェル姉様は子供を設けてました。」

 魔族の形態は多岐にわたる。人間とは大きくかけ離れた姿や文化、生態をしている者が殆どだし、子孫を作る方法もまたそれぞれ異なる。
 佐奈子も何人かの魔族と面識があるが、今まで出会った魔族は皆人間とは一線を画した姿を持っており、大盟約世界に訪れる時は目立たないように姿を変えていた。

 だが目の前のエルクゥは違う。瞳の形を覗けば紛れも無い人間の姿をしており、さらにその姉は人間との間に子を設けたという。魔族という割には余りにも人間に似ている。

(どんなエッチしたんだろ……それどころじゃないって)

 横道に逸れた意識を元に戻し、再びリネットに向き直る。

「じゃあそのお姉さんは人として暮らしているの?」
「はい。恐らくは。」
「……人を殺さないと生きていけないのに?」
「……。」

 考え込んだリネットとは対照的に、佐奈子はエディフェルという娘が「誰」を糧にしているか、容易に予想をつけることが出来た。この混乱している御時世、いなくなっても気にされない人種は沢山居る。

「まあそこはなんとかして村の人たちと折り合いをつけているんだし良いとして。」
「……はい。」

 まだリネットは考え込んでいたが、この世界に来て一年と過ぎていない者に判る筈もないだろう。

「話の続き、お願いできる?」
「はい……皇族の義務を捨て、自分の許可無くヨークを飛び出したエディフェル姉様に、リズエル根様はひどく怒っていました。」
「ふんふん。」
「……そしてエディフェル姉様が見つかると、直に姉様自ら会いに行かれました。」
「……。」

 そこからは佐奈子でも想像がついた。
一族の皇族が狩る対象と仲睦まじく暮らしているのだ。妹の正気を疑うだろう。妹に直接会い、妹が本気で人間として暮らすつもりであれば……

「リズエル姉様はエディフェル姉様を殺すかもしれない……。」
「……まあそう考えるのが妥当ね。」

 ならば急がなくてはならない。いくら魔族であろうとも、人間と共存しているのであればそれを滅ぼす理由は何処にも無い。リズエルと言う指導者が本当にエディフェルを殺すのであれば、佐奈子としては最悪の行動を取らなくてはならない。

「そうなったら……私も覚悟を決めないとね。」
「……佐奈子さん?」
「いい? これから話す事は、最悪の事態を想定した物よ?」
「はい。」

 軽く深呼吸。頭の中に空気を送り込み、希望的観測を一切排除した未来予想図を編み上げる。


「もしリズエルさんが私達より早くエディフェルさんの元に辿り付き、尚且つエディフェルさんがリズエルさんの逆鱗に触れるような事になった場合。」
「……はい。」
「エディフェルさんは死ぬ。」
「……。」

 考えられる最悪のパターンと言えるだろう。
そしてここからは佐奈子の行動にかかる。

「その場合、私はリズエルさんを殺さなくてはいけない。」
「姉様を……ですか?」
「そう。生きる為ではなく、個人の独善的な欲求で殺人を犯すような輩を川澄は許さないの。」
「川澄……?」
「ま、続きを聞いて。」
「……はい。」

 川澄の名を知っている魔族が決していない訳ではない。過去に幾人もの川澄の名を持つ者が魔族と接触し、その強さ、そしてその名を売って来た。
 盟約が世界を被う前は幾度となく魔族の侵攻を受けたグエンディーナにおいて、少しでも敵を食い止める為にも川澄の名を響かせる事は重要な作業であった。

 グエンディーナが誇る劒、其が名は川澄――神打ち払いし刃、「神薙」を振るう一族――。
盟約の発動を境に川澄家は急速に歴史の表舞台から姿を消すが、それは魔族達の侵攻が収まり人間達の勢力争いが激化してきたからに過ぎず、盟約の発動から五百の年月を数えた今も川澄の意思は変わらない。
 グエンディーナの地を乱す者を滅ぼす――それは魔族であっても、妖であろうとも、例え人間であっても変わらない。歴史の裏で暗躍する川澄家の意思は明らかにリズエルの行為を許さなかった。

 もっとも、試験期間中である佐奈子は「川澄」の名を名乗る事を本来許されていないのだが、相手が魔族であり、しかも人間を襲うという現状を考えれば、多少の違反も許されるだろう。ましてやリネットに「川澄」の名が持つ意味を隠す必要はない。

「ですがリズエル姉様の力は人間の限界を超えてます。返り討ちに合う可能性の方が大きいです。」
「……ふむ。リネットちゃんはとりあえず人間の特徴を理解しているようね。」
「少しは、ですが。」

 リネットの言う事も最もと言える。まともな人間がエルクゥに勝つのは不可能と見て良いだろう。それは先の傭兵団がこれ以上無い程に証明している。

「まあ其の点は大丈夫。其の為の「川澄家」と「神薙」なんだから。」
「……。」

 未だ怪訝そうな表情を隠せないリネットを見て苦笑を禁じえない佐奈子。
まあ無理も無いだろう。魔族と対等に渡り合えるなどと平然と公言する人間の台詞を信用する方がおかしい。

「ま、見てよ。」

 スラリ、と腰に下げた「神薙」を抜き放つ。
刃渡りは1mと少しだろうか。曇り一つ無い直身の刃が陽光を受けて燦然と輝く。
だが魔法に秀でたリネットの赤い瞳はその神々しい外見ではなく、内より湧き出る魔力を推し量っていた。

「凄い……これほどの力を持つ魔法具は始めて見ました……。」
「神打ち払いし刃、銘を「神薙」と言うの。この剣を代々受け継ぎ、人知れず妖や魔族を討つ一族が川澄家。」
「……。」
「これでも心配?」
「い、いえ……。これほどの力を使いこなす佐奈子さんの実力もお察しできます……。」
「そう、なら良かったわ。」

 パチン、と軽やかな音を伴って「神薙」が鞘に収まる。
それを呆然と見つめるリネットの瞳に、疑問の色は既に無い。

「じゃあ話を戻そうか?」
「は、はい。」
「仮に私がリズエルさんを殺した場合。」
「……はい。」
「ええと、まだ名前を聞いてないんだけど、貴女の二つ上の――。」
「アズエル姉様ですか?」
「ああ、アズエルさんね。――彼女が恐らく次の指導者となるでしょう。」
「……はい。」

 リネットもそれが妥当だと思う。この未来予想図に於いてエディフェルは死に、私は裏切り者なのだから。

「ただしリズエル死亡の情報が伝わる事は殆ど有り得ない。距離が有り過ぎるからね。」
「……はい。ヨークを操れるのは私だけですし、アズエル姉様がそれを知る手段は殆ど無いでしょう。」
「するとエルクゥの一族の中には指導者不在の混乱が生じる。」
「……今はアズエル姉様が指揮代行をしてますが?」
「代行って言うのはね、あんまり信用がおかれない物なのよ。代行する人物に人望があったとしてもね。」

 代行と言う存在は良くも悪くも疎まれる物だ。人望が無い者が代行になれば下の者は造反を起こす事がありえるし、逆に人望が有る者が代行になった場合、妬ましく思う輩が一人でも居れば指揮能力は格段に低下する。
 何処の指揮系統も混乱させる手段には事欠かないのだ。代行になったばかりであれば人事や勢力の把握も完全には出来ていないだろう。付け入る隙は幾らでもある。

「で、そこから生まれるのが反乱勢力。」
「……。」
「私としてはエルクゥの方々が人間を殺さなくても生きていける様、話し合いで解決を望んでいるんだけどね。」
「……それが叶わなくなる状況。」
「そう。そうなれば私としては彼らを滅ぼすしかない。」
「そして事態は泥沼……でしょうか?」
「そうなるわね。そうなれば藤田家の御当主は嫌がるでしょうけど、川澄の一族総出で事態の収集を図る事になりかねない。」

 二千の傭兵部隊を壊滅させる戦闘能力の集団だ。佐奈子一人では辛い戦いとなりうるだろう。ならば此方も数を使う事になる。次期当主の試験は失敗し、佐奈子が当主となる事はなくなるだろうが、そのような事は些末事に過ぎない。

「どの道エルクゥ達は総崩れ、人間達にも多大な被害が出る。」

 どこか楽しげにすら聞こえる響きを伴い、絶望的観測は続く。

「全てのエルクゥ達を殺す事は恐らく不可能。辺境である事、起伏の激しい地形である事が災いして幾人ものエルクゥが姿を隠すでしょうね。」
「……。」
「まあこれはあくまで推論。考えられる最悪の事態って奴ね。」

 まず最悪の事態を予想し、其処から僅かなりとも遠ざける努力をする。
一見無駄とも思える方針だが、川澄佐奈子と言う女は常にこの方法を取ってきた。
最悪のシナリオ通りに事が進んだ事は――今までは無い。

「リネットちゃんとしてもそれは不本意でしょ?」
「……はい。」
「なら私達で少しでもその事態から遠ざけないとね。其の為にはまず……。」
「エディフェル姉様に会う事、或いはリズエル姉様を止める事、ですね?」
「そう言う事。」

 リズエルが魔族としての力を使って移動したのなら佐奈子やリネットが感知できるはずだ。
それが無いと言う事は、リズエルは人間に変装して居ると言う事になる。恐らくエディフェルに感知されない為の行為と予想し、人間並みの移動速度でも充分追いつける可能性が有る事を示している。

「さて、じゃあ少し急ごうか?」
「はい。」

 なんとしても追いつかなくてはならない。
それが出来なかった時――自分はどうなるのだろう?

 漠たる不安を抱えながら、それでもリネットの歩調は僅かに上がる兆しを見せ始めた。



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